5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

笑う山、泣く山

2017-03-27 21:45:31 | ことば
「山笑ひ人群衆する御寺かな」

早春の山を擬人化した「笑う」という表現にはなかなか味があるとは「ことばの歳時記」の金田一春彦先生。ちなみにこの句は高浜虚子の作だという。

『春山は笑っているよう。夏山は滴るよう。秋山は装うよう。冬山は眠るようだ』と評したのが始めだったようだ。自然や風景の擬人化は中国人たちが巧みなようだが、日本では珍しい。

奥の細道では松尾芭蕉が「松島は笑うがごとく、象潟はうらむがごとし」と書いているが、これなどは中国の例にならったものだろうという。「白銀が招く」とか「海が呼ぶ」とかいった他動的表現は欧米式のものに違いないとも。

自然を静かなものとして眺めるのが好きな東洋、特に日本で顕著だ。一方で自然の対象にも男女の性の区別をつけてしまうのが西洋だから、擬人用法の違いにもこうしたことが影響しているのかもしれないと先生は書いている。

「山笑う」とはいかにものどかでぽかぽかした春の感じを思わせるが、那須高原の雪崩ではトレーニング中の高校生たちが巻き揉まれた痛ましい事故が発生した。

吹雪や雪崩は春の天候変化が起こすもの。表層雪崩は新幹線並みのスピードで山肌を滑り落ちてくる。逃げることはまず難しいのだとTVの天気キャスターが解説していた。

今日の栃木の山々は笑うどころか「山泣く」といった状況にどうやらありそうだ。



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