BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

〔 栄 〕

2008年10月25日 | 古本
 文庫本ワゴンのヤマの中に、一冊だけハダカで置かれていた。
ハードカバーが白色な分、裸体放置の様でなんだか恥ずかし
そうにしていた。手に取ると女流劇作家 リリアン・ヘルマン
自伝とあった。パラパラめくると“しめた”と思った。なかに100度数のテレ
ホンカードが挟まっていたのだ。最近ほとんど使う機会はないが、十円で千円の
テレカが付いてくるなら、これは買いだろう。いままで写真や読書カード、メモ
書きの紙片などが挟まっていた事はあるが、こんなプレセントは初めてだ。躊躇
している場合ではない。ポケットから十円玉を探り、レジカウンターへ向かった。

 しかしだ、そんなズルな考えはすぐに夢やぶれる。随分少なくなった公衆電話
を探し出し、カードを入れてみると〔0〕を表示する。なにかの間違いかと再度
挿入するも〔0〕だ。ウムー、よくよくみるとカードには小さな穴が3コ空いて
いる。つまり全くの使用済みカードだったワケだ。これは古本版、振り込め詐欺
に遭ったようなもので、アタシはマヌケ者で高齢被害者を笑えない。よこしまな
考えと行ないは、天がみぬいているのだ。(笑)
 一方で、このメモはなんだろう。〔1992、3、10、栄、〕とあっさりな
女性字の書き様だ。日付は購入日だとしても〔栄〕の意味はなんだろう。書き様が、日付の数字と雰囲気が並列なのだ。そして特段この本との関連はないようだ。人名か、地名か、あるいは店名などのマークサインか、手掛りがない。
 ともかく、リリアン・ヘルマン自伝をこんな小エピソードで書き括るのは失礼
だし情けないから、この辺で。

 リリアン・ヘルマン自伝「未完の女」 訳者 稲葉 明雄・本間 千枝子 
  ( 平凡社 定価1800円 1988年7月10日 初版第6刷発行 )



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