テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ネタバレ備忘録 ~「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」③

2013-04-17 | ドラマ
 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の最後のネタバレ備忘録です。
 繰り返しになりますが、未見の方には“ネタバレ注意”です。





 最後のネタバレとなれば、本作品をご覧になった皆様には十瑠が何について書こうとしているか、お分かりですね。そう、オスカーの母リンダのことであります。

 ウィリアム・ブラック氏に会って鍵の秘密は知りえましたが、結局オスカーには何も残りませんでした。パパからのメッセージも無く、8分間も消えてしまったような気がしました。
 家に帰ったオスカーは、「ブラック」さん探し用にこしらえた地図や資料を泣きながら壊します。その時、リンダが優しく息子の身体を抱きしめるのです。
 大丈夫よ。私がついてるわ。
 そして、オスカーが鍵穴を求めて「ブラック」さん探しをやっていたのを知っていたこと。オスカーが作った「ブラック」検索システムを頼りに、先回りして「ブラック」さんに会い、「9.11」でパパを亡くした息子が父親の残した鍵の意味を知るために訪ねてくること。出来れば優しく対応してくれること。そして、自分に会った事を秘密にしてもらうようにお願いしたことなどを話すのです。
 オスカーにとってはどこか頼りない感じのママだったのに、そんなことをしてくれていたなんて。
 二人は共に知っているブラックさんの思い出を語り合いながら、初めて夫であり父であったトーマスを失った悲しみを共有するのでした。





 エピローグの章で、オスカーはそれまでに逢ったブラックさん宛てに(472人の内の何人に逢ったんだろう?)お礼の手紙を書きます。一つのBGMをバックに短いショットで繋がれたブラックさん達のシーンを観ながら僕の胸はジワッと熱くなりました。東日本大震災の後の日本人のように、「9.11」の後のNY市民も遺族にはいたわりの気持ちを持って接していたんでしょうねぇ。
 オスカーはこう思ったんじゃないでしょうか。
 ママの優しさも嬉しかったけど、大勢のブラックさんの気持ちも嬉しかった。世間は、ものすごくうるさくもないし、適度な距離を保って優しく接してくれる人もいるじゃないか。

 全体を通してオスカー視点の物語ではあるのですが、もう一人の遺族であるリンダに関しても、彼女視点のエピソードは所々にあるんですよね。ドキッとしたのは、“最悪の日”にリンダもトーマスからの電話を受けて彼があのビルの105階にいるのを知るシーン。その後は省略されていましたが、リンダもオスカーと同じ思いを経験したんですよね。
 ただ、原作はオスカーの一人称で書かれているとの事なので、このシーンはどういう所からもってきたんでしょ?
 お祖母ちゃんの回想にリンダから聞いた話として入ってるのかな?


 映画は、最後の最後にもう一つ嬉しい種明かしをしてくれますが、なんだかソレまで書くとこの記事にも余韻がなくなってくるので止めておきます。
 ラストショットは、かつて父が乗って見せてくれた公園のブランコにオスカーが揺られているシーンでした。あの時は怖くて乗れなかったけど、ほら今はこんなに揺らしても大丈夫なんだよ。
 久しぶりに余韻のあるストップモーションを見せられました。



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