2012年 短歌

青空に紙飛行機を放り投ぐ弧を描きつつ落ちて行く夏 もろ肌を脱いで豊かな黒髪を洗ひゐし母の遠き面影　 棕櫚の葉の飛蝗作ればそのあまりリアルな様に子らの驚き 蓮の花散りて半ばは己が葉に寝釈迦の如く横たはりをり 椋鳥のねぐら争ふ街路樹の幹に括らる空室の札 さまざまの踵潰れし靴乱る町の医院の休暇果つる日 誰にでも死は来ると言ふ老医師の講演会に和む会場 通るたび吠えつき来る犬ありしポチと書か . . . 本文を読む

「終 幕」

恒例の観劇会に行って来た。実は身辺多忙のため今回で退会した。ところが丁度、年に１度の当番が回って来て、まあ、ズルしても良かったのだが、「最後でもあるし…」と参加した。会場係を仰せつかって、皮肉なことに「今回の減員は〇人」などの文字が入った大看板を会場中央で芝居が始まるまで、持たされた。 思えばこれまでに40数作観たことになる。大体の傾向の物は観たような気がするが、それにしても小劇団の数には驚く。 . . . 本文を読む

「大選挙」

衆院選は大方の予想通り「自民党」の圧勝に終わった。投票日は午後から句会があったので、前日に投票を済ましたが、会場は結構混んでいた。候補者、党の選任のほか、いつものことながら、最高裁判所裁判官に対する国民審査という形式の最たるものやらされた。今はネット時代なので、その気になれば左右両陣営の〈コメント〉を探せないこともないが、正直、そこまでやる気もしない。 政治にも無関心に近い。友人間でもせいぜい当 . . . 本文を読む

「収穫祭 ２」

先日、今年２回目の「収穫祭」をやって来た。初冬のＯ農園には里芋とサツマイモ、出来損ないの落花生が哀しく残るのみで、目に付くのは過日、植えられた玉葱の苗が横たわっているだけである。それでも里芋の出来はまずまずで、サツマイモも巨大な大きさになっていた。あまりの大きさに掘り上げるスコップで大分、削ってしまう物も出る始末。 落花生は「権兵衛が種まきゃ、カラスがほじくる」で、殆ど鴉の胃袋に収まってしまった . . . 本文を読む

「佐竹ッ原」

前回、ちょっと触れた中村翫右衛門の『演技自伝』の中に、「野州（栃木）の代官の娘だった祖母が鯨井と云う富豪に奉公し、そこの若主人のお手がついて、親類の反対のために駆落ちした…」とある。その後、運が向いて下谷竹町15番地に家を建てた。それは明治の末期か。この下谷竹町は私が夜間高校から大学を卒業するまでアルバイトをした書店があった町である。 子どもの頃の翫右衛門は「竹町公園で遊んだ」と云い、学校はその . . . 本文を読む