No Room For Squares !

レンズ越しに見えるもの または 見えざるもの

宮沢賢治を巡る旅(未遂)

2018-03-06 | 街:岩手






東北ゆかりの作家では、太宰治の殆どの作品は読んでいる。昔、僕は三島由紀夫にいかれていた時期があった。三島は太宰を敵視していて、あんなのを読んだら人間が駄目になると言っていた。だから太宰を読むことには後ろめたさが強く、それが作品を3割り増しで良く感じさせた。逆に三島に感謝したいくらいだ。最近YouTubeで聞いた三島のインタヴューでは、「太宰を嫌う理由は近親憎悪的なものもあり、僕自身にもそういう面があるからだ。逆に自分と全く異なる性質の人であれば嫌う理由もない」というニュアンスのことを言っていて、興味深かった。そんなわけで太宰は僕にとって近しい作家で、五所川原や金木といった津軽方面に太宰の足跡を追うような短い旅も何度も行っている。

続いては寺山修司。こちらはメジャーどころしか読んだことはないが、最近話題の「ああ荒野」などは30年以上前に読んでいる。寺山修司の出版社の担当編集が中平卓馬であり、そこから寺山と森山大道との交流が始まったというのも縁を感じる。30年前に読んだときには、中平卓馬にも森山大道にも興味はなかった。今になって写真というファクターで意味を持ってくるとは意外な展開だった。

そして藤沢周平。こちらは最近まで全く読んだことはなかった。時代小説とかを読む習慣は僕にはないからだ。鶴岡市の藤沢周平ゆかりの場所に行ったり、「たそがれ清兵衛」の映画を観たりするなかで興味を持ち、立て続けに何冊か読んだ。新しい世界を知ったような気がする。特に「蝉しぐれ」は引き込まれた。僕が歳を取ったから時代小説が面白いのか、面白いものをこれまで見逃がしていたのか、考えさせられる。

一方で、全く読んだことがない作家には宮沢賢治がいる。「雨ニモマケズ」の詩くらいは知っているが、「銀河鉄道の夜」も題名しか知らず、無意識に銀河鉄道999を連想している始末だ。記念館には何度か行っているし、生家も見学しているし、今回掲載した写真の羅須地人協会(宮沢賢治の私塾)だって以前に来ている。このブログにも写真を掲載したことがある。花巻の大沢温泉とか鉛温泉という宮沢賢治ゆかりの温泉にも数えきれないほど宿泊している。それにも関らず、ただの一冊の著作も読んだことがないのだ。普段の読書傾向からしても宮沢賢治を読むという発想に至ることはなかった。

この状況を打破すべく、花巻の温泉旅館に泊まり「銀河鉄道の夜」を読む。次の日は羅須地人協会ほか、イギリス海岸など宮沢賢治関連の場所を訪れる。これが今回の企画だった(はず)。泊まる旅館は、この場合「大沢温泉」がベストだろうと思っていた。ところが宿泊日は爆弾低気圧状態で強烈な風が吹いている。以前に大沢温泉の自炊部に泊まった際、震度4の地震に襲われた。何百枚と古い窓ガラスが共振するあの恐怖を思うと、踏み切れない。というのが台温泉に泊まった理由だった。結果、「銀河鉄道の夜」は短編集という構成を理解していなかったので、表題には到達しなかった。他の編は何編か読んだ。羅須地人協会は建物の前には行けたが、一般公開はしていなかった。イギリス海岸は北上市にあると思い込んで、通り過ぎてしまった。等々。企画は挫折したのだった。まあ温泉に泊まって本を読んだだけで良しとしよう。



X-PRO2 / XF23mm F1.4R

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4 コメント

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Unknown (ariari)
2018-03-06 23:57:39
文学集などを持ち込んで湯治をする、そんなことに憧れを抱いたことがあります。
たぶんぼくは寝る、ひたすら寝てしまい読書には至らないのではないかと思うわけです。
宮沢賢治先生への思いが強いわたくし、つい彼が生きていた頃へのロマンを感じることがあります。
とりわけ旧東北砕石工場が大好きでここに行くと彼に合えるような気がします。
「下ノ畑ニ…」本当にいるんじゃないかとこっそり見に行きたくなったり。
花巻駅構内の物語「シグナルとシグナレス」も好みなのです。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/2655_30646.html
Unknown (上総)
2018-03-07 00:19:01
「下ノ畑ニ…」
この場所。行ったことあるかも。
文学者でもあり、農学者でもあった賢治先生。

文学を読みながらの温泉。
イーハトーブに行けそう。
師匠 (6x6)
2018-03-07 06:31:51
>たぶんぼくは寝る、ひたすら寝てしまい読書には至らないのではないかと思うわけです。

これは真理だと思います。結局僕も早々に寝てしまいます。読書は乗り物の中か、病院の待合室が一番捗ります。

宮沢賢治さんについては、憧れを持ちつつ全く読んだことがなかった。花巻にこれほど行くのにマズイのではないか。そんな事情で、やっと「銀河鉄道の夜」編に入りました。もっと若い頃に読んでおけば、花巻の見方も変わったかもしれませんね。
表題、読んでみます。
上総さん (6x6)
2018-03-07 06:35:06
以前は別の場所にあったそうですが、いまは花巻農業高校の敷地内にあります。駐車場の脇では女子高生が何かの食料研究をしていいます。不思議な空間ですが、内部見学はできませんでした。多分冬季だから?

本を読んですぐに寝てしまい、何故か車が水没する夢をみました。

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