よろずのモノ語り(『近代建築撮影日記』別館)

近代建築以外のよろずのモノを
あまたに綴ります。

生き別れの仏さん

2011年11月06日 10時22分55秒 | 古寺・仏像

山川出版社の『図説 仏像巡礼事典 新訂版』13頁に、薬師三尊像の写真が載ってる。

京都高山寺の薬師如来坐像東京国立博物館蔵の日光菩薩半跏像東京藝術大学蔵の月光菩薩半跏像。天平時代の木心乾漆造の像である。

月光菩薩像はお腹の部分が大きく欠損していながらも非常に美しい。
いかにも大変なドラマの末に3箇所に分かれてしまったようで、初めて見たときから気になっていたのである。


そして昨日、東京藝術大学大学美術館の「彫刻の時間—継承と展開—」という展示会でその像を見ることが出来た。やはり美しい。美術館に展示されると、仏さんから美術品に変質して畏敬の念を忘れてまじまじと見入ることが出来る。この仏さんは破損したがゆえに、学生たちに乾漆造の構造を見せる教材として、学校で所有されたのである。

ガラス越しながらごく間近から見ていると、ふっくらしたお顔に切れ長の眼、乾漆造ならではの細やかな造形。1200年以上の長い歴史を潜り抜けて来たそのお姿に感動。

この展覧会は、近代で継承~現代で展開と云うことで、日本の彫刻美術の歴史を見ることが出来るものでしたが、現代彫刻の詰まらないこと甚だしい。技術的には退化し、その表現は作者の独りよがりでしかない。
やはり、仏像のように決まった形式があるなかで、作者が技術と個性を表現する、そのせめぎ合いから万人に支持される良い造形が生まれてきたのであろうと思う。



次に、隣の東京国立博物館。法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌 特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」が開催中。私の守り本尊である阿弥陀如来像を多数拝んで満足。

しかし、メインはこの特別展ではない。
トーハクにおられるはずの、日光菩薩半跏像に会いたいのである。
展示のローテーションがあるので会えるとは限らないが、本館の日本ギャラリーへ。

仏像の間に入ると、美しいお姿が見えた!

撮影禁止かと思っていたが、さすがトーハク、写しても良いらしい。

先ほど見た像とは左右対称に作られた左脇侍像。
こんな近くに居ながら、生き別れて違った運命を背負っている。
そして、しばらくの間、像の前でたたずむ。


残る中尊の薬師如来像は京都におはす。期を見て会いに行こうと思う。
脳内三尊像を完成するために。



表題写真は日光菩薩半跏像。
(カメラ;RICOH GR Digital II・2011/11/5撮影)



注;「彫刻の時間—継承と展開—」は本日11/6まで。
日光・月光菩薩半跏像のエピソードは『彫刻家・籔内佐斗司流 仏像拝観手引』のテキスト39頁に紹介されている。なお、中尊の薬師如来像は京都国立博物館に寄託されている。



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