Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

映画「NORIN TEN ~ ”農の神”と呼ばれた男「稲塚権次郎物語」

2015-06-01 | 映画・テレビ・演劇・芸能

 5/30(土)、「高岡芙蓉会」の謡曲大会が無事終わった。3月に2回、5月に2回、今年になってから早4回も私の出番がある会があり、中でも蒼山会と芙蓉会は舞囃子で太鼓を打つのでとても緊張する。今年は両方とも同じ曲で「右近」、今までも何度か打っているのに、前日の「申し合わせ」(リハーサル)が散々だったので、そろそろ潮時だな~と一晩落ち込んでいた。皆さんに励まされ、どうやら恙なく終わり、もう少し続けてみようと言う気になっているから現金なものだ。

 翌日曜日の昨日は、1日中ぼんやり過ごし充分に休養した。延び延びになっていた電話をかけたり、メールをしたり…。
 さて、5/22(金)に見てきた映画を紹介します。今、県内で先行上映中の「NORIN TEN ~ 稲塚権次郎物語」だ。高岡では、6/7(日)までと聞いている。全国公開は今秋らしい。↓は、城端町「じょうはな座」での特別試写会の様子。監督や出演者のトークがあったらしい(トップ写真)。      

 ♪誰かさんと 誰かさんが 麦畑 チュッチュッチュッチュッ している いいじゃないか 僕には恋人ないけれど いつかは誰かさんと 麦畑♪ (なかにし礼作詩)  原曲の歌詞は、ロバート・バーンズの「ライ麦畑で」。ライ麦も小麦も、昔は背丈が高くこっそり隠れることができた。背が低く倒れにくい、高収量品種の「小麦農林10号」の遺伝子が育種されるまでは…。この遺伝子の普及により世界、特にアジアの発展途上国の小麦の収量が目覚ましく増えたそうだ。それが、80年前(1935年)のことだった。

 「農林10号」の生みの親、稲塚権次郎(1897~1988)さんは、南砺市(旧東砺波郡蓑谷村西明)の農家の長男として誕生。福野農学校から、東京帝国大学 農科大学農学実科に入学、育種学を学んだ人。同郷の偉人として名前だけはなんとなく聞いていた。数年前に福野高校の同窓会が開かれた時、「巌淨閣」(明治期に建てられた古い校舎)を訪ね、「権次郎さんのコーナー」で、彼の功績が展示されているのを見たが、よくわからなかったものだ。この映画で、その人柄や研究に捧げた人生を改めて知ることができた。
 育種80年を記念し映画化の話が進んでいる、仲代達矢さんが主演するなどのニュースがチラチラと耳に入って来た。同級生が何人かエキストラ出演する、同級生の娘さんで書家の方がタイトル文字を揮毫などのニュースも…。 県内上映も短期間と聞き、忙しい最中にようこ姫さんを誘って観に行った。 ↓は、ポスター。

 映画が始まると、真っ赤なポロシャツの権次郎さん(仲代達矢)がオートバイに乗って、田圃道を走っている姿が現れる。後からトラックが来てもどこ吹く風。写生中の小学生達が「権次郎さ~ん」と呼びかけ、手を振っている。道で転倒することもあっただろう。故郷の城端へ帰ってからの晩年は変わり者で通っていたとも聞く。が、村人達には親しまれていた様子だ。長い間、地元を離れ育種に没頭し、北京にまで渡り、戦後は金沢に赴任、最後に奥さんと二人、城端へ戻った後は、親や妻を愛し、故郷を大切に思って生きられたことが伺われた。

 権次郎さんは、福野農学校で学び、ダーウインの「種の起源」と運命的な出会いをします。貧農の家で進学を断念しますが、本家の援助のおかげで東京帝大へ進みます。昭和の初め、国を挙げて食料増産が叫ばれる中、「美味しくてたくさん採れる米と麦」の育種をめざし研究を続けます。青年時代を「無名塾」の俳優の松崎謙二さん、母親に藤田弓子さん、妻イトに野村真美さん、同僚に益岡徹さんなどが出演しておられます。

 大学卒業後、秋田で「陸羽132号」などの米の改良に係わります。この品種が「こしひかり」の元となったそうです。もっと米をと望んだにもかかわらず、8年後には岩手で小麦の育種に携わることになります。国の方針なのですね。ここで、「農林10号」を育種します。イトさんとの出会いもあり、故郷で結婚式を挙げます。
 大戦前の、1938年中国・華北産業科学研究所に赴任。権次郎さんは単身で、と言いますがイトさんはついて行きます。そして、戦争、終戦…。すぐ戻る同僚もいる中で、彼と他数人が残留組になるのです。友人との別れの場面が泣けました。二人とも謡曲を習っていたのでしょう。「俊寛」を謡いながら涙ながらに舞うのです。戦後の中国での生活の中で、イトさんは心を患い廃人同様になって帰国します。その後、金沢に赴任、定年を迎えて城端の実家に戻るのです。母こうさんと妻イトさんと3人で暮らし、イトさんの髪を梳いたり、洗い物をしたり、優しく看病します。母と妻を見送り、1988(昭和63)年、92歳で城端で亡くなられました。

