5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

神様が許した近道

2018-12-18 21:34:34 |  旅行・地域

東海テレビの朝番情報バラエティ〈スイッチ〉にはローカル放送らしいローカルの街道旅番組〈はじめまして〉がある。高井一アナが自ら東海地方の旧街道をつぎつぎに踏破するのだが、もうほとんどの主要街道はカバーしただろう。現在は飛騨の山間を北上する飛騨街道編で、今日はちょうど下呂温泉の中心街、湯の島を紹介していた。

高井アナは鉄道好きらしく、飛騨川に沿って街道と並行する高山線の列車に出逢うことがあると結構興奮気味のレポートになるのだが、10月の放送分では、下呂金山にある大船渡ダムに回り込むJRの特急列車の動きを遠望し、飛騨川を渡った神社の境内を普通列車が走り抜けるという面白い映像を取材して、ひとりで昂奮していた。これは金山中津原にある下原八幡神社だ。グーグル地図で探してみたが神社の名前がスポットできない。狭い私道が途中で消えているから、この辺りが境内ということなのだろう。

さて、境内二つの鳥居の間を高山線の列車がまさに横切ろうとしている写真が今日の中日夕刊の一面のコラム『出発進行・高山線2』に載っているのを見て、高井アナの興奮口調を思い出した。

山と川とに文字通り囲まれたこの神社、祭神は応神天皇、1600年前、仁徳天皇の時代の創建だと伝わるというのだから、なかなか由緒のあるところなのだ。

高山線の飛騨金山-焼石間の開業は昭和4年(1929年)だった。起点の岐阜から各務ヶ原までの第一期が完成したのは大正9年(1920年)、六期の金山-焼石までに10年が掛かっている。北端の富山からも工事は進められ、岐阜-富山の全線226キロが開通したのは昭和9年(1934年)だったのだから、山間路線の工事が超特急だったということがわかる。

早期開業は地元の悲願でもあったわけで、人力頼みで時間がかかるトンネルを減らそうということで、神聖な神社境内に鉄道を敷こうということになったのだという。

寛大な神様のお許しで住民に直接罰は当たらなかったが、第一次大戦以降の覇権政策によって日本はズブズブと世界戦争の沼の中にはまり込むことになる。やがて飛騨金山の駅頭でも出征兵士の見送りが日常化していくのだ。

飛騨川の左岸に住まう住民たちは右岸にある金山の町にでる為には境内の高山線を横切ってから橋を渡る。4月の神社例大祭には豊作祈願の『花笠踊り』が奉納される習わしだが、踊り手になる男の子が減って来るという現代的事情によって、女の子に助っ人を恃むこともあるのだそうだ。

祭り神輿は神域を練っていくのだから、遮断機のない線路をわたる。不慮の事故が起きてはと、JRの係員が毎年遮断機代わりの勤めるのだというが、寛大な神様はきっと住民たちの安全を守ってくれているのだろう。




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