黒鉄重工

プラモ製作、旅行記執筆をやっています
同人誌通販始めましたhttps://603kurogane.booth.pm/

北米project 3 ~Encouragement of Canadian Rockies. その44 【2015/07/08~18】

2016-10-22 23:44:47 | 海外旅行記

2015年7月17日(金)15時56分
アルバータ州カルガリー カルガリー軍事博物館

軍事博物館の続きです。
博物館はいくつかの区画に分かれていて、陸軍館、空軍館、海軍館、第一次世界大戦館、冷戦館、みたいな感じになっています。中でも海軍館は実機展示が豊富なのです。
というわけでこれらを見ていきましょう。



まずは目立つものから。スーパーマリーン「シーファイアMk XV Seafire Mk XV」。
イギリス空軍の名機スピットファイアを海軍の空母でも運用できるように再設計した艦上戦闘機です。狭い空母でも格納できるように主翼が折り畳まるようになっているのが最大の違いですね。
スピットファイア同様たくさんのマークナンバーがあるんですが(それでもスピットよりは全然少ないが)、Mk XV設計の元になったのはスピットファイアMk XIIです。
これはスピットで初めてマーリンエンジンに替えてグリフォンエンジンを搭載した型式です。グリフォンスピットはオリジナルのマーリンスピットの機体から再設計が加えられて、主翼や胴体が別の形状になっています。ただしMk XIIはまだ再設計されていない段階だったので、マーリンスピットの機体形状にグリフォンエンジンを積んだ格好になります。ややこしいのだ。
1944年後半から生産が始まり、イギリス海軍に配備されたのは1945年5月。ただし、すでにナチスドイツの降伏は目前であり実戦投入はほとんどされず、発注分もほとんどキャンセルされたそうな。
で、戦後にカナダ海軍がこれを購入、自身の持つ空母へと配備しました。イギリス海軍のお古なのか新たに発注したのかは知りませぬが。1948年にシーフューリーに置き換えられるまで使用されました。かなり短命ですね・・・。

この機体(S/N PR-451)は、1946年1月に購入。空母HMCSウォーリアの第803飛行隊(後の第19支援飛行連隊VF-870)に配備されました。その後の経歴は不明ですが、現在はこのように博物館に展示されています。



主翼の折り畳まるところ。やっぱり厚みが薄いなぁと。



後ろから。
主翼は2段折り畳まる様になっていて、あまり見ない方式です。翼端同士がぶつかるのかしら?
PR-451は天蓋後部が胴体と面一になっているいわゆるファストバック式のキャノピーをしています。Mk XVの後期型は零戦みたいな後方視界も確保された涙滴型なので、これは前期型ということになります。
戦後になってファストバック式を作ることもないと思うんで、ということはPR-451はイギリスのお古ということか?



シーファイアを置き換えた機体、ホーカー「シーフューリー F.B. II Sea Fury F.B. II」。
これも第二次世界大戦期のイギリスの戦闘機ですが、初めて見た機体なんであんまよく知りません。ハリケーンから続くホーカー社の「嵐」シリーズの最後の機体です。Furyの意味は「嵐のような激しさ」ですから、ちょっとムリのある名前にも聞こえますが、まあハリケーン、タイフーン、テンペストと来ていよいよネタ切れだったんでしょう。
テンペストのエンジンが、複雑で信頼性が低くて使えないネイピア社のセイバーエンジンだったことから、もうちょっとまともなエンジン使おうぜってことになってブリストル社セントーラス空冷エンジンを採用した戦闘機です。あとは軽量化もしています。
1944年9月に空軍向けのフューリーが初飛行、続く1945年2月には海軍向けシーフューリーも初飛行。ところが同年5月8日にドイツが降伏しやがりましたおかげで速攻でいらない子になってしまいました。フューリーは結局生産されず、シーフューリーもだいぶ発注がキャンセルされました。

で、その宙に浮いてしまったキャンセル分の発注を買ったのがカナダ海軍なのでした。1948年から75機を導入していき、シーファイアを置き換えていきました。1956年までにF2Hバンシーに置き換えられるまで活躍していました。
ここに保存されている機体(S/N WG-565)は空母HMCSマグニフィセントの第870、第871飛行隊で運用されていました。

