黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

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なぜ弁護士会の会費は世界一高いのか?

2010-03-06 06:48:56 | 弁護士業務
 所得税の確定申告の期限が近づいてきました。黒猫も、弁護士業務はお休み中とはいえ、今年の確定申告はしなければならない立場なので、何とかやり遂げなければならないのですが、今年は特に医療費控除の金額が大きくて、計算に一苦労しそうです。こればかりは親に任せるわけにもいかないからなあ・・・。

 それはともかくとして、今回は弁護士会の会費の問題です。
 東京弁護士会に所属している黒猫の場合、平成21年度は東弁会費が222,000円、日弁連会費が168,000円、日弁連特別会費が59,500円、新会館臨時会費が120,000円、合計年額569,500円となっています。もっとも、昨年度は病気でほとんど業務ができなかったので、現在会費の免除申請をしているところですが。
 なお、登録年数の短い弁護士については会費の減額措置が採られており、大体入会後5年くらいで本来の金額にまで値上がりしていくシステムなので、新人弁護士の会費は上記より易くなっていますが、単位会レベルで見ると、東京弁護士会の会費はこれでも一番低い方で、田舎の弁護士会に登録すると会費負担はさらに高くなります。
 なぜこれほどまでに高い会費を支払わなければならないのかという疑問は、若手・中堅の弁護士に限らず、一般的に素朴な問題として話題にされることも多いのですが、この疑問に対する弁護士会の答えは、「わが国の弁護士制度は他国に類を見ない行政から独立を保障された自立権能を有し、弁護権の独立を維持するとともに、国民から負託された多様な人権擁護活動を担っていることにより、多額の経費がかかる」といった抽象的なものにとどまっています。この点に関しては具体的な説明が必要でしょう。
 弁護士会は、弁護士自治(弁護士の業務活動が行政によって制限されないこと)の確保を目的に、様々な公益的活動を担っています。他の士業種では行政によって行われる懲戒などの処分も、弁護士の場合は弁護士会によって行われ、しかも他業種と異なり懲戒請求は誰でも可能ということになっているため、さしたる理由のない懲戒請求も少なくありません。
 各弁護士会には、そうした懲戒案件をふるいにかけるための綱紀委員会と、綱紀委員会からのぼってきた懲戒請求案件を審査する懲戒委員会があり、さらに懲戒の決定に対しては日弁連への異議の申出、さらには綱紀審査会(懲戒手続きに国民の意見を反映させるため、法曹三者以外の者で構成される)に対する綱紀審査の申出をすることができますが、これらの懲戒手続きに関する機関の運営はすべて弁護士会の経費でまかなわれています。懲戒手続に関しては、その調査を担当する嘱託の弁護士がいるほど業務量が多いので、これだけでも相当馬鹿にならない金額がかかっているでしょう。もしこれを法務省などの行政機関に任せたら、あまりの業務量の多さにすぐ音を上げて、誰でも懲戒請求できるという現行の制度は廃止される可能性が高いと黒猫は予想しています。
 懲戒だけではなく、弁護士の入退会審査も弁護士会で行われていますし、さらには弁護士会での法律相談、弁護士業務に対する苦情処理や紛議調停、司法修習生に対する弁護修習、各種紛争解決のあっせんなど、本来なら国費で行うべきではないかと思われるような公益活動を弁護士会は多数抱え込んでいます。
 要するに、弁護士会の会費が世界に類を見ないまでに高いのは、弁護士自治の名の下に、本来なら国で処理すべき公益活動を多数抱え込んでいるからと説明するほかなく、会員数の多い東京三会ならともかく、会員数の少ない地方の弁護士会では、地方の単位会として最低限機能すべき公益活動を維持するために、一人の弁護士が複数の委員会を掛け持ちすることを余儀なくされているような例も少なくないので、会費負担だけではなく人的負担(様々な会務活動を無償で行わされること)も相当なものにのぼっていると聞いています。
 さらに言えば、近年における急速な弁護士数の増加は、弁護士業務では食べていけない弁護士を大量に生み出すことも意味しており、弁護士会の会員数が増大する反面、各弁護士における会費の負担能力が総体的に低下していることから、最近は弁護士会の会費を払えず会費を滞納する会員も多くなっていると聞きます。
 ただでさえ高額の会費負担が多くの弁護士にとって重大な足かせとなっている中で、最近は、弁護士の中にも様々な立場の人がおり、昔に比べ会内の意見集約もかなり難しくなっているので、弁護士会執行部の方針に不満を持っている弁護士も少なくありません。今年の日弁連会長選挙で票が割れ、歴史上初めての再投票になってしまったのがその好例です。
 弁護士自治といいながらその活動に弁護士たちの意見が反映されず、その弁護士自治を維持するために多額の会費負担を余儀なくされるというのであれば、いっそのこと弁護士自治などやめてしまえ、弁護士会は任意加入団体にしてしまえなどといった意見が出されるのも当然の成り行きかもしれません。
 
