P.F.A. 便り

PIANO 5STEPS ASSOCIATION

ルードヴィヒ・ルネサンス13 ~2010年10月5日号~

2010-12-02 13:18:18 | 音楽

 猛暑、猛暑の夏でした。厳しい残暑も過ぎて、やっと、秋の風が感じられるこのごろ。庭の植物たちも新しい花芽を形成し、やがて来る春に備えています。自然を観察すると、教えられることが実にいっぱいあります。ちょっと手を加えると素敵なことが起こることがわかります。剪定を行い、根を整えて植え替えてやる等の作業が、的確であれば、元気になって大きな花も咲くでしょう。

 自然との付き合い方もいろいろですが、ベートーヴェンも都市化し膨張するウィーンの街に住みながら、ハイリゲンシュタットの森に散歩して、多くのインスピレーションを得ていたようです。

 交響曲第6番「田園」は音楽による森の風景ということでしょう。夜はランプの灯火、交通手段は馬車、という時代でしたが、産業革命の波は押し寄せて、貴族社会から市民社会に移行する混乱期。ナポレオン戦争に大きく揺さぶられる中、各国の王侯貴族との交際から、転換期を迎える時代の先端にいるという感覚が常にあったと思います。

 最後の交響曲第9番「歓びの歌」(合唱付)は、ベートーヴェンがまだ10代の頃に始まったボン大学に聴講した時に触れた、シラーの詩に作曲したものです。その後、ワルドシュタイン伯爵の推薦でハイドンに認められ、ウィーンに留学。苦難がありながらも一徹の道であったと思います。彼は、技術的な進歩と共に失われるかもしれないと危惧される人間性の大切さに気づき、真心に強く訴える曲を書く必要があったということです。そのような人生があるのかと驚かされるばかりです。

 現在、ますます皆に必要とされている「ベートーヴェンの第九」は、世界中で数え切れないほどの公演が行われるようになっています。そのことは、技術的な進歩が一人歩きして、人間性の進歩が危ぶまれていることの証ではないでしょうか。それぞれの分野に携わる現代人の一人一人が、「人格」「認識」「感性」を高めていけるよう、私達にメッセージが送られているのでは・・・


ルードヴィヒ・ルネサンス12 ~2010年7月5日号~

2010-12-02 13:16:05 | 音楽

 時代と共にピアノのレッスンも変わりつつあります。ピアノの教材の流れを知る者には、そこから日本の歴史も見えてくるのでとても興味深いのです。戦前から、ピアノを習った方たちのほとんどが使い、今も一番多く使われているのが、名著『バイエル』でしょう。

 戦後になって、フランスから帰国された安川加寿子先生が『メトード・ローズ』を出版されて、これも現在、広く使われています。その後、アメリカの『トンプソン』、ハンガリーの『ピアノの学校』、ロシアの教材等、世界中にすばらしい内容の教則本が存在するわけです。私は、ピアノ教師として30年以上、生徒さんの状況に応じて、優れた教則本の各教材から、必要な所を抜粋し、使い分けてきました。

 2002年、ピアノカレッジ・ルネックと共に『5ステップ・ピアノカリキュラム』が生まれて状況がいっぺん、レッスンはとても分かりやすく、皆、楽しみながらピアノを習得しています。

 練習は「テクテクぴょんぴょん」という単純な形に集約され、水泳のバタ足練習のように基礎訓練から始まります。同時に、文字を覚えるように音符に親しみながら、日本のわらべ歌と合わせて習うピアノは、最初から、歌うように弾ける指を作ることに結びついています。次の段階では、主和音、属和音、下属和音になじむためのやさしい楽曲を習得して移調して弾き、早い段階で12の調があることを学びます。黒鍵になじむことが目標です。テクニックは体で覚える事なので、継続的にゆっくり確実に身についていくものです。併行して、古今の名曲を弾いていき、音楽から各時代を理解し、さまざまなお国柄に触れることができます。オリジナル作品からは、作曲家と直に対話することで、よりリアルに作品と向き合うことになります。

 教養・趣味として文化・芸術に触れ、感性豊かに自分と向き合う時間を持つ事は理想です。そんな大人達がいる社会でこそ、子供たちも「心豊かに」育つのではないでしょうか。


ルードヴィヒ・ルネサンス11 ~2010年4月5日号~

2010-12-02 13:11:19 | 音楽

 お花見はいかがでしたか?

 桜の開花・・・この劇的な日本の季節の変わり目を、いつからか「桜前線」と名づけて天気予報のように予測される便利な世の中です。TVのニュース等の情報配信に頼るあまり、自分の目で空を見て、雲の様子からお天気を予測したり、「蕾のふくらみ」からお花見の日程を決めたりする当たり前の「感覚」が失われつつあるのではないかと心配になります。

 新学期、この教室では新入生を迎え、身近な唄を歌いながら、さまざまな「約束」を覚えてもらいます。まず、音楽を表す記号である音符を「ソの約束の線」という一線譜で習います。西洋音楽では、旋律が左から右へ進む楽譜に置き換えられるわけです。音や唄声という自然現象ともいえる「音楽」が、人の心を伝える音楽、表現として、芸術としての音楽になるための初めの一歩です。

 人として、「どんな約束事を身につけていくか」が、成長するにしたがって、ひととなり、即ち人格を形成すると考えられます。そもそも、赤ちゃんがお母さんや家族の話す言葉を覚えるということも、広い意味での「約束」の始まりです。新鮮な「感覚」で家族の愛情を一身に受けて「感動する心」と共に成長する子供たち。あらゆる経験を糧にして、大人になる過程にある生徒たちと、ピアノをとおして共に学び、ともに進む教室です。

 子供たちに肝心な約束事を教える立場にある親や先生は、子供に対して大きな責任があります。あふれる情報の中で、大人としての「認識」は確かな物だろうかと、常に自分を振り返る柔らかな感性を持つと同時に、ゆるぎない自信も持たなくてはいけません。それは自分ができることをしていくことによって磨かれていく「感性」です。大人の教室では、その日のテーマによってコミュニケーションを図りながら、趣味としてのピアノから最大限の収穫を得ています。『5ステップ』によって、どんどん弾いていただくことは子供も大人もなにも変わりませんが・・・。