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小説です

読者の皆様を惹きつけるストーリー展開でありながら、高尚なテーマを持つ外国の小説みたいなものを目指しています。

引っ越しのお知らせ

2025年07月09日 | 小説

「はてなブログ」へ引っ越ししました。

まだ、「はてな」の使い方がよくわかっていないので、慣れるまで時間がかかりそうです。

引っ越し先URLは以下の通りです。

お手数ですが、コピーして、貼り付けで、ご使用ください。

https://sa56.hatenadiary.jp/

しばらくしたら、グーブログから自動転送にします。

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村 (最終章 5)

2025年05月04日 | 小説

 翌日午前、所長室で書類に眼を通していた来栖はアレックスの突然の来訪に驚きを禁じ得なかった。週末の来栖宅でのディナーは予定通りだが、話したいことがあると言うアレックスの表情はいくぶん緊張でこわばっているように来栖には感じられた。
「昨晩、八雲さんがぼくの宿舎を訪ねてこられて、『ふるしきだよしこ』さんの事を話してくれたのです。また、なぜか母からも連絡があり、みちおが大きくなった今だから言えることだけど、子供のころいろいろあったことは誤解しているかもしれないが、皆、僕の父の不倫のせいだと言うのです・・・・・・」アレックスはいっきに語った。
「『ふるしきだよしこ』さんのことを八雲さんが話されたら、わたしは何も言うことはありません・・・・・・彼女は妄想癖があり、いろいろ事実と違うことを周りの人に言っていたことを記憶しています・・・・・・それから一言言っておきたいことは、この所長室の中も黄道の会の公的な空間であり、発言された内容は、皆、本部でもチェックされているようです」来栖はそう言うと、アレックスの顔をのぞき込んだ。アレックスは一瞬来栖の言った言葉の意味がよく飲み込めないよう表情を見せたが、来栖が天井の小さな監視カメラのような物を指し示すと、はっとした表情を見せた。
 来栖は大きなデスクチェアから立ち上がると、窓の外の景色をゆっくり眺めていたが、背後のアレックスが、「失礼します」と言い、扉を閉めて出て行く音が聞こえた。
 来栖のデスクの電話が鳴ったので、来栖はとっさに八雲からだと予感した。
この二十数年間、来栖は黄道の会の内部の人間としていつの間にか、この黄道の会の専制国家の秘密警察のようなやり方に疑問を抱かなくなっていて、自身も言動に気をつけていた。
「はい、来栖ですが・・・・・・」来栖が受話器をとると、果たして八雲だった。
「あー、八雲だけど、所長はわかってると思うけど、『よしこ』の話は今後アレックスにもほかの誰にもしないこと」
「はい」
 来栖がそう言って受話器を置くと、一限目の終了の鐘がなり、児童たちががやがやと廊下にくり出す音が聞こえた。
 とは言っても、来栖の頭に一つの疑問が残った。それはいったい誰が当時小学生のアレックスに彼の本当の母親は「よしこ」だと言ったのだろうか、と言うことだった。来栖には一つの心当たりがあったが、それを誰にも言うことはできなかった。高齢にもかかわらず、未だに引退せず、医師を続けている若木とでもいつか話すしかなかった。
 来栖はなぜなのかわからないが、何の根拠もなく、子供のアレックスにそのような話をしたのは、その包み込むような優しさから「よしこ」に唯一信頼された三方を思い起こした。しかし、それとは別の、二十数年前のある情景が仮想現実のように来栖の眼前に現れた。
 下校途中の数人の男の児童が、あたりを見計らって、畑の大根を抜こうとしていた金村勘吉を見つけ、はやしたてた。「おい、ガマガエルだぞ。ガマガエル、ガマガエル!」児童たちは小石を投げつけた。怒った勘吉は児童たちを追いかけ始めた。「おい、逃げろ」児童たちは駆け出した。その中で、ひときわ体の小さい児童が舗装されていない砂利道の半ばでつまづいて倒れた。「このガキが」追いついた勘吉は手を振り上げたが、はっとして思いとどまり、その児童の顔をじろじろ眺めてから言った。「おまえは『みちお』だろう。おまえのほんとうのかあちゃんは・・・・・・」そのとき、家庭訪問に向かう、自転車に乗った来栖が近づいてきた。口をつぐんだ勘吉を尻目に、その児童は仲間の元へ駆け出した。
  来栖は勘吉がY村でホームレスをしていた時期とアレックスが在籍した年度が合わないし、その仮想現実をあり得ないものと言うことはわかっていたが、その印象から、現実のもののように強く感じていた。

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村 (最終章 4)