 こういった事態は、すなわち弁護士会が存続の危機に立たされていることを意味するため、東弁の執行部も危機感を覚えているのか、先日「弁護士会の今後10年間及び10年後の会務活動全般につき、生じうる重要な問題とその対策について検討し7月末までに回答せよ」という趣旨の意見照会が、すべての各種委員会や法律研究部などに対し行われました。
 黒猫も当初は「何で唐突にこんな意見照会が出てくるんだ」と思っていたのですが、中身を深く読んでいくと、実は上記のような弁護士会存続の危機に対し、弁護士会がいかにして生き残りを図っていくべきかという真剣で切迫した問題に関する諮問であることが分かったのです。
 これまで、弁護士自治というものは、その歴史的経緯に鑑み当然に堅持していくべきものと考えられていましたが、弁護士に対する懲戒を弁護士会内部で行うことにより、かえって市民から疑いの目で見られ、その結果綱紀審査会といった余計な組織まで作らなければならず、それらの費用もすべて弁護士(会)で負担せよなどというのであれば、黒猫自身、それならいっそのこと懲戒の業務自体を行政に投げてしまえという気になることも少なくありません。
 もっとも、弁護士自治が確立していなかった遠い過去においては、行政による弁護士への不当な締め付け行為が行われていたとも聞いており、現在において弁護士自治が必要な者であるかどうかは、黒猫自身、未だ明確な結論は出せていません。ただ、昨今の急速な弁護士数の増加に伴い、弁護士の質の低下という問題が実際に発生しているだけでなく、長年堅持されてきた弁護士自治の地盤も崩れ始めており、そもそも弁護士自治は必要かという疑念も根本から問い直さなければならない時期に来ていることは確かです。
 なお、仮に弁護士自治が崩壊して弁護士会が任意加入制になった場合、これまで弁護士会が担ってきた公益活動はすべて国の税金で行わざるを得なくなり、その分国民の税負担も重くなりますから、これは弁護士でない人にとっても、決して無関係な問題ではありません。
 司法制度改革審議会なる無責任な機関のでたらめな意見答申に基づき行われてきた一連の「司法改革」により、法科大学院なる無益な金食い虫を大量に生み出してしまっただけでなく、法曹界の至る所に大きなひずみを発生させてしまった責任は、結局は国が取るしかないのです。裁判員制度についても、今のところ目立った問題は出てきていないように見えますが、やがては壮大な税金の無駄遣いに過ぎないということに気付く人も少なからず出てくるでしょう。
 現在、法曹教育や法曹人口問題についての作業部会が法務省内に設けられていると聞いていますが、この作業に関与している民主党の副大臣たちが、今回の見直しの作業を通じて正確な問題意識を持ってくれることを願ってやみません。
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26 コメント

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事業仕分け (南太平洋)
2010-03-06 11:09:50
>仮に弁護士自治が崩壊して弁護士会が任意加入制になった場合、これまで弁護士会が担ってきた公益活動はすべて国の税金で行わざるを得なくなり、その分国民の税負担も重くなりますから、これは弁護士でない人にとっても、決して無関係な問題ではありません。

