三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、インチキ宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり、そしてそのことを日記にまとめてみたり。

越智啓太『つくられる偽りの記憶』

2018年10月05日 | あやしい教え・考え

世界こどもサミットでは、胎内記憶や前世の記憶を語る子供たちがスピーカーとして参加していました。
https://blog.goo.ne.jp/a1214/e/d18b1c1184e8e324a6274a807d87dde6
生まれた時のことだって覚えていないのに、まして胎児や前世のことなど記憶しているものかと思い、越智啓太『つくられる偽りの記憶』を読みました。

自分がもっている思い出は間違いないものと考えるのが普通だが、近年の認知心理学の研究で、記憶はそれほど確実なものではないということが明らかになってきている。

ある出来事の後から入ってきた情報によって、記憶の一部が書き換えられてしまうことを「事後情報効果」という。
事後情報の入力によって記憶を変容させてしまう時、二つの可能性が考えられる。
一つは、もとにあった記憶の該当する部分が、事後に入力された情報によって上書きされて、記憶は書き換えられてしまう。(上書き仮説)
もう一つは、もとにあった記憶と事後に入力された記憶の両方が存在する。(共存仮説)
共存仮説の場合、どちらが本当の記憶なのかわからなくなってしまうため、記憶が混同される。
上書き仮説と共存仮説はともに生じるが、多くの状況で記憶が上書きされてしまうことがわかっている。

情報を聞き取る側の先入観や思い込みが記憶に影響を与える。
たとえば、事件の捜査官が犯人を「めがねをかけた30代の男」と思っていて、目撃者に「犯人はめがねをかけていましたか」とか「犯人は30代くらいでしたか」などと聞くと、目撃者の記憶の中の犯人にめがねや30代が導入される危険性がある。
また、相手の期待に応えようとする思いから、記憶の変容が加速することもある。

記憶が存在しないにもかかわらず、実際には体験していない出来事の記憶をつくり出させることは可能で、記憶を植えつける方法が開発されている。
しかし、一度植えつけられてしまった記憶を消す方法は開発されていない。

この体験していない記憶をフォールスメモリー(虚偽記憶)という。
なぜフォールスメモリーがつくり出されるのか。

記憶を思い出そうと思いをめぐらせると、いろんな記憶の断片が思い出される。
その記憶の断片を「そのとき」の記憶が蘇ってきたと考えてしまうと、ヒントとして提示されたストーリーに従って、それらの記憶が貼り合わされていき、次第に現実感のある記憶が完成されていく。
さらに、これらのイメージを反芻するに従って、記憶はより鮮明で一貫した構造を獲得し、最終的には、リアルな偽の体験の記憶が形成されてしまう。
出生時の記憶、前世の記憶、宇宙人に誘拐された記憶などがそうである。

・生まれた瞬間の記憶
幼児期健忘といって、三歳児よりも幼い時期の記憶は想起できない。
思い出せないのではなく、エピソード記憶(体験した出来事の記憶)という形で保存されないからである。

新生児の目の焦点は20~30cmに合っていて、それより離れるとぼやけてしまう。
だから、出生直後には周囲の光景や両親の姿を認知することが難しい。
そして、新生児は視覚的なイメージを処理する脳の部位が未発達だから、赤ちゃんが知覚しているイメージが記憶され、催眠によって引き出すことが可能だとしても、それはぼやけてはっきりしない色彩の混沌であり、人の顔や周囲の光景をはっきり見える形にはならない

退行催眠を用いて思い出す人がいるが、出生時の記憶を催眠によって思い出すことができると信じている施術者の反応を見ながら、施術者が喜ぶような方向にイメージを形成し、その結果、施術者の思っているとおりの記憶を「思い出す」ようになる。

また、出生時記憶を想起する人は、出生時の記憶があることを固く信じており、催眠によって思い出すことができると考えている。
彼らの多くは「出生時記憶を思い出させてもらうために」催眠にかけてもらう。

