テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

2019-09-05 | サスペンス・ミステリー
(2017/スティーヴン・スピルバーグ監督/メリル・ストリープ=キャサリン・グラハム、トム・ハンクス=ベン・ブラッドリー、サラ・ポールソン=トニー・ブラッドリー、ボブ・オデンカーク=ベン・バグディキアン、ブルース・グリーンウッド=ロバート・マクナマラ、マシュー・リス=ダニエル・エルズバーグ/116分)


スピルバーグの「ペンタゴン・ペーパーズ」を観る。彼の監督作品は「クリスタル・スカル」以来かな。事前知識はほぼなくて、イラク戦争辺りの時代の話かと思っていたらベトナムの時代だった。しかも主要な舞台は1971年のワシントン・ポストだ。つい「大統領の陰謀」を思い出しちゃうよね。

ベトナム戦争に関するアメリカの政策、現地の現状分析などをまとめた国防総省の機密文書を正義感に燃えたシンクタンクの若者がマスコミにリークした実話を元にした作品で、ウィキペディアを見れば分かるが登場人物の名前は実名だった。文書の内容を簡単に言うと、アメリカ軍は北ベトナムに対して苦戦を強いられていたのに国民にはまったっく逆の説明をしていたという事。太平洋戦争時代の日本のような事をしていた訳だ。スノーデンをはじめこの手の映画は色々とあるが、これは政治権力と報道の自由との闘いに発展していって非常に面白かった。
 随分昔だからだろうか、ウォーターゲイト事件は覚えていたけどコレは忘れてたな。

リーク報道の進展に併せて、当時株式公開を目前にしていたワシントン・ポストの状況がサスペンスを増幅させる。ポストにとっては政府の機密文書の公開が訴訟の対象になりかねず、そうなれば増資の思惑は外れてしまう。金をとるか信念をとるかという葛藤も描かれていて、この辺は商業映画としての脚色でしょうが、リズ・ハンナとジョシュ・シンガーという若い脚本家の共作は上手くいってます。
 原題は【THE POST】。つまりワシントン・ポストですな。

主演オスカー候補になったメリル・ストリープは、ワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハムの役。父親、自殺した夫の後を継いで社主となっていたキャサリンにとって会社の経営は思ってもいなかったポストで、男社会の中でなにかと軽んじられていることも自覚している。融資先との交渉に頭を悩ませながら、土壇場で記事掲載の判断を迫られる一連の演技は流石のメリルさんでした。ただの強い女性ではないんですね。むしろ弱い女性として描かれています。機密文書の公開は友人でもあった当時の国務長官マクナマラを窮地に追い込む可能性もあり、その事で苦悩する心情表現もお見事でした。

トム・ハンクス扮するベン・ブラッドリーはワシントン・ポストの編集主幹。口の悪い役員からは、経費を使いすぎるので“海賊”と呼ばれている新聞一筋男。キャサリンと二人きりでの朝食会でも、編集方針には口を出さないで欲しいときっぱり言うが、ラストでは彼女の責任の重さを感じて敬意をはらうようになる。

要所要所に何十年も観続けたスピルバーグらしい語り口が見られてにんまりしてしまうけど、今回は脚本の良さもありお薦め度は★四つ。終盤では何度かウルウルしてしまいました。

特典映像で、70年代初期のオフィスや街の様子の再現について語られていたけれど、確かにあのスチール製の机ががっちりと並んでいる所は完全に「大統領の陰謀」。タイプライターにダイヤル式の黒電話。それと街角にある公衆電話のシーンで、あわててコインを地面にばらまくところも70年ぽかったなぁ。

オープニングは1966年のベトナムの戦地のシーンで、いきなり流れてくるのが当時ヒットしたCCR(Creedence Clearwater Revival)の「♪Green River」。大好きな曲だったので嬉しくなりました。[注1]

リークした若者はマシュー・リス扮するダン・エルズバーグ。国防総省の手伝いをしていたシンクタンク、ランド研究所に勤めていた彼が「ペンタゴン・ペーパーズ」をコピーする所が映画のポスターが壁に沢山張られている映画関係のオフィスみたいな所で、最初に映ったポスターが「明日に向って撃て!」でした。

エルズバーグに接触するのはボブ・オデンカーク扮するベン・バグディキアン記者。彼もかつてランド研究所に勤めていてエルズバーグとは顔見知り。国家機密をリークできるのは奴しかしないと目星をたて、行く先を調べていく。

当時の大統領はニクソンで、終盤ではワシントン・ポストに怒り心頭なんだが、エピローグは翌年1972年のとあるビルで警備員が不審な侵入者を発見するシーン。「大統領の陰謀」の冒頭のシーンが流れてストンとエンドクレジットです。






[注1].ウィキで調べると「♪Green River」がヒットしたのは1969年でした。ベトナム戦争時のヒット曲として選ばれたのでしょう。

・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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