先ず弁護士会が担ってきた公益活動のすべてを国が担うかどうかが議論されるべきだろう。
懲戒なぞ国が行う必要性があるのか?刑法に触れれば、刑事罰を与え、不法行為で損害を与えるなら民事訴訟で救済を与えるのが筋であろう。であれば、懲戒なぞ国が担う必要性はないと結論できる。
Unknown (Unknown)
2010-03-07 02:30:25
懲戒を無くすなら、弁護士会もなくしてくれていいですよ。
Unknown (通りすがり)
2010-03-07 02:48:02
虚偽内容の懲戒請求は虚偽告訴罪(刑法172条)に該当するので、弁護士会が適切に告発してきていれば、変な懲戒請求は今よりずっと減っていたと思いますが、いかがでしょうか。

なお、警察への犯罪の告訴・告発について、主体を限定しようという話はないはず(これは公務員の犯罪でも同様)ですが、これとの均衡はどうお考えでしょうか(こちらはそれなりに虚偽告訴罪での検挙例があるようです)。
Unknown (Unknown)
2010-03-07 19:41:49
弁護士会が行ってきた公益活動って、ちょっと思いつかないのですが、いちばん大きなもので、どんなものですか?
一般国民は人権に金は払わないし、行政がおかしなことをするなら、第4権のマスコミを通じて攻撃するつもりです。立法・司法に行政統制能力がないのは判りましたから。あとは、外圧ですかね。
関係ないが・・・ (Unknown)
2010-03-10 09:56:00
東大で終わる人、東大からの人って記事はおもしろかったな~。
これって、司法試験にも当てはまるよね。
Unknown (Unknown)
2010-03-11 01:45:38
たしか、米国の一部の州では、弁護士会は弁護士に対する懲戒の検察官役をやってるそうです。
もちろん、任意加入の州では、そういう役割もありません。

欧米諸国の大半では行政というより、裁判所の特別部や、州司法委員会という独立組織が監督権を持っているそうです。

私もたしかに行政による監督は問題だと思いますが、ただ、独立した第三者機関だと、弁護士会や日弁連とどちらが
信用できるかということになって、正直なところをいうならば、政治性の薄い裁判所の特別部や、第三者機関のほうが
安心な気もします。

かえって、自治ではないがゆえに、無茶な懲戒に対しては裁判所がしっかり審査して対応してくれそうな気がしますし。
弁護士会による自治だと自治権に遠慮して裁判所も踏み込んだ判断をしてくれない恐れがあるのが怖いところです。
Unknown (オットセイ)
2010-03-25 19:59:15
綱紀委員会と懲戒委員会が両方とも弁護士会にあるのはまずいでしょ。検察官が裁判官を兼ねているようなものです。

諸外国ではこんな極端な制度をとっている国はほとんどありません。

それが原因で会費が高いとすれば囚人が看守の給料を払っているようなもので、早く組織の態様を改めるべきです。
Unknown (Unknown)
2010-05-19 02:08:33
すべて内輪の倫理。


救いようがない。
Unknown (Unknown)
2011-03-06 06:41:47
ひとつ聞きたいんですけど、毎年日本とはくらべものにならない数の司法試験合格者が出るアメリカの弁護士の質は日本よりもめちゃくちゃ低いんですか?それとも、日米の法科大学院の教育内容自体に差があるとも?アメリカでは司法試験問題に直接関係のない教育が徹底され、学生さんは試験前数ヶ月で司法試験の準備をするといわれてますが?
Unknown (Unknown)
2011-03-09 06:21:58
> 昨今の急速な弁護士数の増加に伴い、弁護士の質の低下という問題が実際に発生しているだけでなく、

何か客観的なソースはあるんですか? 裁判官の余談とかじゃなくて・・・

アメリカだけでなくフランスだって日本よりも人口一人当たりの法曹の数は多いでしょう。ではフランスでは法曹の質の低下が社会問題になっていますか? 思い込みでブログ書いてませんか?

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