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本の紹介「国民投票、憲法変える?変えない?」 まもる

2007年04月12日 00時40分25秒 | Weblog
 豊秀一著「国民投票、憲法変える?変えない?」岩波ブックレット 

 この本で著者の豊さんは、これまでの法案をめぐる経緯を説明しながら、数々の問題点を指摘しています。

◎国会の発議から実際の投票日までの期間の問題。与党案民主党案ともにそれが「60日以降180日以内」としているが、それで十分なのか。
◎テレビCMや、メディア規制の問題。特にテレビCMは投票日の14日前から禁止、とされているがそれでいいのか。14日以前は野放し状態となる。CMによる刷り込みの危険性はほとんどマインドコントロールだし、当然のことながら、資金力によってその放送量には圧倒的な差がつく。どちらが有利かは、財界の総本山・日本経団連の御手洗会長が「改憲」を標榜している以上、説明するまでもない。
(この問題については、『マガジン9条』で、カタログハウス社長の斎藤駿さんが丁寧に論じているから、ぜひ参照してほしい)。
◎「国民投票広報協議会」の問題。これは国会の中に作られ、衆参両議院から同数の委員を選ぶということになっている。国会が自ら提案した憲法改正案を自らが広報する、ということで果たして公平さは担保されるのか。その疑問は、払拭できない。
◎「憲法審査会」の設置に関する問題。これは2000年に衆参両院に作られた憲法調査会を事実上改組し、新たな組織にしようというもの。つまり、調査が目的だった調査会を、原案を作る強い権限を持つ審査会に格上げするもの。独走する可能性には触れられていない。
◎民意の正確な反映ができるかという問題。投票に際して賛否を問う課題の立て方は、公平にできるのか。
◎最低投票率の問題。例えば投票率が50%だった場合(ちなみに、今回の東京都知事選の投票率は約54%)、その過半数の賛成なら、全有権者数の25%の賛成で改憲は成立することになる。それでいいのか。
◎有権者の年齢は何歳からか。一般の選挙との整合性はどうするのか。

 ここに挙げた以外にも、疑問点・問題点はたくさん指摘されています。このように問題が山積みなのに、なぜそんなに成立を急がなければならないのか。この本のユニークなところは、その成立を急ぐ最近の「政治状況」にもきちんと触れていることです。
 これまで「国民投票法案」についての議論では、その技術的な側面ばかりが強調されるきらいがありました。つまり「どうすれば国民にとって真に民主的で平等な法案になるのか」とか、「諸外国での例に遜色のない法律にするべき」「これまで改憲手続法の国民投票法がなかったのがおかしい。改憲に賛成か反対かはさておき、両派に平等な法律は必要である」「この法律がないから、解釈改憲がまかり通ってきた。国民主権を取り戻すための真に民主的な国民投票法を作るべき」「そのための法案作成は急がなければならない」などといった意見が、この議論をリードしてきたのです。

 しかし、この本では「なぜ今、国民投票法か?」という疑問を、戦後政治の歴史的状況を踏まえて検証しています。
 技術的に正しい法案を作ることは当然必要でしょうが、その前に、なぜ今なのか、という現在の政治状況を考えなければならない、と説くのです。
 小泉首相から安倍内閣への流れ。特に安倍首相の言う「戦後レジームからの脱却」は、まさに憲法改正を最大の目標としたものです。日の丸君が代の強制、教育基本法改定、防衛庁の省昇格、これらすべての政治的流れが唐突ともいえる「国民投票法案」のゴリ押しにつながっている、と読み解くのです。
 技術論もさることながら、その裏に隠された政治的意図をきちんと把握するべきだとするこの本の中身は、確かに大切な戦後の分岐点を示唆しています。

 なぜ今、国民投票法か?
 一部を除き、ほとんど盛り上がっていないといわれる「憲法改正のための手続法である国民投票法」の審議の行方を、私たちはもっと関心を持って見つめ、その行方に対し、はっきりと賛否を表明するべきです。この本は、そのための絶好の教科書といえるでしょう。

(鈴木 力)
           
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2 コメント

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天木氏の怒り (ネット虫)
2007-04-12 09:43:23
国民投票法案の強行採決を前にして