2025年04月11日 | 小説

 欧開明の血縁者であるアレックスのY村への到来のニュースはまたたく間にY村の隅々までに知れ渡った。これは黄道の会のホームページよりも黄道の会のケーブルテレビによるところが大きかった。新しくY村に長期在住が決まった黄道の会の会員は逐次、黄道の会本部からケーブルテレビの番組で発表があるのだった。黄道の会初等教育センターに着任し、中国語と「至道」の授業を受け持つこと、簡単な略歴及び黄道の会における彼の等級が公開された。
 このアレックスの着任は、Y村の黄道の会の人々に異様な興奮をもたらした。特にアレックスと同世代のY村の若い男女がアレックスの一挙一動に注目するようになった。それはアレックスが欧開明の血縁者であり、若年であるにもかかわらず、アレックスの黄道の会における等級の高さからくる尊敬と畏怖もあった。アレックスは弱冠二十五歳で、第三層の指導七級(在家)を持っていて、そのことはケーブルテレビの新しくY村に着任した人物紹介の時、字幕で出た略歴の後に、それを追いかけるようにして出てきたので、テレビの前の黄道の会の会員たちに大きなざわめきが起こったことは想像にかたくない。彼の指導職の上には、病気で長期療養を続けている桐野富士夫の八級と十級の欧開明しかいなかった。また、アレックスは着任早々、辞任した桐野富士夫の後、長らく空席となっていた源体宇宙論研究会の主座に定例会の席上、満場一致で選出され、それが一大ニュースとなって、全世界の黄道の会に広まった。
 そのようなアレックスではあったが、職場の上司である来栖に対して、アレックスは従順な姿勢を貫き、自分が黄道の会における上位者であることを鼻にかけることもなく、また、初等教育センター内の教師間の和を乱すこともなく、誰もがアレックスが黄道の会の高位の者であることを意識することはほとんどなかった。ただ、アレックスの教え子である子供たちは陰でアレックスを「プリンス(王子)」とか「グレイドセヴン(7級)」とか呼んでいた。
 初等教育センターの中では、来栖とアレックスのように日本人同士でも、英語を必ず使用しなければならず、日常の教師や児童の日本人同士の会話においては、日本語を解さない外国人の教師や児童がまわりにいなくても、英語で会話することが求められた。そうは言っても、所長の来栖は、所長室に日本人教師を招き入れて、個別に話をするときなどは、仕事の話が終わって、雑談になるときは、日本語を使うことが常であった。
 また、来栖は、自分と関係が比較的よいと感じた若い新任の教師を自分の家に夕食に招くことを慣習にしていたが、アレックスにはなかなかその誘いを言い出せないでいた。それはひとえにアレックスが黄道の会の高位の者で、一定の影響力を持っている者と見なされ、個人的に親しくなることは、何か自分が出世や昇給などで自己の利便を図ろうとする意図があると他人やアレックス本人に思われるのを忌避したいと言う極めて日本人的な無意識の心の作用があったことは否めなかった。
 しかし、ある日のこと、来栖は所長室でアレックスと雑談中、あることがきっかけで、アレックスを家に招くことを決意した。それはアレックスの意外な質問だった。
「来栖先生は、『ふるしきだよしこ』と言う人を知っていますか?」アレックスは真剣な表情で来栖に尋ねた。
 来栖は驚いて、アレックスの顔をまじまじと見つめて、問い返した。
「その人の名前をどうして知っているんですか?」
「ぼくがこのY村で小学生のとき、その人を知っていると言う人から、その人が自分の本当のお母さんだと聞いたからです」アレックスはそう答えると、欧開明の妹である自分の母親が、自分の本当の母親ではないと感じるエピソードを語りたい様子だったが、来栖はそれを押しとどめて、アレックスに週末に自分の家に来ることを提案した。アレックスはちょっとためらう表情を見せたが、来栖に訪問を約束した。

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村 (最終章 3)