どうでもいいですけど、プロペラ5枚ってのは何だか気持ち悪いですねこれ。



所属記号はAA A。どういう意味なのかは知らんどす。
ラウンデルは戦後になってから楓の葉を入れたカナダ独自のものになりました。この楓の葉の形が年代によって微妙に異なるのでプラモデル作る時なんかは気をつけないといかんのですが、この形は初めて見たな・・・。1950年代頃まではこのデザインだったらしいようで。ついでに言うと黄色い縁は1952年まで使われていたらしい。・・・ややこしい。
日本くらいだと思いますよ、長い間ラウンデルのデザインが変わらない国。



それで、シーフューリーを置き換えた戦闘機、マクドネルF2H-3「バンシー Banshee」。バンシィと書くとガンダムになってしまうのでここではバンシーと伸ばしますよ。カナダ海軍初のジェット戦闘機にして最後の艦上戦闘機です。
これは元はアメリカ海軍用の艦上戦闘機ですな。初飛行は1947年です。かなり初期のジェット戦闘機と言えましょうぞ。ギザギザの空気取入口マークや空気取入口から見えるエンジンのファンとかが時代を感じさせるなって感じです。
元々は新型ジェット戦闘機の開発が上手く行かなかった時の保険として開発されてましたが、それは頓挫したようで保険のF2Hが最終的に900機弱が製造されることになりました。アメリカ海軍って保険の機体が本命になってばかりだ。
カナダ海軍では1955~1958年にかけて39機を導入、シーフューリーを置き換えていきました。10年経たずに戦闘機を置き換え続けるとか本当に昔の兵器更新ペースは今じゃ信じられないくらいに速いですね。空母HMCSボナベンチャーに配備されていました。
ただしだいぶ扱いに困っていたようで、39機のうち12機を着艦時の事故で失っています。3割に上る数字で、ちょっとヤバいです。
その後、軍の予算は減るわ、機齢が高くなって維持にお金がかかるわ、海軍は対潜重視に方向性を変えるわで1962年に退役しました。後継の戦闘機は無しで、空母自体もしばらくして姿を消しました。



なおこのバンシー、絶対写真を撮らせないぞと言わんばかりに撮りにくい位置取りをしています。
まず機首が部屋の角を向いていて、前から写真を撮れない。せめて横からと思っても展示物が入り込んで邪魔になる。
どうやっても綺麗に全体を取れないという残念な展示になっています。
バンシーの現存機はカナダに3機、アメリカに7機と北米にしては製造数の割に保存機の少ない比較的貴重な機種なので、もうちょいどうにかせいと思います。



目玉の戦闘機の展示の次は艦艇装備を見ていきます。さすがに軍艦はないです。
まずはリンボー対潜迫撃砲。ビクトリアでも見たことのある兵器です。ただ爆雷を投下するよりもこういう対潜兵器を使ったほうがやりやすいのです。手前に置いてあるのが爆雷ですな。
本格的な対潜兵器を見られるのがいいですね。日本は魚雷フェチで潜水艦とか軽く見てたから仕方ないね。なお結果。



対潜魚雷。
自衛隊の護衛艦にも似たような形の魚雷管がありますね。同じやつかしら?



Mk.46対潜魚雷。アメリカ開発の魚雷で、日本では短魚雷と言うと分かりやすいかもしれません。
艦か航空機から発射されて蛇行か円形に進んで接触もしくは近接信管で爆発します。
展示品はレプリカですが実際の廃品を利用したものです。カナダ海軍100周年を記念して武器庫の工員が自作したんだそう。



内部図解もあります。
弾頭の後ろには変圧器や変換器なんかがあります。



ジャイロコンパスとか制御パネルとか。
内部はNATO諸国が使用している魚雷のそれとそっくりに出来ているとのこと。



オットー燃料のタンク。オットー燃料は魚雷などに使われている燃料なんだそうな。詳しいことはよく知りませぬ。



後部の推進装置。エンジンとか歯車がごちゃごちゃと配置されています。



40口径(7.62cm)12ポンド速射高角/低角砲Mk.VとMk.IX砲架 12pdr, 40Caribre, QF, HA/LA, Mk.V Gun on Mk.IX Mounting
カナダ海軍のバンゴール級掃海艇の主武装およびフリゲートの副武装として装備されていました。日本でも使ってたそうだぞ。
ついでに、バンゴール級はイギリス、カナダ、インドの海軍が使用していた掃海艇です。が、なんと日本海軍も使っていたのです。香港占領時に残されていた建造中の艦をかっぱらったようで、第101号、第102号掃海艇と名前を変えて使用していました。



エリコン連装砲Mk.2。名前の説明しかなかったのでそれ以上のことはちょっとわからないです。
こういう機銃まで展示してあるので、まあよくも集めたもんだと感心します。

はい今日はここまで。


その45→