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随筆 「スポーツ哲学」が弱すぎる日本  文科系

2018年10月06日 01時58分28秒 | 文芸作品
 07年頃、岡田武史のサッカー観に関わって、古田敦也、平尾誠二との対談本を紹介したことがある。岡田、古田のこんなスポーツ観も表明されていた。

「岡田 どうも日本ではいまだに、『体育=神聖なアマチュアリズム』『プロスポーツ=芸能』という感じでとらえられてしまう。本来は、違うものなんだよ。芸能とは違う『プロスポーツ』があるということを確立して、意識上にカテゴライズしていかないと、今後、日本のスポーツ界全体が伸びないと思う。
 古田 テレビの放映権をコミッショナーが持てるようになれば、かなり変わると思うんです。プロスポーツは興行である反面、半公共的な存在であるということにも気づくと思うんです」


 正論だと思う。しかしすぐに、次の問も浮かぶ。「芸能とは違う『プロスポーツ』」とは何か?「プロスポーツは興行である反面、半公共的な存在」とはどういうことなのか? 「スポーツの文化としての価値、楽しさを国民に広げつつ、それとともに初めて発展していくプロスポーツ」ということであるはずだ。ちなみに、Jリーグ百年構想は、こういう考え方を日本に初めて大々的に表明し、行動に移ったプロスポーツ関連団体の宣言なのだと思う。生涯スポーツが、公共的なもの、考え方であるように。対して、例えばプロ野球が芸能というのは、これを観る人の立場、つまり鑑賞対象という立場なのだろう。芸能を見せる人とは、まー興行主と同じことなのだから。大相撲には興行主が居て、これは芸能を提供する人と同じことだ。しかし、相撲をやる人には生涯スポーツという観点があり得るのであって、これは相撲を自分がやる文化活動として捉えると言うことであろう。

 さらに一歩つっこんで考えてみたい。スポーツはどういう文化なのか。簡単なことである。音楽や絵画と同じ芸術なのだ。聴覚の芸術、視覚の芸術と同じように『身体感覚』の芸術と言えばよい。ところが岡田武史も語ったように、こういう考え方がヨーロッパと違って日本には全く定着していないのである。日本では「体、健康を作ること」というスポーツの「体育」「身体だけ」という一面だけが強調されてきた。戦前の「強兵政策下の『体育』『運動』」や、最近では、アメリカの強兵策「ビリーズ・ブート・キャンプ」を応用した「シェイプアップ、ダイエット・スポーツ論」みたいなものである。

 さて、さらに突っ込んで「『身体感覚』の芸術」の説明だが、これは結構難しい
「テニスで、『追いつかないかな?』と感じたボールに、うまくさばけた脚がぴたっと決まった瞬間の快感」
「野球で、投球の伸びが今ひとつという日々が続いて悩んだ後に、凄く伸びるボールが投げられたときの体を走る快感」もある。「余分な力がここで入ってしまったなどとは全く感じられず、すーっと全身が協調していて『なお、いくらでも力が入る感じ』」などと言ったら分かる人には分かりすぎるはずだ。体軸、肩、肘、手首などの使い方がぴたっと一瞬間に一致したということなのだと思う。
 こんなのも同じことだ。
「久しぶりに山に登った後3~4日して疲れが取れた頃(この日数が人や運動の激しさによって違うのは当然のことだ)、長い階段が楽しく上れるあの感覚」

 見られるとおり、これら全てがただ体だけの問題ではない。頭脳、視覚などによって体を鍛え、導き、動かして、その動きや結果を「体で味わい、確かめている感覚」というものが存在するのである。運動感覚、身体感覚、この働き、「効果」は絵画や音楽と同じ物なのだ。しかもこれは「自作自演を自分で鑑賞」というものであって、自ら行う芸術なのである。単なる鑑賞ではないということだ。これが分かれば、楽器の楽しみなどと同様に、非常にやみつきになる物なのである。

 僕もこんなことを青年時代から感じ、考えてきたが、日本にもこういうことを語る著作がやっと現れてきた。勝ちや名誉ではない本当のスポーツ好き、生涯スポーツ家にぴったりの、こんな本をご紹介しよう。
 玉木正之「スポーツ解体新書」(NHK出版)

 ちなみにこの作者、「巨人軍がプロ野球を徹底的に駄目にしている」と語る人である。古田も岡田もそう考えているようだ。読売巨人軍はいわば興行主なのであって、野球を芸能としてみせる立場ということだろう。

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