2024年10月18日 | 小説

 来栖と八雲はほぼ同世代だったが、八雲が来栖より二歳年上で、この二十数年間、八雲は来栖を呼ぶときは、分校時代は「来栖先生」、初等教育センターに来栖が配属され、その実質的な責任者になってからは、例えば「副所長代理」と言うように、その役職名で呼ぶことが常であった。八雲は来栖と一定の距離を保ちながら、自分がいつも来栖の上位者であることを来栖にわからせようとする雰囲気も来栖は感じていた。
 来栖の方は、初めて八雲に会ったときからこの物語の現在時間まで、八雲のことは「八雲さん」と呼ぶだけで、八雲が副村長になってからでも、その役職名を呼ぶことはなかった。Y村の行政の役職名を黄道の会の中で使用する例は以前村長であった大木の場合しか今までなかった。
 H県の県庁所在地S市の名前を冠したこのS空港は三千メートルの長さの滑走路が一本ある地方都市の空港であったが、国際線も近隣の韓国と台湾からそれぞれ週二便あった。
 アレックスは当日午後に到着する韓国からの便に搭乗予定と来栖は聞いていた。ゲートから韓国人の観光客が恐らくこのH県の温泉目当ての来日であったが、三々五々出てきた。
 来栖は「Mr. Alex Michio Furuzuka」と印刷したA4大の紙を掲げ、ゲートから出てくるその便の搭乗客と思われる人の目のつくところに立っていたが、いくら待ってもそれらしき人物は現れず、人の流れがいったん止まってしまった。
「どうしたんですかね?」一度はゲートを離れ、再び戻ってきた八雲に来栖は問いかけた。
 突然、来栖の携帯電話が鳴った。見慣れない外国からの国際電話のような着信電話番号に来栖は驚き、電話を取りながら、八雲に目配せをした。
「もしもし、来栖先生ですか?ぼくはアレックスです」
 来栖は驚いて、八雲と顔を見合わせた。
 数分後、来栖と八雲の目の前に、バックパックを背負い、大きなスーツケースを持ったアレックス本人が現れた。それは大柄で、筋肉質な日本人とも外国人とも見分けがつかない雰囲気の青年だった。アレックスの容貌は欧開明の血縁者らしく、眉目秀麗の美しい顔立ちであったが、どことなく憂いを帯びた眼の光を時々放つことがあり、快活な雰囲気がすべてかと思うと、はっとさせれることもしばしばだった。
 アレックスの話では、成田着のトランジットの飛行機が中継地のない直行便に変わったので、羽田にも早く着き、日本国内便も変更し、予定より一時間半早くこのS空港に到着したとのことだった。韓国の空港から直接S空港に到着する便のスケジュールは、いちばん最初にアレックスが来栖に連絡したものだったが、変更後の日本国内便がS空港に到着する時刻があまり変わらなかったので、変更になったことをアレックスは来栖に連絡していなかった。
 八雲はこの青年、アレックスと初対面ではないらしく、黄道の会のグローバル大会の時のアレックスの発表を覚えていて、八雲はアレックスとその時の話をしたので、だいぶ打ち解けた様子だった。
 Y村へ向かう車上では、アレックスは驚いたことに、自分が来栖の教え子であったことを語るのであった。来栖が黄道の会の派遣でイギリスの大学で学び、教育学修士の学位を得て、帰国した後、三年間は初等教育センターの準備期間で、公立の学校としてのY村の分校はなくなっていたが、初等教育センターの前身の私立小学校は設立され、黄道の会の会員の家庭の児童の受け入れを開始していた。その時は来栖はこの小学校の教壇に立っていたが、アレックスのことの記憶はなかった。欧開明の血縁者なら、来栖が覚えていないはずはなく、これは不思議なことだった。
「当時は、自分の子供が特別扱いされるのを嫌がった両親の意向で、欧開明先生がぼくの伯父さんであることは秘密でした」アレックスの言葉に驚き、来栖は一人の男の児童を思い起こした――アレックスの現在の容貌から、病弱でよく母親が送り迎えをしていた一人の男の子がアレックスだったような気がしたが、その子の名前は来栖は思い出そうとしても思い出せなかった。
「うーん、名前が思い出せない」来栖がつぶやくと、アレックスが助け船を出した。
「鈴木です」
 来栖は日本人に多い、この平凡な姓を平凡であるがゆえに、どうしても思いだすことができなかった。
 来栖がアレックスから聞いた話によると、アレックスの母は欧開明の実の妹だったが、彼女は兄の欧開明と違い、日本国籍を取得し、黄道の会の会員の鈴木と言う彼の父と結婚した。その後、彼と二つ下の弟が生まれた。彼が中学生になったころ、彼の父の方の原因で、アレックスの母は彼の父と離婚し、結婚前の姓に戻ったとき、母を親権者とするアレックスの姓も母の元の姓の古塚に変わったとのことだった。

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村 (最終章 2)

