近くに戒壇院・日吉神社がある。散歩には甚だ好都合である。以前は観世音寺の前御住職に種々雑談としての話を伺った。しかしそれは全くの世間話にすぎなかった。今思えば折角の機会ではあった。これは閑田耕筆にある一挿話である。
大宰府の観世音寺は日本三戒壇の一つであるが、荒れ果ててしまっている。ある年、境界が不確かなので補修したところ、地中から壺を掘り出した。壮麗な壺で内には抹香のような砂があり、これは釈尊霊山で説法し給う會座のものであると金牌に書かれていた。聖武天皇の護法の御志を嘉し贈り賜れたものと、思われる。他の三戒壇とも同じような金牌や砂が定めしあるだろう。
前御住職にお尋ねしてみればよかったと今思わないでもない。