つれづれすけっち

ワタシらしく。 ワタシなりに。

天保十二年のシェイクスピア観劇記

2005-11-13 23:10:54 | 感激!観劇!
11月2日 シアターBRAVA! 13:00開演
佐渡の三世次:唐沢寿明 きじるしの王次:藤原竜也
お光/お幸:篠原涼子 お里:夏木マリ お文:高橋恵子
尾瀬の幕兵衛:勝村政信 隊長:木場勝己
鰤の十兵衛/笹川の繁蔵:吉田鋼太郎 小見川の花平/飯岡の助五郎:壌晴彦
佐吉:高橋洋 お冬/浮船太夫:毬谷友子 大前田の栄五郎:沢竜二
よだれ牛の紋太/蝮の九郎治/亡霊:西岡徳馬
清滝の老婆/飯炊きのおこま婆:白石加代子 
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上演時間約4時間(休憩20分を含む)という長丁場の舞台!
私が観た中で、これほど長い舞台は初めて。
最初の感想は・・・疲れた、というのが正直なところ。
シェイクスピアの全作品を盛り込みながら作られている壮大なスケールのお話を4時間にぎゅっと凝縮させているので、見ごたえたっぷりで面白かったが、とてつもなく内容が濃くて、観劇疲労・・・観るほうも、演るほうも真剣勝負、そんな感じの舞台だった。

一つの舞台でこんな豪華なメンバーが観られるなんて、多分最初で最後(?)なのではないだろうか?シェイクスピアのパロディーという内容もあってか、キャストのみなさんの演技はかなりハジけていた。少し「これは俳優の学芸会か?!」と思えるところもあったが、さすがどの方も演技の芯は失われていなかったので、本当の意味での学芸会レベルに落ちることはなかった。遊んでいるようで、きちんと演劇が成立していて、現実味を帯びたストーリーながらシェイクスピア。そして非常に卑猥に満ちた、とても不思議な舞台だった。

舞台はグローブ座を模したようなセットになっており、開演前から数人の俳優が舞台上をうろうろと行ったり来たり。蜷川さんお得意の演出だ。俳優達の衣装はシェイクスピアらしくドレスや洋装。その中に、裏方のような方が時々出入りし、舞台上の柱などを拭きはじめるのだが、これがとてもわざとらしい。多分演技なのだろうが、登場させる意図がよく分からなかった。
そして開演。登場したキャストは皆和装でちょんまげに着物という扮装。では、今までうろついていたドレスの人たちは??グローブ座にいる他の俳優、とでも言いたかったのだろうか。

先ほど卑猥と書いたが、この作品は下ネタが中心かと思うぐらい多かった。下ネタもあるとは聞いていたが、ここまで多いとは。観ていてかなりエグイなぁと思うところも多々あったなぁ。女郎役の方が胸をボロンと出し、三世次の唐沢さんが歌を歌いながら激しく、そしておもちゃのように弄ぶところ・・・う~ん、かなりグロテスクだった。その時に歌っていた歌詞もものすごくて唖然。ここまでする必要があるのか?とちょっと思ってしまった。
余談だが、この上半身を惜しげなくさらけ出している女優さん、多分蜷川さんの「身毒丸」でも胸を出していたような。この方はこういう役回りなのだろうか・・・