2024年04月12日 | 小説

   来栖は「源体宇宙論」を根幹とする黄道の会の初等教育によって、世界の平和と人々の幸福の実現に向かって、最大限の努力をする人材の予備軍を育成することを使命としていたが、初等教育センターの所長の権限が、おうかがいをたてるべき上級者の転出や死去により、自分の手中に収まっていく感触を得つつあった。
 最近では、「教義・修行」にあっては欧開明、「方針・運営」においては鵬役員に直接指示を仰ぐことも多く、これらは細部にいたっては彼の裁量の占める範囲も多かった。それは彼の役職の変化に即しているものとも解釈ができた。二十年前最初の来栖の役職は所長不在の初等教育センター副所長代理だったが、その後、副所長、所長代理、所長と昇進して行くにあたって、彼の権限も増大していった。このやり方は日本や欧米とも違い、黄道の会独特のものなのか不明だったが、黄道の会内部では、若年で各組織の責任者に任命された者については、同様の事例が多々あるようであった。
 来栖の元には十二名の初等教育のエキスパートである教師が在籍し、この学校の使用言語は英語と中国語であった。英語は教室で授業に使われる日常言語だったが、黄道の会の教義に関する「至道(しどう)」の授業で使われる言語は中国語であり、それとは別に中国語そのものものを学ぶ中国語の授業が毎日あった。
 来栖は初等教育センター建設の時期に英語教育で有名なヨーロッパのマルタ共和国に派遣され、数ヶ月の英語の特訓を受けた後、イギリスの大学で一年の教育学修士の課程で学び、教育学修士の学位を得ていた。これらの留学費用は皆、黄道の会の負担であったが、そのとき、来栖は黄道の会から誓約書を渡され、サインをさせらていて、その学業を中途で挫折してやめる場合の金銭的な大きなペナルティーがあった。
 中国語に至っては、来栖は漢字を見て、意味を類推することができたが、発音はまるでだめだった。もちろん黄道の会の教義や教典については英語や日本語はもちろん、ほとんどが主要言語に翻訳されていて、黄道の会では来栖に中国語を学ぶことは要求していなかった。
 来栖はこの二十数年間、必要なとき以外、このY村から出たことはなかった。また、来栖の私生活については、この物語の前半に登場していた黄道の会の会員の女性と結婚していたが、これについては機を見て、追って話すことにするので、そのことはさておき、その日、来栖は八雲から一つの通知を受けた。
 欧開明と血縁関係にある一人の青年が初等教育センターの中国語及び「至道」の授業を担当するため、シンガポールからやって来るのだと言う。青年の名前はアレックス・ミチオ・フルヅカ(古塚道生)だった。
 来栖が彼の英文のプロフィールを見ると、驚いたことに出生地としてこのY村が挙げられ、しかも来栖がこのY村に分校の教諭として初めてやってきた同じ年199X年の2月3日生まれだった。 また、彼が欧開明の血縁者と言うのは、八雲から得た情報だったが、欧開明の母方の日本の古塚家の出であることは推測できたが、欧開明の甥なのか、はたまた、もっと遠い縁者なのか不明だった。
 来栖はこのアレックス・ミチオ・フルヅカを初等教育センターの教員に採用するにあたっては、一切関与させてもらえず、これは今までになかったことだった。中央集権的な黄道の会にあっても、来栖は採用の決定権者ではなかったにもかかわらず、教員の選考や面接の時は、英文の履歴書や職務経歴書を事前に渡され、面接にももちろん参加し、時には欧開明や鵬役員から意見を聞かれることもあるのが、今までの必須の手順だったからである。
 これはこの新任の教員が、欧開明の血縁者と言うことの特例である、と来栖は認識し、特段本部に問い合わせはしなかったが、たいへん異例なことには違いなかった。
 来栖は次の日曜に、H県の県庁所在地S市の空港に午後到着するアレックスを自分の運転するワンボックスカーで迎えに行くことを決め、そのことを八雲に告げると、これも異例なことだったが、八雲も来栖に同行するとのことだった。

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村 (最終章 1)