 伝記ものでドキュメンタリータッチの映画だが、私にとっては故郷の人、感動する場面がたくさんあった。エキストラで出演した同級生達はどこ?と、目を凝らしていたがわからずじまい。残念。

 ↓は、図書館で借りた原作となった本です。作者の千田篤さんは富山の方。友人のasaちゃんのお父さんが町医者として実名で登場(名前だけですが)しておられる。  

 ↓は、本の中の写真からいくつか紹介します。大学の卒業写真。 

 ↓ 克明にとられた実家時代のノート。「まっさん」のノートもこんなでしたね。 

 ↓ 実験中の権次郎さん。 

 ↓ 東北の大凶作を救った陸羽132号など。 

 ↓ 岩手時代。 

 ↓ 盛岡の写真館での記念撮影。 

 ↓ 金沢で開かれた「日本育種学会」のパーティで。ノーベル賞を受賞したボーローグ博士と対面。博士は「農林10号」の遺伝子を受け継ぐ小麦を誕生させた。 

 ↓ 生家近くに建てられた胸像の前で。

 県外の友人達も読むと思うので、長くなりましたが細かく紹介しました。


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (なは)
2015-06-01 18:19:35
清姫様
富山県、というより砺波の福野農学校から優れた人が出られたのですね!
詳しく紹介してくださってありがとう!宮沢賢治のような人だと思いながら読みました。
昭和の初期も米や麦や増産出来ない時代に研究を重ねられたのですね。
奥さんのお世話を為さるところは高村光太郎を想像しました。業を成し遂げた人の優しさとか凄いとおもいました。 「世界の食料危機を救ったと言われる人はお顔もきりっとしていられます。
私は結局、秋にならないと見に行けそうにないです。
返信する
Unknown (千葉matsu)
2015-06-01 18:33:58
稲塚権次郎長い間城端で生まれ育って始めて聞きました長い歴史の福野高校の方も東大一号の生徒では無いですか?蓑谷の生まれと聞くと何か誇りに思いますね。図書館などにゆくと関係性の有る本などが見つかりますか?神田の古本屋さんにでも行かないと見つからないような気がします良い映画を観て来ましたね、ありがとうございました、kaさん富山のnoさん城端の同級生みんな知ってるのですか、私の無知だったのかな~。
返信する
Unknown (清姫)
2015-06-01 22:18:01
なはさん
本は20年ほど前の発行です。高岡の市立図書館で借りました。千葉の友人の姪ごさんが見つけ、東京で買ったそうです。お祖父ちゃんの名前が出ていると、お母さんや叔母ちゃんに知らせたみたい。
本では、宮沢賢治についてもかなりページを割いています。同学年のようですね。二人の出会いはないのですが、お米を介しての出会いがあるのです。私も智恵子抄を思い出して見ていました。
同級生のお菓子やさんが、彼のお父さんと権次郎さんが一緒に、お若い頃の大坪先生に謡を習っていたと話していましたよ。
秋にはぜひ観てくださいね。
返信する
Unknown (清姫)
2015-06-01 22:26:00
千葉matsuさん
本は、asaちゃんも持っておられます。書店で注文すれば取り寄せてくれると思いますよ。アマゾンでも買えるかも?
映画の方がずっとわかりやすいですよ。早○さんや永○さんがエキストラで出ているそうです。村人が出て来る場面があったからきっとそこでしょう。
KaさんやNoさんは、どうでしょうね?城端の人は皆知っています。今秋公開なので、その頃にまた知らせますから、ぜひ見てくださいね。
返信する
Unknown (風子)
2015-06-02 21:27:36
清姫さん
このポスターは井口村の日帰り湯泉『花椿』で見ました。
何だろう?とただ眺めていただけでしたが、こういうおはなしだったんですね。
立派な人は奥さんを含め、みんなを大事になさいますね。
返信する
Unknown (清姫)
2015-06-02 23:54:43
風子さん
井口にも貼ってありましたか。城端は町をあげて協力したみたいです。エキストラのほか裏方の仕事もいっぱいあったとか…。
お琴も惹かれる素適な奥さまが、廃人のようになって・・・戦争のむごさを思い知らされました。
秋に全国公開されたら見てくださいね。
先日、番屋街で井上菓子舗さんに寄りました。お義姉様にもお会いしましたよ。お菓子オマケしてもらいました。ありがとう。
返信する
Unknown ()
2015-06-04 01:02:32
誘っていただいてありがとう。
が、あなたのように、予備知識もなく、ただ漫然とみていました。
本も調べて、詳しく書いていますね。
私は、書きようがないな、と思いながら伸び伸びになっています。
書くときは、参考にさせてください
返信する
Unknown (清姫)
2015-06-04 09:11:35
姫ちゃん
そうですね、書きようがなかったですか。
あの後も友達からいろいろ情報が入って…。かなりの人が「じょうはな座」で見ているのですよ。本も図書館ですぐ見つかり借りました。
北海道旅行には、エキストラで出た人も来るので話が聞けることでしょう。
チラシ、平米へ持って行くつもりです。大坪先生が謡を教えておられたそうだから…。
返信する

コメントを投稿