フランスの詩

宮之森享太 翻訳

牧神の頭

2011-06-06 | Weblog

           牧神の頭

葉叢では、そこは宝石箱、緑にして金の彩り、
葉叢では、そこは不確かだ、そして接吻が眠る
すばらしい花々に飾られている、生き生き
として、洗練された刺繍を引き裂く、

度を失った牧神は二つの目をむき出して
赤い花々を彼の白い歯で噛んでいる。
古い葡萄酒のように褐色で血だらけの
彼の唇は枝々の下で笑いはじけている。

そして彼が逃げたとき ― 栗鼠のように ―
彼の笑いはそれぞれの葉でまだ震えていて
一羽の鷽にぎくっとした森の金の接吻が
見えている、そこは静まり返る。