現場思考型の一例

2013-05-01 13:37:48 | 司法試験関連

現場思考型の問題は,要は「未知の問題」である事が殆どなのだが,どうしても「知識で」解こうとしてしまうのが人間の哀しい性である。

昨年の宅配便の差押の可否については,令状の名宛人が甲,宅配便が乙宛という「ズレ」がポイントの一つだった。この場合,まず原則を確認する。この場合乙宛の令状が必要なはずである。何故なら,管理権侵害が許可されているのは「甲」の管理権に関してだからである。

そこでこう考える。何とか「適法にできないか」と。「甲の管理権侵害」ならば許されるわけだから,「実は甲の管理権が及んでいる」=「乙宛ではあるけど,甲宛と評価できないか」と考えてみるわけである。そのような視点で問題文を読み直すと,本件事件の背景事情と甲乙の関係に関する記述が異様に多いことに気がつく(詳しくは2012年フレーム講義参照)。そこで「これは事実評価の問題だ」と割り切り,甲乙は共犯関係にある,乙宛になっているのは各人のさばく分を便宜上分けて送ったに過ぎない,などと評価をしていくのである。但し問題文の事情からみてどう見ても無理筋なものはご法度。「自分に都合よく事実を歪めている」と試験委員に罵倒されてしまう。この辺も「問題文の読み方」スキルが物を言うところなのである。

これは以前2009年版フレーム講義憲法で,スタンディングの問題は,「何とか自己の権利に関する主張だと言い切る」か,「第三者所有物没収事件に合わせる」かである,という形で説明したところであり,実は発想は同じである。

緊急逮捕を合憲にするには,憲法が許す逮捕類型2つのうち,「令状逮捕」か「現行犯逮捕」のいずれに類すると言い切るしかない,というのも全く同じ発想である。

これらは法律家が好む思考パターンなのである。

Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 勝負の月接近!! | TOP | 行政法の注意事項 »
最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。