2024年03月12日 | 小説

   欧開明釈放の日から二十数年の歳月が流れた。その間、黄道の会が日本の社会だけでなく、世界の国々で受け入れられ、定着していくプロセスについて、一つ一つ取り上げることよりも、この物語を再スタートさせるにあたっては、欧開明釈放の日からまだ日も浅い時期に発生した二人の人間の死について語らなければならない。
   欧開明を全真教の流れをくむ道教の道士の一人と見なすならば、出家の修行者であり、本来女性と性的関係を持つことは考えられなかったが、古敷田よしことの疑惑、また、その関連のことを目撃し、本来密告者としての立場にあるかのように思われた金村勘吉、この疑惑の直接的、間接的の関係者二人が相次いで不審死をとげたことは特筆に値すべきことだった。
   先ず、古敷田よしこの転落死についてであるが、Y村の通称「お花畑」の山の斜面の下の崖下で彼女の遺体を発見したのは原良だった。
   それは大雨の降った翌日の朝のことだった。宝探しで掘る場所を物色するため、早朝に地図や資料を片手に山中を歩き回るのが原良の日課だったが、「お花畑」の崖下の山林で白い物体を見かけたのを不思議に思い、普段誰も人が入らない領域だったが、分け入るとそれは原良もよく知るところのよしこの無残な姿だった。
   他殺、自殺、事故の三つの方面からの捜査が進められたが、前日の夜の大雨の中、足元がすべりやすい状況下でよしこが足をすべらせて、崖下に転落したのは間違いなく、また、「お花畑」はよしこの行動範囲で、よく出没する場所であり、事故の可能性が高かった。なぜなら、崖上のよしこが足をすべらせた場所には他の足跡はなく、奇矯な行動の多い彼女が大雨の中、この崖上を徘徊していたとしても、何も不自然なことはなかったからである。よしこについては警察にとって準強姦罪(当時の呼称)の被害者として、また嬰児殺害死体遺棄の被疑者としての聞き取り及び捜査対象でもあったので、この転落死については慎重に現場検証と捜査が行われたが、結論は事故死としての扱いに落ち着いたようだった。
   金村勘吉の死については、労働災害による死亡事故――いわゆる労災死として、何らの疑いもなく処理された。
   それはこのような状況だった。Y村の黄道の会の傘下にある企業の一つに鋳造工場があった。村長の大木の配慮で勘吉はそこで働くことになったが、キューポラと呼ばれる溶解炉で1500度にも達する高温の真っ赤に溶けた鉄――「湯(ゆ)」を取り込んで保持する電解炉に添加剤と呼ばれる成分調整の元素の合金(外見はキャベツ大の石ころのような固まり)を投げ込む仕事をしていた。ここでポイントになることは、この添加剤が大きめだと、真っ赤な溶けた鉄が煮えたぎる炉の大きな穴の中に添加剤を投げ込むとき、反動で自分自身も投げ込んでしまいそうになることがあることである。
 最初勘吉が勤務中行方不明になったことで大騒ぎになり、その後炉の前に台車に乗せられた投下半ばの添加剤が数個があり、これにより、勘吉が炉に落ちたことが類推され、その日の生産は停止した。人が「湯」の中に落ちても瞬時に燃え尽きて、骨も残らないほどの高温なので、勘吉の死を確かめることは不可能だったが、警察と消防による実地検分と調査から、状況から見てほぼ間違いないと判定された。
   二つの死についてはこのように処理されたが、これらに関連する疑問の残る事象が二つあった。「お花畑」の斜面の下の崖から古敷田よしこが転落する二、三日前の夜、付近の山の頂から照射があり、幻灯のように、画像が映し出されていたのを目撃した者があったことだった。もし、大雨の夜、その映し出された画像がよしこが特別な関心を持つ対象であった場合、それを追い求め、彼女が足を滑らせて転落した可能性は否定できなかった。また、もう一つは、金村勘吉がその日、投げ込んだ添加剤の残りの数個の中の一個は通常のものより倍以上の大きさと重さがあり、どうして、このような規格外のものが納入されたのかは不明だった。この二件の事故死は、二件とも、巧妙に仕組まれた殺人の可能性もあったが、それを実証することは不可能であったことを言い置いて、この話を終わりたい。

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村 (第5章 20)

