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読者の皆様を惹きつけるストーリー展開でありながら、高尚なテーマを持つ外国の小説みたいなものを目指しています。

村 (第1章 19)

2014年04月27日 | 小説

  来栖信一はここで初めて欧開明の姿を間近で見ることができた。
  長めの髪、鼻筋の通った端正な顔で、その美男子ぶりはまともに見るのが、まぶしいほどだった。それに比べると、東洋人としてはかなり大きい、一メートル八十五以上はあると思われる長身の欧開明より数センチ低いだけで、背丈こそ、日本人としては中背より高かったが、八雲のニキビ面で間の抜けた顏とは好対照だった。
  欧開明が入ってくると、子供たちは驚いて、この普通の人とは思えない容姿の欧開明をじろじろと見ていたが、やがて、玲玲が子供たちにこう伝えた。
「欧開明先生とお客様が皆さんの勉強を見にいらしゃいました。ご挨拶をしましょう!」
  子どもたちは、ばらばらに欧開明とお客と思われる白髪の紳士と、それに欧開明の付き人の若者二人に向かって、「こんにちは!こんにちは!」と挨拶をしたが、最後にぼつりと一番小さい二年生の男の子が「こんちゃ!」と言うと、子供たちは吹きだして大笑いをした。
  実年齢は四十をいくつか超えていると思われる欧開明だが、たいへん若く見えるので、子供たちの好む、ヒーローもののテレビドラマの主人公のお兄さんに見えなくもなかった。
「皆さん、こんにちは!ぼくはおう・かいめいと言います。皆さんには初めて、会うことになるかもしれませんが、皆さんのお父さん、お母さんは、皆、ぼくを知っています。今度、皆さんに宇宙の始まりについてお話ししようかと思いますが、その前に玲玲先生の授業を受けて人間は困ったときどうすればよいのかを勉強してください。皆さんは大きくなったら、必ず世界の困った人たちを助ける偉い人になります……」
  欧開明はそう言うと、参観者用に教室の後ろに置かれたパイプ椅子に腰かけて、じいっと授業の内容を注意して耳をかたむけて聞こうとし始めた。そして白髪の紳士も欧開明の隣りに腰を下ろし、二人の若者もこれにならった。
  玲玲は授業を進めて往き、子供たちの発言に耳を傾けては一つ一つ批評し、よい考えと思われる発言に対してはよくほめて、間違いと思われる考えには、その考えがもたらす悪い結果について再考を促した。では、具体的によい考えとは何か――先ず第一は、喧嘩をしないで二つの村の人々が仲良くして、どちらの村も区別なく一つになり、お互いに助け合うということだった。
  以下の事は子供たちに直接は言わなかったが、黄道の会の教義では、二つの村の対立する状態を赤と青の二つの違う色に例えられ、二つの村は混ざり合い、一つの中間色の紫になっていくことが「善」であった。これは源体宇宙論から言うと、違う色に分かれていることが不正常で「悪」であり、一つになるのはただ、元に戻るだけのことであって、これは二色に止まらず、三色でも、四色でも、無限大の数の色の種類が一つに融け合うことで、これが宇宙の始まりの時は一つの色であり、これは宇宙最大の「善」の状態である源体であると言えた。
  そして、また、別の側面から言うと、源体宇宙論を基本に置いて考える科学であり、前段でもユニークな商品開発に役立っていると説明したが、現実的で冷静で科学的であることだった。
  玲玲が子供たちの意見の中で、特にほめたのは二つの村の人たちが喧嘩せずに、どうしたらよいか仲よく話し合う、と言う意見とと、もう一つは水を無駄使いせず、二つの村の人たちが皆一人一人考えて節約すると言う意見だった。
  そして、玲玲が子供たちに説明した結論は、先ずこの二つの村の人たちは水の為に、喧嘩することを止め、互いに二つの村は一つの村になって、お互い助け合い、仲よくすること、そして、冷静に現実的に考えることの大切さから、先ずこの井戸から出る、毎日の水の量を正確に把握し、また一人あたりの水の飲む量、料理を作るときの量、生活用水の量を計算し、水を節約し、無駄にしないこと、また、二つの村が共同で、井戸堀りの専門家を招き、新しい井戸を掘ることや、近くの別の村から水を買ってくることだった……
  友紀が来栖の袖を引いて、白髪の紳士の方に注意を促して言うのだった。「来栖先生、あの人は、わたし、テレビのニュースで見たことがあります」
「えっつ?誰ですか?」
  友紀がその名前を言いかけて、口を止めた。今まで、沈黙を続けていた、その白髪の紳士が立ち上がり、ゆっくりとした足取りで皆の前に進むと、発言を始めたからだった。

 

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