つぶやきイチロー

思いついたことを、思いついたまま綴る。ヒマな時に更新。

明治安田生命・業務停止命令

2005-10-29 07:11:02 | 政治・経済・社会
金融庁は、保険金不払いが相次いだ明治安田生命保険に業務停止命令を出し、新契約の募集を2週間停止するなどを命じた。業務停止命令は同じ問題で今年2月にも受けており、今年2度目。

簡単に言うと同社は不当な理由を根拠に保険金の支払を拒否しており、これらは事務上のミスでなく組織的に行われたことも問題とされた。この事件は生保業界でも「異常」と受けとめられており多くの関係者は驚いている。

保険は、いざという時に保険金が支払われて初めてその商品の価値が生まれる。それが不当に支払拒否となれば、車の購入で言えば、代金を振り込んだのに「アンタの金は暴力団資金だから没収する」と言い掛かりをつけ納車をしないようなものだ。組織的な詐欺行為と言うしかない。

今後、恐らく同社は顧客離れに苦しむだろう。2月に業務停止命令が出た際には、S&Pなど格付機関は経営への影響は限定的とのコメントを出していたが、今度はそう思っていない筈。一部の専門家は当時のS&Pの楽観的なコメントに首を傾げていた。

今回、同社のガバナンス態勢も問題視されている。こうした問題は他社でも発生しえるので、これを機に各社とも組織体制をレビューすべきと思う。と言うのも、生保会社は最近、コンプライアンスやコーポレート・ガバナンス、あるいはリスク管理などの体制/態勢を整備しつつあるが、それが形式上の整備に留まっている気がしてならない。

伝統的な日本の生保の組織は昔も今も「下意上達」。つまり、部下が企画立案を行い上司が了承するスタイル。ボードが大体の経営戦略を策定し、各部門がそれを実行に移すといった、米国や欧州で一般的なトップダウン型の命令体系ではない。極言すると、上司あるいは役員は部下の提案にYesかNoを言うだけ。

役員は自分が主体となって経営方針を立案する訳ではないので、内容の理解さえ部下任せにしている者もいる。それだけに責任感は希薄で、問題が起きると部下のせいにする。昔、問題を起こした会社の言い訳は、必ず「担当者が勝手にやりました」だった。最近はコーポレート・ガバナンスが認識されだしたので、さすがにこう言い切る会社は少なくなったが、実際の運営は昔と大差ない。

そんな状況なので、実際の運営も「現場任せ」になりがちで、適切なレポーティングもされず現場の暴走に気が付かないケースが多くなる。意思決定のスピードが遅いとか、責任の所在が曖昧といった弊害も起き易い。

これは国内系生保に限らず、役所や他業界の会社でも見られる傾向だ。アスベストの役所の対応、JR西日本の脱線事故、JALの一連の事故、中央青山監査法人によるカネボウの粉飾決算問題等々、リスク管理が現場任せになっていたことが根本的な原因と思われる事件は多い。30年前ならいざ知らず、変化が激しいこの時代に「下意上達」の組織は完全に時代遅れになっている。

しかし、「これを早急に見直すべき!」と言うのは簡単だが会社の文化を変えるのは難しい。外部の力を借りずに自己変革で変えようとしたら最低10年は掛かるだろう。一番簡単なのはM&Aで経営陣を一新することなのだが、生命保険の大手は明治安田も含めて全て相互会社(株主はおらず会社の所有者は形式上契約者となっている)でありM&Aとは疎遠だ。悪く言うと従業員の好き勝手に経営がなされているので、この先長く掛かるだろうなぁ。

2 コメント

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コメントありがとうございました。 (toshi)
2005-10-31 01:51:03
関連のエントリーを書きましたので、TBさせていただきました。今後ともよろしくお願いします。



ご自身の意見がはっきり書かれているブログで、読んでいて面白いですね。楽天とTBSの提携問題に関する視点についても、「なるほど」と感心いたしました。
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有難うございました (イチロー)
2005-10-31 12:14:35
toshiさん、コメント有難うございました。また、上記日記を貴ブログで紹介して頂き有難うございました。



toshiさんのブログは作者名を特定しており、また職業柄、ステークホルダーも多いでしょうから、記事の内容には非常に気を遣われていると思います。記事の客観性や正確性を心掛けるとどうしても内容がマイルドになると思いますが、それでも読み手には充分伝わるものがありますので、それだけ内容が素晴らしいのだと思います。



他方、私のブログは匿名で、自己の感想や意見を勝手気ままに書き殴っているだけです。この種のブログの存在価値もあると思いたいのですが、過去の記事を読み返してみると「随分エラそうだな」と自分でも思います。少々反省しました。今後とも宜しくお願い申し上げます。
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