札幌の中心部を流れる川の、その橋のたもとでのことだった。
川面に映る逆光、自転車やジョギングで通る人の長い影を狙って
いた。小刻みにポジションを移動し近辺の様子を窺がっていた。
すると川沿いにある護岸用階段に、一人の女性(多分40歳前後)が膝を抱え、
狭い場所に座ったような形で、ぽつねんとして居ることに気がついた。よくよく
みると右手は携帯電話を持ち、話し中らしい。ほかに持物はなく、まるで宅急便
の配達を玄関先で受け取った時のような服装。全身は押し留められていて、僅か
に口元だけが動き、表情は深刻そうだ。
どんな話しの内容にせよ、人は少しは自然に身体が動き、相手には見えない身
振りをも伝えたい意図に込める。がその人は身を堅めて周りにバリアを発生させ、
それ以上の何ものをも拒んでいた。
橋の上は半円のアーチ状階段になっていて、人もそこを通ることが出来る。
しかし夕方のその時間に、わざわざトマソン風階段の上り下りをする人はいない。
心なし俯き、足早に平らな歩行帯を通行して行く。
彼女はそのままに、居た。みると先程の形からは右手だけが下に降り、アニメ
原画なら二枚で済むだろうか。電話が終わっても表情と姿勢に変化はなかった。
空にシルエット気味になってきたビル群と橋を絡めたアングルは、彼女の座って
いる辺りだ。彼女はそれを察しのか静かに立ち上がり、向きを変え、階段を平行
に歩いて遠ざかって行った。離れた後姿でも、その表情がよみとれた。
彼女が誰かに何かを伝えようとしていた事情は、様々に想像がつく。またそこ
に居たときに電話がきたのではなく、そこに来て彼女から電話したことは察しが
つく。 しかし解らないのは何故このような場所で、長電話をする必要があった
のかだ。他人に聞かれずに話しが出来る空間なら、わざわざこんな処でなくても
いいと思うのだ。そこがどうにも分らない。
小さな百グラムほどの通話が出来る機械。それになにかを懸け すがるように
握り締めていたあの人は、誰と、どんな世間とつながり、どんな世界を求めて
いたのだろうか・・・。
川面に映る逆光、自転車やジョギングで通る人の長い影を狙って
いた。小刻みにポジションを移動し近辺の様子を窺がっていた。
すると川沿いにある護岸用階段に、一人の女性(多分40歳前後)が膝を抱え、
狭い場所に座ったような形で、ぽつねんとして居ることに気がついた。よくよく
みると右手は携帯電話を持ち、話し中らしい。ほかに持物はなく、まるで宅急便
の配達を玄関先で受け取った時のような服装。全身は押し留められていて、僅か
に口元だけが動き、表情は深刻そうだ。
どんな話しの内容にせよ、人は少しは自然に身体が動き、相手には見えない身
振りをも伝えたい意図に込める。がその人は身を堅めて周りにバリアを発生させ、
それ以上の何ものをも拒んでいた。
橋の上は半円のアーチ状階段になっていて、人もそこを通ることが出来る。
しかし夕方のその時間に、わざわざトマソン風階段の上り下りをする人はいない。
心なし俯き、足早に平らな歩行帯を通行して行く。
彼女はそのままに、居た。みると先程の形からは右手だけが下に降り、アニメ
原画なら二枚で済むだろうか。電話が終わっても表情と姿勢に変化はなかった。
空にシルエット気味になってきたビル群と橋を絡めたアングルは、彼女の座って
いる辺りだ。彼女はそれを察しのか静かに立ち上がり、向きを変え、階段を平行
に歩いて遠ざかって行った。離れた後姿でも、その表情がよみとれた。
彼女が誰かに何かを伝えようとしていた事情は、様々に想像がつく。またそこ
に居たときに電話がきたのではなく、そこに来て彼女から電話したことは察しが
つく。 しかし解らないのは何故このような場所で、長電話をする必要があった
のかだ。他人に聞かれずに話しが出来る空間なら、わざわざこんな処でなくても
いいと思うのだ。そこがどうにも分らない。
小さな百グラムほどの通話が出来る機械。それになにかを懸け すがるように
握り締めていたあの人は、誰と、どんな世間とつながり、どんな世界を求めて
いたのだろうか・・・。