時の谷間に置き忘れ去られたかのような遊園地がある。
かつては、地区唯一の遊園地としてかなりの数の観光客が訪れたという。
運営会社が経営難から閉鎖しようとしたところ、地元からの要望もあり、市の管理下でかろうじて運営されることになった。
だが、ほとんどの遊具は運行が停止され、さながら廃墟の中の公園といった風情をみせている。
7月の連休の中日、ここに行ってみた。
園内には殆ど人気がなく、まるでゴーストタウンだ。
管理人らしき方が話しかけてきた。
「何の写真を撮るのかい? 遊具は何も動いていないよ。さびれちゃって撮るものなんかないよ」
そう彼は自嘲ぎみに言った。
そんな感じが好きなのだと僕が伝えると、彼はかつてのこの遊園地の賑わい振りを説明してくれた。
「遊具が動いている間は、人は来ていたんだ。市の予算がついて遊具さえ動かせれば、人だって戻ってくる。ここは子供の楽園だったんだ」
確かに、園内のアトラクションはほとんど停止している。
遊具自体は、まだメンテナンスさえすれば十分使えそうだ。
ただ、メンテナンスして、点検し十分な安全性を確保して運行するとなると、その道筋は容易ではないことは、誰の眼に明らかだ。
列車を模した電気自動車。まだまだ使えそうだ。
悲しげな表情にみえる。
これまで、いくつもの閉鎖された遊園地をみてきた。
今にもつぶれそうな閑散とした遊園地もみてきた。
でも、ここは、そのどれとも違う。
生かすでもなく、潰すでもなく、まるで蛇の生殺し状態で存在している。
やがて、遊具は使わないまま老朽化して、生きながら廃墟と化すだろう。
いや、もうそうなっているのかもしれない。
あたかも生きながらにして白骨化していく人間を思わせる。
暗澹たる気分になりかけた時、一人の女性が話しかけてきた。
(続く)
photo by Canon EOS40D
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