2023年08月02日 | 小説

 黄道の会の新規入会者三名の内、最初に登壇した三十代と思われる女性は、黄道の会に対する感謝の言葉で終始した。
 夫のモラルハラスメントと家庭内暴力に耐えきれず夫と離婚した彼女が、日本の社会の中で母子家庭が経済的にどれほど困難になるかを訴え、食事にも事欠き、将来を悲観して、五歳の娘と一緒に自殺を図ろうと思ったとき、救ってくれたのはたまたま身近にいた黄道の会の人々であったことを語った。
 それに加えて、黄道の会に入会後、Y村に引っ越して来たが、朝晩のお務めによる精神面の安定だけでなく、黄道の会の仲間は皆一つの家族と言う考えのもとに、黄道の会の企業グループでの働く場所や社宅を与えられ、無料の食事の補助も受けていることを報告し、それらがすべて自然で、人の尊厳を傷づけるようなほどこしを受けると言うのではないことを強調した。
 次に出てきたのは、二十歳前後の若い男性だった。彼は中学生の時に「いじめ」に遭い、学校に行かず、ほとんど家に引きこもりがちで一時は飛び降り自殺も考えたが、欧開明の指示の下、黄道の会のお兄さん、お姉さん(主に教師を目指す黄道の会の大学生たち)が定期的に家を訪れ、励ましてくれて、自分はだんだんと復活していき、学校に行くようになり、今では簡単なことのように見えるが、自分にとっては実にたいへんなことで、おかげで高校にも進学でき、今は自分の希望する大学にも合格し、充実した毎日をおくっていることを報告した。今回、念願だった黄道の会に入会することができ、もし、自分と同じような引きこもりの子供がいたら、必ず立ち直らせたい、と宣言した。
 そして、最後は来栖の母だった。来栖は壇上の母を応援するどころか、恥ずかしさでいっぱいで、二人目の若い男性が退いたところで、会場を抜け出したくなり、腰を上げかけると、隣の席の若木に呼び止められた。
「来栖さん、どこへ?」
「ぼくは母の発表が我慢できないんです。どっちみち、自分の息子のことを話すだろうし、恥ずかしくてたまらないです」来栖はまったく耐えきれないという感じで言った。
 若木は来栖の顔を穴のあくほど、注視してから言った。
「どこが恥ずかしいんです? いちばん最後の発表は、さらに皆を感動させるお話だと思いますよ。それにこの会場は、集会が始まると自由に出入りができなくなるんです」
「そうなんですか?」来栖が問い返すと、八雲がいつの間にか来栖のそばに来ていて、何の事前の打診もなかったにもかかわらず、今すぐ壇上に上がって、母のそばに立って欲しいと来栖は言われ、心理的に激しく動揺した。
 来栖は八雲に何度も促され、しぶしぶステージの上に上がったが、驚いたことにこの三人目の新規入会者の発表は来栖の母ではなく、来栖本人が主体であったことだった。
 黄道の会の会員がそれぞれ体験談を語るとき、通常はいちばん最後の会員がいちばん苛酷な状況を黄道の会の信仰と支援により克服できたことを語るのが一般的であったが(最初と中間の発表者は苛酷な状況の程度が入れ替わることもあり)、もう一つのパターンがあり、新しい会員を入会させたことは、たとえ自分の近親者や配偶者であっても、たいへんな功績と見なされ、それがラストを飾ることもあった。
 実際は来栖の母を黄道の会に入会させたのは来栖の隣人の原良によるところが大きかったが、来栖の成果として、黄道の会では扱われ、来栖自身が等級が2階級特進になったのだった。
 来栖は口を開いた。
 「皆様、こんばんは。わたしはY村の分校の教師をしている来栖信一です。自分もまだ入会して間もないのですが、このたびは、最初は黄道の会に批判的だったわたしの母を入会させることができました……」
 会場の参加者からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。
 その後、来栖が降壇すると、代わって、来栖の母が登壇し、このたび黄道の会に入会したいきさつを詳しく語り出した。

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村 (第5章 19)

2023年07月25日 | 小説

   翌日、夜の七時から始まる臨時集会に参加するべく、来栖は大講堂の階段を下りようとして、すぐ前を行く、若木医師に気がついた。来栖は若木に声をかけるといっしょにその当時としては時代の先を行く監視カメラによる認証システムで二人とも大講堂に入り、鳳凰の間に向かった。
   大講堂の鳳凰の間は参加した大勢の人々で熱気に包まれていた。
 来栖は若木に前日、ぶな屋敷のアパートに釈放されて間もない欧開明自ら自分を訪ねてきて、自分が初等教育センターの責任者になることを要請したこと、数年後の自分が世界各国の児童たちに囲まれている姿の映像が映る不思議な玉を欧開明からもらったことを伝えた。若木は来栖の話に一つ一つうなずくと、来栖の肩に手を置き、「頑張ってください」とだけ言った。
    時間が来ると、進行役の八雲が壇上に上がった。
「皆様、こんばんは。お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。これから臨時集会を始めます。欧開明先生のお話」
   大講堂は歓喜の声に溢れ、収拾がつかないくらいだった。八雲は会場が静まるのをいっとき待ったあと、ステージの奥に合図を送って退いた。
 壇上に上がった欧開明は拘置所に入る前と比べると幾分顔が白くなったこと以外、大きな違いは無かった。もちろん服装は修行の時に着る道服ではなく、スーツにネクタイ姿だった。
 先ず欧開明は左手を挙げた。八雲の「ご起立ください」と言う言葉が会場に響き渡ると、会場の参加者は一瞬のざわめきのあと皆立ち上がり、これに習った。欧開明が宇宙の『源体』に敬意を表して「和光同源」を唱えると、会場の参加者たちはそれに続いて唱和した。八雲の「着席」の号令のあと、皆、着席した。
   会場が静まるのを待って、一呼吸置いたあと、欧開明は天から聞こえてくる声とも思える、遠いところから聞こえてくるように感じるややカン高い声で語り始めた。
「皆さん、わたしは今、こうして皆さんの元へ戻ることができました。日本の検察は、われわれに対して、今後も捜査の継続と違法行為の可能性がある事案の摘発と立件に務めていくと言っておりますが、今回は保釈ではなく、完全な釈放を勝ち取ったことからもわかるとおり、検察は敗北をしたのであり、われわれは勝利したのであります」
  この欧開明の言葉を聞いて、会場の参加者からは大歓声が巻き起こった。
「われわれは守られています。自由な信仰を保証する世界各国のリーダーの方々及び各学問の府を代表する世界各国の有識者の方々からもこの黄道の会に対する賛同と支持を得ています。その一方、この日本国内では黄道の会に対して、偏見を持つ政府、マスコミ、それに一般大衆から、大弾圧を受けております。しかし、その中でも一部ではありますが、われわれにご理解とご支持をいただいている政治家の方もいらっしゃいます。例えば長年黄道の会を陰になり日向になり、支えていただいているM党の古塚啓三先生、後で鵬役員から、メッセージのご紹介もあると思います……」ここで、欧開明は一息つくと、一転して、別なことを語り出した。
「……ところで、わたしが拘置所で取り調べを受けている間に、新たに入会された方々おります。本来なら全員のお話を皆様にお聞かせしたいのですが、特に今回は三名の方にご自身の体験を語っていただくことになりました……」
    欧開明がステージの奥に顔を向けると、来栖の母を含む、三名の新規入会者が壇上に現れた。八雲のアナウンスがあり、最近入会した中から選ばれたこの三名が黄道の会に入るに至ったきっかけ及び体験談をこれから一人一人、発表するとのことだった。
   欧開明は一人一人の手を握り、激励の言葉をかけるとステージの奥にしりぞいた。  

