5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

電子書籍はガラパゴスか?

2011-09-27 22:39:40 |  書籍・雑誌
26日の読売オンラインに「電子書籍の世界規格上陸、国内出版界は正念場」というビジネス記事が載った。

それによると、欧米Eブックのデファクト・スタンダード規格の「EPUB」が縦書き日本語に対応することが決まり、アマゾンやアップルが国内の電子書籍市場に本格参入する可能性が出てきたというのである。

現在、日本国内ではアップルのiPadもアマゾンのキンドルも国内配信サービスを始めていない。国内の出版社側が配信契約交渉に消極的だからというのだが、EPUBが縦書きに対応すれば、日本語書籍を配信しやすい環境が整うことになり、最新版のEPUB3はルビ打ち機能も搭載しているというから、iPadやキンドルの日本語対応は瞬く間に完了するだろう。

国内配信の大手もEPUB採用を発表していることから、日本の出版社側の対応も余儀なくなりそうだ。掛け声の割りには、いまひとつ伸びの遅い電子書籍の普及にはずみがつく一方、出版業界は正念場を迎えることになりそうだという。

9月15日には、「シャープがガラパゴスの直販終了へ」という日経の記事が見つかる。去年の冬に発売を開始した新商品が、ものの半年で販売方針の変更を余儀なくされているというのだから、企業の読みの甘さを指摘されてもしょうがあるまい。ツタヤと連携した電子書籍配信サービスは継続するということだったのが、どうやらツヤタの方がシャープの縛りから離れたい様子だという話も伝わっている。シャープという会社の「ガラパゴス」的な体質が見えそうなニュースだ。

シャープ・ツタヤ連合の失敗に見るように、出版・メーカー・配信の三つ巴で角つき合わせが続いている日本の電子書籍市場だが、先輩のアメリカはまた違った問題が起こり始めているというのが、VOAのIPODニュースである。

Eブック大手のアマゾンが「キンドル図書館貸し出しサービス」に参入するというのだが、これは11000の地域図書館にあるEブックをキンドルで自由に借り出すことができるという本の虫にはなんとも嬉しいサービスである。

ただ、ここには沢山のEブックを売りたい出版社側と、Eブックを幅広く貸し出したい図書館側との思惑のズレも生じてくることになる。

<law of first sale>といういったん買い上げた本は所有者の自由にしてよいというルールが長年の商習慣だったのだが、Eブックには別のルール<digital rights management>をというのが出版社側の考え方だ。

ハーパー&コリンズは、Eブックの閲覧回数を26回に制限しており、それ以上の閲覧には再度購入という枷がはまるわけだ。個人所有の場合なら26回でも不便はないだろうが、不特定多数に貸し出す図書館の場合には困った制限というわけだ。こうしてアメリカのEブック市場にも今後解決すべき課題が浮かび上がっている。

Eブック利用客の数が多いアメリカであれば問題解決の方向も見つかるのだろうが、日本の電子書籍にはそれを応援する愛読者層が出来上がってはいない。日本の電子書籍はもたもたと半周遅れになっている。EPUB規格の採用を契機にして、メーカー、出版社、配信会社の合従連衡ができねば、それこそガラパゴス化である。




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