取り忘れ K・Kさんの作品です
甥の結婚式を終えて、松本から名古屋へ帰った。特急信濃に乗ってから「切符はどうした?」夫が言う。慌てて探すが見当たらない。改札口を通したがその後は覚えていない。取り忘れたのかもしれない。
名古屋駅までは二時間あった。車掌さんを呼び止めて改札機の中に切符があるか調べて欲しいとお願いする。「もし無かったとしたらどうなりますか?」聞くと、「もう一度買うことになります。有価証券と同じです」の答えだった。夫が「松本駅で二枚買い、改札機を通った。記録を確かめてくれ。なぜまた払うのだ?」納得しない。声は大きく迫力がある。細身の車掌さんは「有価証券ですから」を繰り返すが小さな声。夫は「名古屋の駅長室で話そう。百円も払わないからな」言う。私は自分の不注意なのだから六千円払うしかないと思った。「実は俺も出張中に乗り継ぎのトラブルで改札機の中を調べたり、駅の事務所で話をして書類に駅長の判を貰ったことがあるんだ」話す。
しばらくして「ありました。これで降りてください」と車掌さんが書類を持って来た。私がお礼を言うと「気をつけてください」小さい声で言い足早に去った。「改札機の中を調べるのは五、六分で判るはずだ。上司と相談したのだろう」夫が呟く。私が取り忘れたのは、ICカードのマナカの習慣かもと言い訳する。タッチだけで通れるのだから。便利な物には落とし穴があった。用心、用心。
甥の結婚式を終えて、松本から名古屋へ帰った。特急信濃に乗ってから「切符はどうした?」夫が言う。慌てて探すが見当たらない。改札口を通したがその後は覚えていない。取り忘れたのかもしれない。
名古屋駅までは二時間あった。車掌さんを呼び止めて改札機の中に切符があるか調べて欲しいとお願いする。「もし無かったとしたらどうなりますか?」聞くと、「もう一度買うことになります。有価証券と同じです」の答えだった。夫が「松本駅で二枚買い、改札機を通った。記録を確かめてくれ。なぜまた払うのだ?」納得しない。声は大きく迫力がある。細身の車掌さんは「有価証券ですから」を繰り返すが小さな声。夫は「名古屋の駅長室で話そう。百円も払わないからな」言う。私は自分の不注意なのだから六千円払うしかないと思った。「実は俺も出張中に乗り継ぎのトラブルで改札機の中を調べたり、駅の事務所で話をして書類に駅長の判を貰ったことがあるんだ」話す。
しばらくして「ありました。これで降りてください」と車掌さんが書類を持って来た。私がお礼を言うと「気をつけてください」小さい声で言い足早に去った。「改札機の中を調べるのは五、六分で判るはずだ。上司と相談したのだろう」夫が呟く。私が取り忘れたのは、ICカードのマナカの習慣かもと言い訳する。タッチだけで通れるのだから。便利な物には落とし穴があった。用心、用心。