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村 (第5章 18)

2023年07月18日 | 小説

   その夜、来栖は早めに帰宅すると、母は不在だった。卓袱台の上には「会合」に行く旨を書いた母の置き手紙と来栖の夕食が置かれていた。来栖は着替えると、テレビのスイッチを入れた。
 夜七時のニュースはトップで欧開明のニュースを伝えた。
「黄道の会の大導師欧開明こと李光逸容疑者が今、正式に釈放されて、T拘置所を出るところです……」テレビの実況はそう伝え、大勢の報道陣にもみくちゃにされながら、グレーのワゴン車に乗り込もうとする長身の欧開明の姿があった。その傍らには来栖には見慣れた顔が垣間見えたーー八雲だった。
 続いて、テレビの画面にはスタジオにいる元検事の大月鉱造、社会学者で新興宗教に詳しい楠木道夫、それに黄道の会を追跡取材しているフリージャーナリストの東堂英子が映し出され、それぞれの識見を述べ始めた。
 元検事の大月は今回検察がいくつかの事件に類する違法行為を公訴できなかったのは、黄道の会の恐らく周到な証拠隠滅と弁護団の緻密な論法によるものだが、検察庁は公訴をあきらめたわけではなく、今後も捜査を継続すること、また、一部のマスコミで報道されたような某政治家からの圧力による釈放を、三権分立の観点から強く否定した。
 また、社会学者の楠木は黄道の会は今回検察で捜査取り調べを受けた違法行為は氷山の一角で、残念ながら合法的で立件できない多くの資産家の黄道の会への財産の多額の寄進の問題、その他黄道の会の会員の子供たちへの幼少期からの黄道の会による洗脳教育も問題とすべきだと述べた。
 一方、ジャーナリストの東堂は、悩みを抱え、大学や専門学校に行かなくなった学生たちが続々と黄道の会に入会して、両親や家族の呼びかけにも反応せず、欧開明の説く「源体宇宙論」に心酔し、黄道の会の大部分を占める在家信者でもなく、修行のため社会から離脱する出家信者になっていく現状を伝えた。
 来栖は日本の社会全体が黄道の会を否定的な反社会的な「悪」と見なしていることに激しい憤りを感じ、テレビのスイッチを切ると、夕食を取ろうとしたが、外が急に騒々しくなったので、たいへん驚いた。
 外の階段を駆け上がる複数の足音が聞こえ、来栖の部屋のドアを叩く音と八雲の声がこだました。
「来栖先生!」
 来栖は立ち上がって、間口の狭いドアを開けると、カミナリに打たれたかのように、その場に棒立ちした。
 八雲の立つ背後には後光が差したように見える長身の欧開明その人の姿があった。その後ろには、来栖の母がいた。
「欧開明先生……」来栖はつぶやき、欧開明の前に進み出た。それは、まるで催眠術にかかったようだった……
 欧開明は来栖の眼を見つめながら、彼の手を取るとしっかりと握りしめ、こう言った。
「来栖信一さん、あなたには黄道の会とP社が始めるプロジェクトの中でもたいへん重要な、初等教育センターの責任者をお願いします。引き受けてくれますね?」
 来栖は自分の意志を表明することもできず、膠着したかのように固まってしまっていたが、突然、無意識に脳天から発したようなハイトーンの声で「はい」と答えていた。
 欧開明はうなずくと、八雲から手渡されたものを来栖の手にしっかり握らせると、踵を返して、ゆっくりと階段を下りていった。八雲やボディガードの面々が後に続いた。
「信一!」母が来栖に駆け寄った。
 来栖は欧開明から手渡された物をよく見た。
 それは水晶の玉のようなものだった。中を眼を凝らして見ると、驚いたことに欧州系、アフリカ系、アジア系等々の世界各地のさまざまな顔かたちの児童たちに囲まれ、天の一点を指差している来栖本人の姿があった。そして、下の方に200X年11月30日と言うその年199X年から数年後の日付があった。
 来栖はこの玉は未来の自分の姿を映し出していて、自分がこのようになるのはもうすでに決まっていることだと、いつの間にか強い確信を感じる自分に気がついた。

