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読者の皆様を惹きつけるストーリー展開でありながら、高尚なテーマを持つ外国の小説みたいなものを目指しています。

村 (第1章 18)

2013年11月06日 | 小説

 子どもたちと来栖と友紀の自己紹介が一通り終わると、OHPを操作しながら、玲玲は言った。
「みなさん、自己紹介、ありがとうございました。これから、童会の学習を始めます。皆さん、資料の5を出してください」
 《黄道の会 童会 199X年 教育資料5 》と言う字が先ず、スクリーンに照らし出された。
 その後、《井戸の話し》と言う題名が現われたが、それは影絵にも似た、一時代前の中国のアニメの絵ではなく、日本のアニメの絵に間違いなかった。
「中国の西北の黄土高原に貧しい二つの村がありました。その二つの村の一つは楊家村と言い、もう一つの村は石家村と言いました。二つの村の境の草木もまばらな荒野の中に、一つの井戸があり、その井戸を二つの村が共同で使っていました。毎日二つの村の村人たちは、それぞれ水を汲みにやって来るのでした。楊家村にも石家村にもほかの井戸はなく、その水不足の乾いた地方では、雨の多い雨季を除くと、その井戸がその二つの村人たちの命の綱でした……」玲玲は子供たちの顏を見まわして、反応をうかがったが、皆なぜか、神妙な面持ちだったので、彼女は先を続けた。
「ある時たいへんなことが起こりました。この地方では村の男たちが、大事な水汲みの仕事をする習わしでしたが、朝、石家村の男たちより先に来た、楊家村の男たちが水を汲んで、ドラム缶をいっぱいにすると、水がなくなってしまいました。どうやら、水量が減ってしまい、毎日、二つの村の必要な水をまかなうことができなくなってしまったようでした……」
 玲玲は話を続けた。「二つの村の人たちは自分の村の水を得る為、夜も明けない時間にやって来ては、水を全部汲み上げて持って行こうとしましたが、その内、水争いが起き、二つの村の男たちはいがみ合い、激しい喧嘩が起こり、けが人まで出てしまいました……」ここまで、話をしてから、玲玲は子供たちの顏を見回し、こう言いました。
「この二つの村の人たちはどうしたらよいですか?このままでは、どちらの村の人たちも水が足りなくて、死んでしまうかもしれません。また、喧嘩してお互いを殺し合うことになるかもしれません。何か、二つの村の人たちを皆、救う、よい方法がないかどうか、考えてみてください。来栖先生と三輪先生には、お渡ししてある指導要領書に従って、皆さんにヒントをあげてください……では、これから、三十分間、皆さんで話し合ってください。三十分経ったら、皆さんに発表してもらいます……」
 玲玲はそう言って、二つの村の男たちが恐い形相で対峙する場面の絵のOHPのスイッチを切って、自分の席に座った。
 子供たちはそれぞれ自分の考えを言い出した。低学年の子供は意味がよくわかっていたとは言えず、ピントが外れたことを言う子供もいた。
「水道のお水を飲めばよいのに……」
 友紀が水道がない、山奥だと教えた。
「お水が無ければ、別の井戸を掘ればいいんだよ……」別の子供が言った。
「二つの村で水を半分に分けて、使えばよいのに……」三年生の女の子が言った。
「違うわよ。それじゃ、水が足りなくて、どちらの村の人も死んじゃう……」六年生の女の子が言った。
「喧嘩して負けた方は、水のある、ほかのところへ行けばいいよ……」短気で他の子供と喧嘩ばかりしている五年生の男の子が言った。
 暫く、子供たちの声が響いていたが、来栖と友紀の声も聞こえていた。二人はそれぞれ、指導要領書に従って、子供たちを正しい答えに導こうとしていた。
 その時、ドアをノックする音がしたと思うと、あわただしく、八雲が飛び込んできた。
「皆さん、聞いてください。欧開明先生が……欧開明先生が皆さんの学習を見に来られます……」八雲は息を切らしながら皆に伝えた。
 それとほぼ同時に、白髪の男性一人と青年二人を伴い、長身でやせ気味の欧開明の眉目秀麗な姿が皆の前に現れた。

 

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