あまりにキャストが多いので、一人一人細かく感想を書くことができないのでピックアップしようかと思ったが、それさえも難しいことに気付いた。各々のキャラクターが緻密にそして印象的に描かれているので割愛することができない!
それではそれぞれのキャストの感想を、簡単に。
● 唐沢寿明さん
ものすごく人を惹きつけるギラギラした演技と台詞回しには驚いた!しかも歌が上手い!これはミュージカル進出も近い?!舞台俳優、唐沢寿明を見せ付けてくれた!
● 藤原竜也さん
かなりハジけて舞台を楽しんでる感があった。一番面白かったのは「To be, not to be,that is a question.」(←違っているかも)を色んな訳で言い続けるところ。隊長の木場さんが「○○年、○○◇△訳」と言うと藤原さんが「生か死か、それが問題だ・・・」と台詞を言うくパターンを延々と続けるのだ。いやぁ、色んな訳があるんだなぁと思いながら、かなり面白かったし、勉強になりました。
● 篠原涼子さん
今回、一番大変だったのは篠原さんではないだろうか?別々に育てられたお光とお幸という二役の早替わり、お疲れ様でした。それにしてもきれいだったなぁ。
● 夏木マリさん
女優として生まれるべくして生まれた方、という感じ。恰幅が良くて、色っぽいところ、そして妖艶さが印象的!
● 高橋恵子さん
個人的にはもう少しハジけた演技でもいいような気が。でも太ももに絵かがれた花の刺青を見せるべく大胆に足を開くところは・・・凄かった。花見のシーンで口一杯お重の中の食べ物を頬張るところ、よく喉を詰まらせずに演技できたものだ。見ていて心配でした。お疲れ様でした。
● 勝村政信さん
それほど濃いキャラクターではなかったが、マクベスが下敷きになっているだけに一番人間らしさが感じられたかも。静かなカッコよさを見せ付けてくれた。
● 木場勝己さん
ストーリーテラーだったのでこの方も出ずっぱりでかなり大変だっただろう。「みなさまのご想像力に・・・」と語るところはペリクリーズを彷彿とさせられた。
● 吉田鋼太郎さん
「タイタス・アンドロニカス」以来の拝見だが、この方の声と台詞回しってなぜか忘れられなくなる。おちゃめで哀れな鰤の十兵衛(リア王)。可哀想だった~。
● 壌晴彦さん
親分の割にはかなり人情派のキャラクター。最後には幕兵衛とお里に殺されるという哀れな役を静かに好演。
● 高橋洋さん
この方も、蜷川さんの秘蔵っ子らしいが、あまりに濃いキャラクターの中では少し陰が薄かったかな・・?でも桶をトカトントンと合いの手のように打ちながら軽妙に語る台詞はお見事でした。
● 毬谷友子さん
以前から気になっていた女優さんだったが、もう少し登場して欲しかったな。オフィーリアのお冬の発狂前、後共に登場時間が少なかったが発狂後の半裸の姿はゾッとするほど恐ろしく美しかった。短時間でもものすごいインパクトを放つ。さすがだ。
● 沢竜二さん
すいません、沢さんのこと全然存じあげなかったのだが・・・出番はそれほど多くなかったけど、存在感たっぷりだった。
● 西岡徳馬さん
よだれ牛の紋太・蝮の九郎治・亡霊と三役をこなす活躍ぶり。特に面白かったのは亡霊を演じさせられた雇われ農民。横で三世次が台詞を教えてもらいながら亡霊を演じているのだが、その歌舞伎風の語り口調は聞いていて心地よかった。上手い!
● 白石加代子さん
これだけ実力のある女優さんなのに、老婆と飯炊き婆の二役だけではもったいないかな。特に飯炊き婆は印象が薄かったので、白石さんでは役不足なような。

長時間、且つ場面展開がとても多かった舞台だったが、流れが途切れることなくスムーズに展開されたのは、舞台装置のスピーディーな転換にあるのではないかと思う。例えば滑車付きの移動可能な舞台が使用されていたところ。舞台袖から役者もしっかりスタンバイした状態でゴロゴロと舞台に運ばれてくるという方式をとっているため、暗転の時間が少なくてすむのだ。

私が観た日は昼・夜とも公演があったのだが、あんな大変な公演で1日2公演なんて、凄すぎ!恐れ入りました!

オールスターキャストによる質の高い演劇。本当にいいものを観せてもらったと思う。
一つだけ苦言を言うとすれば、パンフが3,000円は高いっ!