・前世の記憶
催眠によって前世の記憶を話し出したという事例は、本格的な調査が行われると、以前に読んだ本などの内容を語っていたなど、話が眉唾だったことがわかる。

前世記憶を思い出すことで、知らない言語を流ちょうに操るという真性異言現象があるとされる。
しかし、真性異言を本物と確認したケースは実際にはほとんどない。
応答的なものではなく、繰り返し的な発話であり、発音も不正確である。
めちゃくちゃな言葉が一方的に話されているのをまわりが真性異言だと解釈していることが多い。

イアン・スティーブンソンによる前世の記憶を持つ子供たちの研究は、多くの研究者が生まれ変わり以外のメカニズムで生じた可能性が大きいと考えている。
たとえば、生まれ変わりを信じる家族、親などがそばにいることが多い。
子どもは容易に大人の誘導に従った証言をしてしまいがちであり、その結果、記憶がつくられることがある。
イアン・スティーブンソンのもとで助手を務めた弁護士は、インタビューがあまりにも誘導的に行われたことなどを指摘している。

実験的に前世の記憶をつくり出すことができる。
カナダのカールトン大学の実験では、110人中、35人が過去の人生を想起した。
83%が前世での名前を想起し、74%がその時代について年まで特定できた。
1人を除いて他のすべては前世が北アメリカか西ヨーロッパだった。
韓国の実験では、過去世が動物だった者が4人いた。
西欧では前世が動物だという輪廻転生思想は存在しない。
このことは、想起される前世の記憶の内容は文化や思想の影響を受けている証拠だと考えられる。

・エイリアン・アブダクション
エイリアンに誘拐されたと主張する人がアメリカには大量にいる。
催眠療法によってエイリアンに誘拐された体験を想起した人と、自発的に想起した人がいる。
しかし、ヨーロッパではそれほど盛んでなく、日本やアジアではほとんど発生しない。

自分がやってはいけないようなことをしてしまう理由、やらなくてはならないことをしない理由、落ち込んでしまう理由、うつになる理由、体調が優れない理由、恋人ができない理由、セックスが嫌いな理由、勉強ができない理由、夜中に起きてしまう理由、虫が嫌いな理由、なにかしっくりこない理由、自分だけが特別だと感じる理由、これらすべてがエイリアンに誘拐されたせいだと考えることができればずいぶん楽になる。

アブダクティー(エイリアンに誘拐された人)の特性
1 思い出す記憶が実際に存在する可能性を信じていなければその記憶を思い出すことはない。つまり、UFOやエイリアン・アブダクションを信じている人ほどエイリアンに誘拐されやすい。
2 催眠にかかりやすい人ほど、エイリアンに誘拐されやすい。
3 頭の中に鮮明なイメージを浮かべやすい人ほど、エイリアンに誘拐されやすい。
4 生じたイメージを現実のものなのか空想のものなのか区別しにくい人ほど、エイリアンに誘拐されやすい。

UFO体験する人は、ESPやサイコキネシス、死後の生存などを信じている傾向がある。
また、自分が予知能力などの超能力をもっていると信じていたり、超自然的な体験、不思議な体験をしている。
これらの特性は出生時や前世の記憶があると主張する人たちにも共通すると思います。

ダウエ・ドラーイスマ『なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか』に、自分の経験を記憶に結びつける「私」がある場合にのみ、自伝的記憶(エピソード記憶の一種)は展開されるとあります。
自己意識が子供に現れはじめる兆候は1歳の誕生日以降で、鏡に映っているのが自分だと理解するのは18カ月ころになってから。
「私」という意識がないときの記憶は作られたものだということでしょう。

孫(3歳10カ月)に「妹が生まれたときのことを覚えているか」とか「お母さんのおっぱいを飲んでいたころを覚えているか」と聞くと、「うん」と答えました。
さらに、「お母さんのお腹の中にいる時は?」と尋ねると、「うん。自動車でお腹に入って・・・」と話してくれました。
胎内記憶や前世記憶を思い出す子供は、質問する大人の誘導で物語を作っているんじゃないかと思います。

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