5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

路面電車ルネサンス

2008-03-22 11:44:49 | 行政
ルネサンス繋がりという訳ではないが、「路面電車ルネッサンス」(新潮新書・宇都宮浄人著)を読んだ。

排ガスや渋滞、中心街地の衰退などクルマ社会が関わる都市問題への行政策として、欧米で再評価されている路面電車(LRT)について、素人にもわかりやすく書かれている。最近のNHK・日曜喫茶室のゲスト出演を聴いて、興味をもったのだ。

著者は、車の利用者に便利なまちづくりは、車を使えない人々の生活を逆に不便にしているとして、「《外部不経済》という現象、これは簡単に言えば、個々の企業や個人の経済活動によって、他の企業や個人に悪影響をもたらす効果で、自動車の場合、道路混雑から環境汚染まで、その範囲はひろい」(P61・非効率的な自動車交通)と云い、「《交通権》の発想は、こうした事態を考え直そうというもので、フランスの国内交通基本法に謳われた《国民の誰もが容易に低コストで快適に、同時に社会的コストを増加させないで移動する権利》である」(P124・路面電車の経済政策)と説明する。

外部不経済と交通権を解決する手段として、路面電車が世界の街で再認識が進んでいるわけを「①中規模程度の輸送力をそなえ、②乗り降りがしやすく、③頻度の高い、④柔軟な運行ができ、かつ⑤コストが低く、⑥街の環境改善に寄与してくれる特性をもっている」からだ(P95・路面電車と街づくり)と解説する。

広小路ルネサンスで問題になったトランジットモールについても、「《トランジット・モール》は、街の中心部で車を規制し、路面電車と歩行者だけが通る商店街として再活性化する。世界中でのほぼ共通項であるにもかかわらず、日本でまったく導入されていないというのは奇異な印象すらもつ」(P102・路面電車と街づくり)と断言、国内の先行事例として、2001年の福井駅前の24日にわたる実験を取り上げている。

福井ではJR駅前を始点にする路面電車の駅前部分200メートルがモール化されたのだから、文字通り、JRから路面電車への乗り換え(トランジット)を、歩行客は自動車に邪魔されずに楽にできるわけだ。結果は、歩行者には概ね好評だったが、商店街にはさほどでもなかったようだが、著者は、これをイベントとして捉えた利用客と集客可能性を冷静に読んだ商店側とのバイアスだとし、外国の例でも見られるコミュニティからの理解を得る為の地道な努力が必要だと結ぶ。

団地行きの私鉄バスが乗客減で中止されるというわが町でも、道路改修や駅の立体交差計画など、相変わらず車を中心にした極めて20世紀的な行政政策である。外周部に住む若い車住民は、隣接他都市のスーパーマーケットがご贔屓、年寄りの多い中心域を通過する交通量だけが増加するといった、市域のスプロール化は明らかだ。市行政にとってはこの流れを転換するソフトな頭脳が欲しいところ。わが町にトランジットモールのアイデアは生かされるのだろうか。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