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村 (第5章 17)

2023年03月13日 | 小説

   その知らせは、事前にマスコミの報道があったものの、ことのほか小さな扱いだったので、注目する人も少なく、世間の人々には驚きをもって迎えられた。
 Y村のケーブルテレビでは、平日夜は19時から「源体宇宙論」の基礎編、20時からはその応用編の講座をそれぞれ一時間放送するのだが、その日は基礎編が終わって、応用編に入る直前にテロップが入り、緊急ニュースの通知があったかと思うと、いつものようにスーツ、ネクタイ姿の鵬役員が画面に現れ、黄道の会の全会員に対するメッセージを上から目線ではない視点から、厳かに語り出した。
「皆様におかれては、日々の精進、お勤め、たいへん痛み入ります。今、ここにたいへんうれしいご報告をさせていただきます。長きにわたって、検察の取り調べを受けていた欧開明先生が明日、釈放され、このY村に戻ってくることになりました・・・・・・」
 料理を作る手を止めて、テレビの方に目を向けた来栖の母は、驚いて、奥の部屋にいた来栖に声をかけた。
「信一、信一!」
「なんだい、母さん、騒々しいな」来栖は自分の職場の分校から帰ってきたばかりで、着替えをしていた奥の部屋から出てくると、テレビの画面に食い入るように見ていた母をいぶかしげな表情で見ながら、自分もテレビの画面に目を落とした。
「欧開明先生が明日釈放よ!」母の言葉に一瞬反射的に身を震わせた来栖はテレビの画面を見ていたが、ぽつりと言った。
「きっと、また臨時集会があるよ」
 実際、鵬役員の姿が画面から消えたあと、画面が変り、明後日19時から大講堂で帰還した欧開明先生を迎えての臨時集会を行う旨の通知が黄道の会本部からあった。
 来栖の母は噂に聞くだけで、実際の欧開明を見たことがなかった。来栖が欧開明のこの世のものとも思われないような容貌、雰囲気で会う人にたいへんな感動と衝撃を与えること、また、欧開明の口から出てくる言葉が不思議なほど、心に響くことを母に告げると、母は半信半疑ではあったが、欧開明に尋常でない人を惹き付ける力があることを彼女を指導する黄道の会の人たちからも聞いていたので、感覚的に想像できた。
 来栖は欧開明に実際に会い、もし、本当に欧開明から直々に自分の未来への道しるべを指し示されたら、その方向に何一つ迷うことなく邁進することは間違いがないように感じていた。そして、近々、釈放されてY村に戻ってくる欧開明と一日も早く会うことを心から切望する自分に気づき、内心はっとするのだった。
 その翌日の午後、来栖は若木との話によって、黄道の会の初等教育部門のプロジェクトの責任者になることに心を決めた訳ではなかったが、比較的関係が良好とも言える大木に今の自分の心情を伝えたかったのと、こちらからの希望を伝えておくと、その機会が到来するのが早くなるのではないかと言う期待から、八雲に事前に確認したのち、午後の自分の授業のフォローを大屋に託すと、自転車に乗って、大木との面談のために村役場へと向かった。
「そんなに難しく考えんでもええやろう」
 大木は、来栖の迷いから出た言葉に対して、あたかも来栖がナイーブ過ぎて、考え過ぎな人間であるかのように言った。とは言うものの、来栖が欧開明から直々の言葉を聞いたら、恐らく自分は感じるものがあって、この新しい仕事に取り組む意欲も高まるに違いないと言う言葉に大木は同意を示し、来栖に帰還したばかりの欧開明から指導を受ける機会を優先的に設けることを約束した。
 来栖が帰ってから、大木と八雲はひとしきり何やらひそひそ話をしていたが、やがて話を終えた八雲が部屋を出て行こうとしたとき、大木が背後から声をかけた。
「おお、忘れとった。金村勘吉の件は、八雲くんの言う通りでええ。身元引受人はわたしの名義にして、拘置所から出てきたら、Sの工場で働かせるように。本人がいやと言うたら、訴えの取り下げはせんことや」
 八雲は大きくうなずくと、村長室を出て行った。

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