フランスの詩

宮之森享太 翻訳

花について詩人に言ったこと

2011-06-03 | Weblog

     花について詩人に言ったこと
           テオドール ドゥ バンヴィル氏に


             I
そのように、いつも、暗い紺碧に向かい、
そこはトパーズの海が揺れているが、
きみの宵で機能するだろう
ユリたちが、恍惚のそれらの浣腸が!

ぼくらのサゴの時代に、
植物が労働者であるとき、
そのユリは青い嫌悪を飲むだろう、
きみの敬虔な散文のなかの!

― ケルドレル氏のユリ、
一八三〇年のソネット、
吟遊詩人に与えられるユリ、
撫子やアマランサスとともに!

ユリを! ユリを! 人はそれを見いださない!
なのにきみの詩では、優しく歩く
女の罪びとらの袖のように、
いつもそれらの白い花々が身震いしている!

いつも、貴方よ、きみが入浴するとき、
きみのシャツはブロンドの両脇のところで
膨れているのだ、汚らわしいワスレナグサの
上を吹く朝のそよ風に!

愛はリラたちしかきみの入市税として
渡さない、― おお、たわ言だ!
森の菫たちしか、
黒いニンフたちの甘い唾々!. . .


             II
おお、詩人たちよ、たとえきみたちが
バラたちを手に入れ、バラたちは
膨らんで、月桂樹の茎のうえで赤く、
千オクターブで膨れ上がっていても!

たとえバンヴィルがそれらを使って、
血の色で渦巻く雪を降らせ、
悪に好意的な読み方をした
異邦人の狂った目を殴っても!

きみたちの森の、きみたちの牧場の、
おお、とても温和な写真屋たちなんだ!
植物相はおよそ変化に富んでいても
デカンタの栓たちのようなんだ!

相変わらずフランスの植物ばかり、
邪険で、肺病もちで、滑稽だ、
そこでは短足の犬の腹が
うろついている、安らかに、夕暮れを。

相変わらず、青い蓮やヒマワリの
恐ろしい図画の先には、
バラ色の版画、神聖な画題、
若い娘の聖体拝領のためのだ!

アソカの頌歌は高級娼婦の
窓辺の詩節に合致する、
そして華々しい重い蝶たちは
雛菊にフンをする。

古い草むら、古い飾り紐!
おお、植物性のクロキニョル!
古いサロンの奇妙な花々!
― コガネムシ用だ、ガラガラヘビ用ではない、

その泣いている植物性の赤ん坊らを
グランヴィルなら誘導紐で書いただろう、
そして意地悪色でまびさしをした
輝く人らが授乳したんだ!

そう、きみらの牧笛のにじみは
貴重なグルコースを作っている!
― たくさんの揚げ卵、古い帽子のなかだ、
ユリ、アソカ、リラ、バラ!. . .


             III
おお、白い狩人、きみは靴下なしで
牧羊神の荒れ地を走っている、
きみは多少植物学を知ることは
できないのか、知るべきではないのか?

きみが赤茶色のコオロギにハンミョウを
続けさせるのではないかと、ぼくは心配している、
ラインの青にリオの黄金を、―
要するに、ノルウェーにフロリダをだ。

しかし、いとしい人よ、芸術はもう、今や、
― これが真実だが、― 許さないのだ、
驚くべきユーカリの木にいる
ヘクサメトロスの大蛇らを。

それだ!. . . あたかもマホガニーが、
ぼくらのギアナにおいてさえ、
尾巻猿の転落や、つる植物の重苦しい錯乱
にしか役立たないように!

― 要するに、花というものは、ローズマリーであれ
ユリであれ、生きていようと死んでいようと、
海鳥のフンほどの価値があるのか?
ろうそくの一滴の涙ほどの価値があるのか?

― ぼくは言いたいことを言った!
きみは、あそこで座ってさえいる、竹の
小屋のなかで、― 鎧戸を閉め、
褐色のインド更紗の壁掛けのなかで、―

きみはばかげたオワーズ川にふさわしい
開花をぞんざいに仕上げるだろう!. . .
― 詩人よ! それは尊大で
笑うべき理屈だ!. . .


             IV
語れ、激しい反乱による
黒い春のネコらではなく、
タバコやワタの木を!
語れ、異国の収穫を!

語れ、ポイボスが焼いた白い額、
何ドルの年金をペドロ ヴェラスケス、
ハバナ、が受け取るのかを。
軽蔑しろ、ソレントの海なんか

そこは無数の白鳥が行く。
きみの詩節は広告であるがいい、
ヒュドラと波で掘り返された
マングローブの倒れた堆積のために!

きみの四行詩は血みどろの森に
飛び込む、そして戻る、
人間に白い砂糖や肺の薬やゴムの
いろいろな主題を提案しに!

きみを通してぼくらは知ることにしよう、
熱帯あたりの、雪を頂く峰々の黄金色が
多産な昆虫たちなのか、それとも
微小な地衣類なのかを!

見つけろ、おお狩人よ、ぼくらは見つけることを
望んでいる、芳香を放ついくつかの茜を。
自然がズボンに
花咲かせるように!― ぼくらの軍隊のために!

見つけろ、眠りの森のはずれで、
鼻面にそっくりな花々を、
そこから金色のポマードが垂れている、
水牛の黒っぽい髪の上に!

見つけろ、青の上で柔毛の銀が
震えている気違いじみた草原で、
エキスのなかで煮える火の卵で
いっぱいの萼たちを!

見つけろ、綿毛のアザミらを、
燠火のまなざしをした十頭のロバたちが
その結びを紡ごうと努力している!
見つけろ、椅子である花々を!

そう、見つけろ、黒い鉱脈の中心で
ほぼ石の花々を、― 名高い!―
それらのブロンド色の固い子房のあたりに
あるのは、宝石で飾られた扁桃腺だ!

ぼくらに出すのだ、おお笑劇の役者よ、
きみはそれが可能だ、豪華な朱色の大皿の上の
どろっとしたユリの煮込みを、
それはぼくらの合金のスプーンを腐食する!


             V
誰かがやがて語るのは、大いなる愛、
暗い免償の盗人だろう。
しかしルナンもムル猫も
巨大な青い酒神杖など見たことがない!

きみは、ぼくらの麻痺のなかに
香りによって極度の興奮を起こさせよ。
ぼくらを熱狂させろ、純真に向かって
マリアらよりもさらに純真に. . .

商人! 入植者! 霊媒!
きみの脚韻は湧き出るだろう、バラ色や白色で、
ナトリウム光線のように、
あふれ出るゴムのように!

きみの黒い詩編では、― 軽業師!
屈折した白、緑、赤の光線たちが、
奇妙な花々や電気の走る蝶々から
抜け出している!

ほら! これは地獄の世紀だ!
それで電信柱は飾り立てようと
している、― 鉄の歌には竪琴を、
きみの見事な肩甲骨を!

とりわけ、ジャガイモの
病気についての解釈を韻文で書け!
― そして、神秘に満ちた
詩の創作には

トレギエからパラマリボまで
読まなければならない、
フィギエ氏の何巻かを買い足せ、
― 挿絵入り! ― アシェット書店だ!

                アルシド バヴァ

A.R.
1871年7月14日