心理カウンセラーの眼!

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躁うつ症と絶望遺伝子の無関係!

2009-05-26 16:22:07 | 脳科学者たちの迷走

昨日の日経新聞に「マウスの躁うつ症状」という記事が載っていました。

「人間の躁うつ症状と関連があるとされるマウスは、

抗うつ薬の試験に使われており、

“強制水泳テスト”の実験によって、

通常陥るはずの“行動的絶望”にならずに躁状態に近くなるマウスがいることが分かった。

ちなみに、海老原教授によると“行動的絶望”とは

人間のうつ状態に近く、強いストレスが原因であきらめたように動かなくなる状態のことをいう。

分析の結果、これらのマウスは“UsP46”という遺伝子が欠損していたことが判明。

正常なUsP46を導入したところ、躁状態から行動的絶望に変わったという。」

記事の概略はこのような内容でした。

さらっと読めば見過ごしてしまいそうな記事ですが

精神疾患ということに限ってよく読めば、“短絡した考え方”がみうけられます。

この先生たちに共通した“欠損した”思考パターンは

まず実験結果を足し算や引き算で理解しようとする点にあります。

遺伝子の探索の中で「見つけた!」事実を

「どのように捉えるのか?」というところで、すでに認知バイアスがかかっているパターン。

おそらくそこから躁症状を抑えるクスリを短絡的に頭にうかべたのでしょうが、

それならうつ病の方はどうしてくれるわけ?(今度はまた遺伝子を急いで取っ払う?)

実験の由来・根拠そのものに欠損があることに気づいていないことが悲しい。・・

この先生たちは人間の精神疾患の躁うつ症で起きる「躁衝動」について、

一度も概念的にとらえようとしたことがないのでしょう。

だから、
マウスの水責め実験と人間の社会参加の葛藤を比喩として同じ範疇に見立てて、
平気な顔をしているのでしょう。
(脳のハードウェアだけを見て、人間の脳のソフトウェアへの視点が欠落している。)

もちろんマウスにも人間にも生命の恒常性のための防衛システムはあります。

しかしマウスには人間固有の言語脳とイメージ脳などありません。
(人間が優れているとか言っているのではありません、「社会」と「観念」を持つということです。念のため)

人がうつ病に陥るためには、
自分が社会から遠く孤立したと自己観念で思い込むことが成立の要件となるわけです。

精神の疾患とはことほど左様に悩ましいものなのです。

そして、観念的孤立の果てに、無呼吸症的息苦しさと死の予感に耐えかねて

「うつ破り」の躁行動に走るということが躁うつ症状の本態です。

したがって無意識のうちにスウィッチされた異常な行動にみえても

躁の行動自体は破綻した快のイメージにしがみついた自己観念の産物にほかならない。

というわけで、マウスを箱に入れ水責めしている先生たちは

“実験”から遺伝子に欠損が見つかったことに喜んでいるけれど、

これも病的欠損ではなく生命恒常性の危機に変異が引き起こされたととらえるか、

あるいはマウスの進化適応の過程で類の全滅の危機を回避するために

一定数のマウスのDNAに刻印された布石であるとみなすか、

大げさに言うと真実は遥か遠しとするほかない。

マウス君たちも、実験箱で水責めにする

短絡的で非合理な先生たちには少し納得しないでしょう。

まあでも、先生たちはきっと、

わたしたちが、脳神経学や生理学など当然理論的に取り込んだうえでの

精神疾患への考察であることなど理解しようともしないで、

「観念!アハハー。なにそれ、ばかばかしい!」てなことでおしまいにするのでしょう。・・・

それにしても“行動的絶望”という観察の言葉は、あまりにも観念的ではないのだろうか?

(理論的な詳細に興味のある方は、田原先生のゼミのニューズレター(http://www.porsonale.co.jp/semi_c188.htm)をぜひご参考になさってください。)
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