黒鉄重工

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バンクーバーの保存鉄道の旅 その2【2016/5/21】

2020-06-01 20:49:32 | 旅行・イベント記
バンクーバー南部の街サレーにある保存鉄道「フレーザーバレー保存鉄道」にやってきてそこの運行する列車に乗車します。
手前側の扉から乗車します。進行方向は奥側です。
ところでこれは電車なのですが、上を見てみると架線が張られていません。しかしここから見る限りディーゼル機関車が連結されている様子もありません。これの走行方式は以外な方法が採られていることが保存列車の降車後に判明します。


車内は盛況です。ほぼ満席でした。インターアーバン電車なのでロングシートの通勤仕様を想像していましたが、なんと転換クロスシート(車端部ロングシート)でした。しかし2人掛け座席は現代の基準で見ると小さめ。
インターアーバンは大雑把に言えば都市間を結ぶ電気鉄道で、北米各地の都市で19世紀末から20世紀なかばまで存在した交通手段です。距離にして数十kmの路線が多かった模様。有名なのはロサンゼルスのパシフィック電鉄ですかね。


この電車、単車ですが車内に間仕切りがあって、喫煙室と禁煙室が分離されています。このBC電鉄ことBCER1225は1912年製ですが、当時から分煙意識があったとは驚きです。後年改造されたか、元々は1等/2等合造車だった可能性もありますが。
私が座ったのは喫煙室です。現在では全車禁煙になっています。座席割合は喫煙:禁煙=1:2くらいです。
座席も喫煙席と禁煙席とでは種類が違っていて、喫煙席は木の板のクロスシートですが禁煙席はバスケット柄のクロスシートになっています。

さて11時になるとBCER1225が発車しました。電車の床下からは重厚な吊り掛けモーター音が響いてきます。なんとモーターで自走しているのです。驚いたと同時に自走方式が気になります。
電車は東向きに走りながら小さな貨物ヤードの脇を通ると本線上に転線し、一旦停車。ここで方向転換するようです。なんだ、1km弱くらい走ってここが折り返し地点か。カナダにしちゃ短めなのかなと思いました。
しかし違いました。また駅に戻るのではなく、分岐器を転換して実際の貨物線の本線を走り出したのです。保存鉄道が現役の貨物線を走るのも感激ですが、この線路は元々はBC電鉄のフレーザーバレー線だったところなので、かつての営業線を走っているのも萌ポイントです。


運行範囲を地図上に記すとこんな感じです。フレーザーバレー保存鉄道の乗降場は貨物線の引込線のようなところにあり、まずはそこから貨物線本線に出てくる格好になります。そこから西へ向きを変えて走行し、州道10号線を踏切で渡り、旧サリバン駅まで走ったところが折り返し地点となります。往路と復路は同じ経路です。片道の走行距離は約7kmで、長いですよね。乗車時間は往復1時間とたっぷりあります。


乗車中の見せ場、州道10号線の踏切の通過です。
ちなみにカナダの道路では踏切通過時に自動車を一時停止させる必要は無いので、幹線道路に踏切があろうが道路が詰まることは無いです。


先頭はトラクターとピックアップでした。
運転手も、貨物列車と鉢合わせかよと悪態をついたと思ったらやって来たのはヨタヨタ走る単行電車なので少し驚いたかもしれません。電車の写真を撮っている運転手もいましたね。


いやこれはいいね。
この後は折り返し地点の旧サリバン駅まで走行。


車内にも慣れてきたので各部の観察でも。
これは運転台。マスコンとブレーキなんてのは、日本のそれとそっくりな形状ですね。
日本の鉄道はイギリスを範に取ったのはご存知の通りですが、電車や電気機関車に関してはアメリカの影響を強く受けている部分が見受けられます。現代からは想像しづらいですが、昔のアメリカは電気鉄道先進国の一面も持っていたのですよ・・・。この運転台機器もそれと無関係というわけではないでしょう。


運転台の天井。日本でも見覚えのあるような部品もあって、妙な親近感があります。
吊り下がっている白い紐は呼び鈴の紐でしょう。


車内広告は当時物の復元と思われ。


帰ってきました。駅に到着する直前に通る引込線のところから見える貨物ヤード。コンテナの荷役場っぽいです。黒い入換機関車もいますね。

このヤードを過ぎると駅に到着して終了です。
北米の鉄道の一分野とも言えるインターアーバンに1時間近くも乗れたのは良い体験でした。


駅に到着して1225号の旅は終わり。降り際に座席を撮影していきます。これは喫煙席の木の板の座席。この通り転換クロスシートです。現代人が2人並んで腰掛けるにはやや窮屈です。



こっちはバスケット生地の禁煙席。こちらはなんだかクッションが入っていそう。


駅舎内の資料を見てみる。マーポール駅の時刻表です。いつの時刻表なのか分からないのが残念でありますが。
マーポール駅はルルアイランド線とウェストミンスター・エバーン線が乗り入れる駅で、ルルアイランド線はスティーブストン方面が下り、バンクーバー方面が上り、ウェストミンスター・エバーン線は当駅が起点で、ニューウェストミンスター方面が下りです。
基本的に30分間隔の運転で、当時としても近郊電車としては普段遣い出来る設定だと思います。ニューウェストミンスター方面は1~2時間間隔ですが、これは支線ですかね?
終電の遅さが際立っていて、スティーブストン方面は午前1時30分、バンクーバー方面は2時30分という東京もビックリの時刻です。この設定にはどういう背景があったのか気になりますが、調べる術無し・・・。

ちなみにBC電鉄の路線図はこのサイトが分かりやすいので、参考にしてみてください。マーポール駅は現在のバンクーバー空港の近くにあるよ。


1923年当時の写真。サリバン駅に到着する列車です。1700号を先頭にした4両編成で、1700号は荷物車ですね。
ところで1両目と2両目はよく見ると集電ポールを上げていないんですけど、どういうこっちゃ?3~4両目は不鮮明でよく確認できず。


さて冒頭の疑問の答えです。無架線の線路を走るBCER1225電車はどうやって自走しているのか?正解は、発電機を載せた台車を連結してそこから給電して走る、でした。
1225号の前に連結されているのがいわば発電車です。おそらく手作りと思われる台車の上にそこそこの大きさのする発電機を載っけています。しかも、前照灯、ディッチライト、尾灯も備えていて、本線走行できる仕様です。発電機自体も1225号と合わせた塗装になっていて、雰囲気を大きく損なわない工夫がされています。
発電機で発電した電気は配線を通って1225号に伝わり、モーターや照明等に使われます。連結器はアダプターを介した特殊な形状になっています(これも手作りか)。
これの利点は、1225号の走行機器が原型を保たれるという点でしょう。発電機との配線工事程度の改造で済むと思われます。似たようなアプローチに京都市にある蓄電池で走行する京都市電がありますが、1225号は電源を外部搭載しているので資料性はより高いと言えます。これは上手いことを考えたなと思います。


12時半になると2便目の列車が出発です。


後追い。こちらから見る分には普通のインターアーバンの走行写真です。

というところで今日はここまで。