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随筆 いろんな老いの迎え方   文科系

2013年12月04日 01時47分17秒 | 文芸作品
 六年ほど前から、ギター仲間がギター持参で開くホームパーティーを主催してきた。同門の中年以降の人々がほとんどで、男女半々の八名ほどが春夏秋冬と年四回集まり、他に臨時の参加者もある。僕としてのこの会への思いには、こんなこともあった。年を取ると次第に下手になるはずで、それに抗していくそれぞれの知恵などを寄せ合いたいものだと。ところが、予期せぬ出来事も起こることになった。
 ギター演奏関連の何もかもを放りだしてしまったのは、Kさん。ギター一切をすっぱりと打ち切ったのであるが、長年集めたCDをどさりと会に送りつけてきた。こんな言葉を付けて。「未練を残さず止めたいが、CDには困った。その気持ちは分かってもらえるよね? 皆さんで分け合って下さい」。こういう方は、他の趣味などでもこういう対処をされるのだろうか? 僕と全く同年齢の方なのである。
 こんな方もいる。これ以上上達しないからという理由で、僕と同じ先生のところへ通うのをすぱっと止めてしまわれた。このAさんは、ギターはやめないと予告された通りで、僕らのパーティーには今も出席されて、演奏もしていただいている。とても上手な方で、教室を止めた理由について、こんなことを語っておられた。「きっと、何か変なプライドがあるのでしょうね」。僕よりも数歳上、超名門会社の重役さんだった現役時代から二〇年以上もギターを続けてこられた方である。
 かと思うと、次の方はちょっとマニアックだ。Aさんと同じように現役時代から二十年以上はいろんな先生についているのだが、その後半の年月をギター曲として最も有名な「アルハンブラ宮殿の思い出」一本に費やしてこられた。というのは、この曲がトレモロ奏法という特殊な弾き方をし、その右手四本指の細かい動きが老人には至難の業だということが関わっている。で、今でも彼のこの曲、決してお上手とは言えず、かといって他の曲は弾きたくはないということで、僕らのパーティーにも二度出て来られただけだ。でも、彼と僕を含めてこの会を始めた三人は、今でも親友同士。来一月にも一泊の温泉旅行に出かける。二人はギターを持ってくるが、彼は持ってこないという。ギターが縁の三人にして、これまた不思議な話だ。それにしても、ほぼ一曲を十年以上って、驚く。
 最後は僕のこと。退職後に習い始めて丁度十年なのだから腕は知れている。が、マニアックが一つ、「暗譜曲リスト」を持っていることだ。大好きで忘れたくない曲を時に新しく習った曲と入れ替えたりしながらリストにしていて、その都度のレッスン曲とは別に十日にリスト一回り程度はずっと弾き続けてきた。ところが、最近今の二十五曲ほどの維持が怪しくなってきたのである。それでつい三日前ずい分久しぶりに、二曲を外した。入れ替え以外で外したのは、初めてのことだ。ビラローボスのプレリュード一番とタレガのアラビア奇想曲という曲だ。この二つを選んだ理由はこういうものである。最初の五年内に習った曲であって、腕が落ちてきたこのごろは特に上手く弾けなくなったから、気持ちよくないのである。そこで思った。ほとんどすべての曲が気持ちよくなくなる時も来るのだろうな。その時はどうしよう。それでも、僕は弾き続け、教室にも通い続けるつもりでいる。
コメント
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