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假面劇場 その②

2007-01-13 06:29:22 | 物語

 資料は、遺跡から発掘され現在アーベンドリス図書館で保管されているアブモウル語による「假面取扱師規範」である。もっとも、ベルデナウル語よりも文法的に複雑であり言語学的に数段進化しているアブモウル語の解読に目途さえ見いだせずにいる諸君にとって資料云々は笑止の沙汰であろうが。
 古代アブモウルにおいても都市建設の当初から、かかる奇病が蔓延した証拠はなく第六代王朝以降のことと推定される。この病気とアブモウル文明との関係は、カニバリズムとベルデナウル文明との関係に匹敵しており、互いにそれなくしては成立し得ない、切っても切れない密接な間柄にある。
 奇病の症状は、報道にはまったく触れられていないが、疑いもなく假面病であると断言できる。
 古代アブモウル市のように専門の假面取扱師が養成されていたならば、少なくとも当面の生命は維持できたはずである。気の毒な発掘隊員は、近代的な設備を誇るユーブロン病院で筆舌に尽くしがたい苦痛の末に、硬直した顔面と頭蓋の炸裂という痛ましい死を迎えねばならなかったのである。