三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

裁判員制度を考える3 代用監獄制度

2008年11月01日 | 日記

なぜ冤罪があるのか。
代用監獄で自白を強要し、裁判では証拠がなくて否認しても、一度自白していれば有罪、というわけで起訴されると有罪率が99.9%となるのである。

世界的に悪名の高い代用監獄制度とは、警察の留置場を拘置所の代わりとして使用する制度である。
警察に逮捕されると、被疑者は警察留置場に入れられる。
逮捕から48時間以内に検察官のところに送られる。
検察官は留置の必要があると判断した時は、24時間以内に裁判所に勾留の請求をする。
裁判官が勾留を決定すると、通常の犯罪では起訴まで最大20日間(10日+延長10日)拘禁される。
つまり、逮捕されると、最長23日間、留置場に入って取り調べを受けることになる。
別件逮捕されると、さらに勾留期間が延長される。
欧米では逮捕から裁判所に連れて行かれるまで24時間以内から48時間以内。
法律上の建て前では、裁判所が勾留を決定すると拘置所に移されることになっているが、実際にはほとんどの場合、取り調べをする警察の留置場に入れられることになる。
被疑者は弁護人の支援もないまま、完全に捜査機関に支配された状況で取り調べられる。
捜査官が好きなときに好きなように被疑者を連れ出して取調べができる。
朝9時から夜10時、11時くらいまで連日14時間くらい取調べられることもある。
被疑者は精神的拷問を受けるわけである。(小池振一郎、青木和子編『なぜ、いま代用監獄か』

死刑囚だった免田栄氏はこのような拷問を受けたという。
「頭をおさえ、机の上でゴリゴリ押しころがし、ゴツゴツ机の板に小突きながら、「コラ、分かったか。すなおになれんか。俺たちをなめるな」と言って、頭髪をもって頭を上げ、青竹でなぐり、押したから、後ろに一回転して倒れる。すると周りにいた刑事が、殴るやら蹴るやらの暴力を加えた」(『免田栄 獄中ノート』)

そんな肉体的拷問などしなくても、捜査官の巧みな誘導によって虚偽の自白をしてしまうそうだ。
伊藤和子『誤判を生まない裁判員制度への課題』に、ゲリー・ガウガー氏の例が紹介されている。
両親を殺した容疑で逮捕されたガウアー氏はなんとたった一晩で自白している。
ガウガー氏は「自白は強制された」として無実を主張したが、自白の証拠能力と科学者の証言、同房者の偽証が認められて死刑判決が下される。
その後、自白の採取過程に違法があったと認められて釈放され、真犯人も見つかっている。

自白の専門家であるスティーブン・ドリズィン教授は、なぜ自白するのか、こう説明する。
「なぜ人はやってもいない重大事件について自白するのか。それは重罪事件ほど、被疑者に対し自白を求める多大なプレッシャーがかかるからです。その際に警察が使うのは攻撃的な取調べによって被疑者を心理的に追い詰め自白に追い込むというテクニックです」
「アメリカの警察官は、自白を獲得するとき、被疑者を真犯人と信じ込みます。また「自分は無実だ」という被疑者の確信を打ち砕くためのテクニックを訓練しています。取調べで警察官は、共犯者が自白した、証拠はあなたが犯人だと示しているポリグラフでクロと出たなどと嘘を言い、そのようなテクニックは被疑者を絶望的な気持ちにさせます。この段階で警察官は、自白するインセンティブを被疑者に与えます。具体的な利益の約束ではなく、あいまいなものです。「犯罪は偶発的なものだったのではないか」など、責任減少や減刑につながる暗示を与えて被疑者をわなにかけます。疲れ切った被疑者はもう逃れられない。最低限の刑ならば認めてしまおうと考える。これがパターンです」

たった一晩でやってもいない両親殺しを自白するのだから、23日も拘束されたら、あることないこと何でもしゃべってしまうに違いない。
イリノイ州死刑諮問委員会議長のトーマス・サリバン弁護士は、代用監獄制度についてこう語っている。
「1~2日間で、被疑者を心理的に追い詰めて自白に追い込むことは十分に可能です。私は、日本では23日間もの間、警察が被疑者を何時間にもわたって取調べることが可能だと知って、とても驚きました」

ということで、取調べ全過程を録音、録画する可視化が求められているが、検察や警察は反対している。
自白の部分、つまり検察にとっていいとこだけを録画しても意味がないのに。

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