  憲法施行60年を迎えた今年、改憲の大きな一里塚である国民投票法案なるものが安倍政権の手で一両日中にも強行採決されようとしている。改憲は戦後最大の政治課題であり、国の将来、国民の運命を決める問題である。その改憲に直結する国民投票法案を強行採決するなどという行為を、安倍首相はよく出来るものだと思う。あらためて安倍晋三という政治家の軽薄さと思慮の無さを感じる。しかし私は不思議なぐらい冷静である。その理由をこれから述べてみたい。
  その一つは国民投票法案の成立は、確かに改憲に向かっての一里塚であり、しかもそれは大きな一里塚であるのだが、その後には、改憲案の確定、国民投票の実施という、遥かに大きな一里塚が控えているということである。どれ一つとってみても政府にとってその決断は容易なことではない。護憲派にとっては腕の見せどころはこれから来るのである。
  様々な思考過程を経て、最後は「憲法9条を一字一句変えてはいけない」という最強の護憲論者にたどり着いた私はあらゆる手段を講じても改憲は阻止さるべきと考えている。改憲の手続きを定める国民投票法案が成立されない限り改憲はできないわけだから、その意味でいえば国民投票法案が成立しないほうがいい。しかしその事のみで反対するというのであれば、「何でも反対」という事になって一般国民の幅広い共感を得られないであろう。改憲の試みは国民の一票によって挫かれねばならない。それは大袈裟に言えば日本人が初めて自らの手で国のあり方を決めると言うことだ。日本の歴史上初めての民主革命である。だから護憲派は国民投票法案阻止がすべてであると考える必要はない。むしろ強行採決という政府の暴挙を逆手にとって、その後に続く本格的な護憲の為の戦いに全力を傾け、国民を覚醒させ、平和国家日本の実現に向けた民主革命のチャンス到来と前向きに考えるべきだ。
  もう一つの理由は、国民投票法案をめぐる議論が十分尽くされておらず、たとえ強行採決しても欠陥法律として必ず問題が出て来ると思うからである。強行されようとしている法案が改憲派にとって有利になっている事は勿論好ましくない。しかし所詮は改憲をもくろむ政府がつくる法案であるから、政府がその気になれば、程度の差こそあれ改憲に有利な法案になることは避けられない。しかしそれ以前の問題として今の法案についてはその解釈や運用を巡って曖昧な箇所があまりにも多すぎるのではないか、つまり与野党とも完全に議論を尽くしていないのではないかと思う。そんな状態で政府が強行採決しても必ず将来問題が出てくるであろうし、野党にとってみれば強行採決された法案の不備を指摘し、修正を求めていく事が出来る。またそうしなければならない。
  最後に、やはりなんと言っても、国民投票法はあくまでも手続法であって、それに基づいて実際に国民投票が行われる事との間には、天と地ほどの隔たりがあるという事である。政府がどのように改憲に有利な手続法をつくり、その後にあらゆる情報操作をしてみたところで、国民に改憲の決断をさせるということは容易な事ではない。
   考えてもみるがいい。今改憲するという事は米国のテロとの戦いに付き合わされるという事である。米国が行っているテロとの戦いは「人間の良心」が悲鳴を上げるほど不合理で残酷な戦いである。米国自身が認めているように、それは終わりのない戦いである。日本の国や国民を守るという本来の防衛とは何の関係もない、米国の戦争、しかもアラブの国民を不当に差別した戦いである。それに付き合わされる事の愚かさに気づかない国民がいるというのか。日本の国民はそこまで愚かでお人よしであろうか。しかもテロとの戦いに駆り出された自衛隊は間違いなく殺し、殺される事になる。それは名誉の死として靖国神社に祀られるものでは決してない。愚かな指導者の命令による犬死だ。それどころか親日的なアラブの民の恨みを買う悲しい犬死なのだ。どの指導者がそのような愚かな命令を自衛隊に下せるというのか。その愚かな命令を、祖国と国民、家族を守るために自衛隊を志した勇者たちが、唯々諾々と従うというのか。
  国民投票法案の強行採決をやれるものならやってみろと私は突き放している。後悔するのは安倍首相だ。それはあたかも小泉前首相が、あの愚かなブッシュ大統領を「正しい人だ」と公言してイラク戦争を支持し、その汚名を歴史に残したのと同じように、安倍首相にとっての歴史的な誤りとなる。そんな事をするために自分は総理になりたかったのかと気づく事になる。あまりにも愚かだ。
 護憲派は強行採決を前にうろたえる必要はない。その後の事態の進展はその誤りを厳しく責めていくことになる。国民はやがて改憲の愚かさに気づく。護憲派が行うべき仕事はむしろこれからである。
  


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Posted by 天木直人   
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納得! (文科系)
2007-04-12 13:38:45
納得できることが多い文章です。旧左翼への批判としてもかなり通用すると思う。「短絡」とか「国民不信」とかがないのがよい。
例えば、「今憲法が変わればすぐに戦前に戻る」、その前段階として「法案が通れば憲法が変えられる」。こういうような短絡文章がこのブログにも時に見られるが、そんなことばかり語ってきたから「オオカミ少年」みたいに信用されなくなったんだという側面があると思う。
単純なことだが、小泉や安倍や石原でさえ、東条とは違うし、今の政府を「戦前の政府一歩手前」のように語るのは、そもそも国民に失礼だ。
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