イギリスの小説にはシェイクスピアや聖書など古典からの引用が多いものがあります。
ドロシー・L・セイヤーズ『誰の死体?』だとこんな感じ。
(ディケンズ『ドンビーと息子』より)
(コールリッジ『クブラ汗』より)
割注なので字が小さいから読むのが面倒です。
それにしても、1930年代、40年代の推理小説の読者は注がなくても、出典が何かわかったのでしょうか。
どの作品から引用されているが興味がなければ、注を読む必要はありません。
しかし、人名や地名、商品名、料理の名などは意味がわからないのでは、何のことか意味不明ですから、注があったほうがいい。
ヘンティ(英十九世紀の少年小説家)
バス(ビールの銘柄)
サルミ(肉を焼いて煮込むシチュー)
熊(株の弱気配)
『誰の死体?』は1923年の出版。
そのころのイギリス人なら注は不要でしょうが、現代の日本人は注がないとさっぱりです。
しかし、注を読んでいると、読書の流れが断ち切られます。
かといって、注がないと何のことかわからない。
でも、注を読むのも面倒。
スティーヴン・キング『11/22/63』は過去改変ものです。
キングですからすらすら読めますが、意味がわからないカタカナ語がやたら多い。
スマホで調べればいいけど、一気に読みたいし。
言葉は知っているが、意味はなんとなくしかわからないもの。
ダイナー、シンク、アウトレット、アウターウエア、ステンシル文字、バナナスプリット、コンバーチブル、メーソン‐ディクソン線
文脈で想像がつくもの。
シーリングファン、ベビーステップ、ヘッドチーフ、ハットバンド、ポートホール
私には意味不明なもの。
ドラムメジャー、カウンタートップ、ポケットプロテクター、プードルスカート、スナックテーブル、クランプ、ザプルーダー・フィルム
ネットで調べても出てこないものもあります。
ファッションや音楽は私にはさっぱりです。
ボビー・ソックス、チュニック、ステッチ模様、ローライズパンツ
なぜ日本語でないのかと思うもの。
ホットフラッシュ(ほてり)、ペーパーウェイト(重し、文鎮)、スマート爆弾(誘導爆弾)、タイクリップ(ネクタイピン)、クレヨーラ(クレヨン)
すべてがカタカナ語のままというわけではありません。
日本人にわかるように訳し変えているもの、説明を文に織り込んだものもあります。
「アルコール依存症者向けの断酒会」
これはAAをこのように訳したのでしょう。
「政治的な正しさ」はポリティカル・コレクトネスの訳かもしれません。
「ギリシア古典劇で声をそろえて科白を言ったり歌ったりするグループ」の原文はコロスだと思います。
「黒人を公然と差別するジム・クロウ法」はジム・クロウ法の解説を加えた訳でしょう。
「宗教団体の機関誌〈ものみの塔〉」も同じ。
「イン・ザ・ムード」をリンディホップで主人公と恋人が踊ります。
でも、どんなダンスわからない。
ネットで調べました。
「プロペラさながらに身をまわしながら倒れていった」
「体をわが両足のあいだから一気に押し出した」
などの描写があるので、2人はもっとすばやい動きで激しく踊ったのでしょう。
映画化されたらどんなふうに踊ったかわかるのですが。
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