goo blog サービス終了のお知らせ 

小説です

読者の皆様を惹きつけるストーリー展開でありながら、高尚なテーマを持つ外国の小説みたいなものを目指しています。

村 (第4章 2)

2019年01月12日 | 小説

   日曜のその日の午後、呼ばれた来栖を含めた四人は、閻王の間の祭壇に向って、折り畳みの細長いテーブルを前に置き、パイプ椅子に腰かけ、黄道の会の彼らに対するよしこ救出のための諮問の始まるのを待っていた。四人とは、即ち、Y村の郵便局長の前野川亘(まえのがわ わたる)、村役場の守衛の三方真二郎、林業の細村敏弘、そして来栖だった。また、来栖のあずかり知らぬことだったが、あとから彼が人づてに聞いた話では、黄道の会の会員ではないシュナイダーは、黄道の会から丁重な招請を受けたが、出席を拒否したらしかった。
   今回の会合は、村の者たちが噂したような、または、噂がもし真実ならば、精神に障害のあることをよいことに、美貌の古敷田よしこに対して、憎むべき行為を犯した者に対する、黄道の会独自の糾弾または取調べではないはずだった。これは、表向きは、欧開明の庇護の元、村のマスコット的存在でもあった古敷田よしこに対する、『救出』のための決起集会のようなものであった。この四人は、よきにつけ悪きにつけ、よしこと比較的接触があったと思われる人物たちであり、よしこが受けている警察の取り調べに関連して、来栖以外にも参考人として、警察の事情聴取を受けたのは前野川と細村の二人であり、DNA採取にも協力していた。しかし、なぜか来栖のぶな屋敷の隣人でもある三方は、警察からのアプローチは一切なかった。また、ついでに言っておくが、シュナイダーも警察の事情聴取を受けたが、DNA採取については自己の権利として、拒絶したとのことだった。しかし、だいぶ後になって、わかったことは、その後、警察はシュナイダーのDNA鑑定が可能な彼の検体を入手したとのことだった。
   四人はお互いに会話することもなく、皆、押し黙ったまま、時が経つのに身をまかせていた。午後二時はとっくに過ぎ、すでに二時半を過ぎて、四人が待ちくたびれたころ、扉が開き、八雲と日頃欧開明の付き人をしていた二名の屈強な若者が中に入ってきた。
「やあやあ、皆さん、お待たせしてすみません」八雲は、遅参を詫び、彼につき従って入室して来た若者に、持ってきた資料を四人に配るよう、指示をし、四人全員と面談するかのような位置に置かれた椅子に腰掛けて、自分も資料を取りあげた。
「……今日は今も拘置所で日本の官憲の弾圧と戦っておられる欧開明先生のご指示で、古敷田よしこさんの『救出』について、彼女と親交のあった皆さんからお知恵を拝借したくて、わざわざご足労いただきました。皆さんからいただいた、ご意見や情報は、弁護士の斉木さんや古村さんたちにお伝えし、よしこさんの『救出』に役立てたいと思います……」八雲はここで、話をいったん止めて、自分と向い合う四人を見たが、下を向いて、資料に目を通す四人にはこれといった反応はなかった。八雲は話を続けた。
「また、皆さんもご承知の通り、よしこさんには罪はありませんが、そもそも、よしこさんが犯罪の被害にあった可能性が起因する問題で、今回のよしこさんの勾留につながっています。その犯罪の被害の関連の情報についても、皆さんのご協力をお願いしたいのです……」こう言って、八雲は再び四人の方に視線を向けたが、八雲はこの時、Y村郵便局長の前野川がぎくりと肩を震わせたのと、林業を営む細村の資料を持つ手がわずかに震えたのを見逃さなかった。しかし、八雲は何も見なかったかのように、平静に話を続けた。
「この資料の最初のページには、よしこさんが、自分の生んだ子供を隠した――つまり遺棄したと言っている場所とそれに関するよしこさんの供述が書いてあります。警察の徹底的な現地の捜索にかかわらず、何も発見されていないのが、現状ですが……この三か所とも、土を掘り起こして、埋め戻した痕跡があり、それが捜索を難しくさせているのも事実です……もちろん、皆さんもご承知の通り、土を掘り起こして、埋め戻しているのはあの原良さんです……」八雲はこう言って、四人の反応を見たが、この言葉について、とりたて反応を示す者はいなかった。
   八雲が話を続けようとしている矢先、突然閻王の間の外の廊下でざわついた人の気配がして、扉を強く叩く音がした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする