5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

冬がくる前に

2010-10-29 23:14:02 |  経済・政治・国際
「国際通貨基金(IMF)はパキスタンの経済に憂慮すると発表」というのは、今日のBBCニュースである。

それによると、パキスタンでは、大洪水による農業生産の減少と食糧価格の上昇で、8月のインフレ率12.5%を記録した。2010年のインフレ率は13.5%に上昇するというのがIMFの見通しだ。

貸出利率を上げインフレに対処しようとするパキスタン中央銀行の動きに対し、IMFは4億5千万ドルの融資を決め、パキスタンの通貨への梃入れと、洪水被害者に対する政府支出を援助すると発表した。

穀物やインフラの被害は、430億ドルと見込まれるが、これは2009年GDPの4分の1におよぶ。洪水によるインフラ破壊と工場生産の低下に苦しむ民間産業の落ち込みが、国家予算の赤字減少計画をさらに難しくしているとIMFは報告、2010年のGDPの伸びは2.75%もしくは、それ以下だろうとしている。

モンスーン豪雨が起こしたパキスタン史上最悪の大洪水。ただでさえ不安定で貧乏なパキスタン経済を瀕死の状態に至らしめた元凶だ。

8月中旬の国連の発表では、特に南部の被害は甚大で、損壊家屋90万戸、被災者は2000万人としている。これだけでも、日本人の感覚からすれば膨大で信じ難い数字だが、実際はさらにひどい状態にあるのかも知れない。

冬が近づく南部の被災地は3ヶ月前と同じだというのは、やはりBBCの特派員レポート。

現在でも水が引かず、島になった土地に取り残された状態の住民には、空からヘリコプターがないと近づけないところも依然残されているようだ。特派員のインタビューした人々は、何時まで経っても政府支援がされない現状に「怒り」を通り越して「諦め」の表情だったという。

限られたフードプログラムに縋るだけの生活。食料の分配を長時間待ち続ける人びと、食べたい子供を抱えた親達の焦り、神に祈るのはもはや「速やかな死を」だという父親、痩せこけた幼児に手の施しようのない母親、政府からの支援は何もないと嘆く農民。

被災者は慢性的な栄養失調だが、ここにきてその状態が一段と悪化しているのに、寄付が思うように集まらない現状では、11月には「命の綱」のフードプログラムを半分に減らさざるを得ないという国連の世界食糧計画(WFP)。

27日には、救援物資輸送などにあたっていた陸上自衛隊のヘリコプター団が任務を終えて帰国した。日本政府としては「国際緊急支援をカタチで見せた」と胸を張りたいところだろう。

被災者の食事もままならない毎日が今も続いているのが現状だと聞けば、自衛隊諸兄にはわるいが、せいぜいが政治パフォーマンスといったところ。パキスタン政府の顔が立ち、かわりにパキスタン国民の腹が立つと云うことなのかも知れない。

「支援要請」を繰り返す国連事務総長の声も嗄れてきそうだが、そうもいってはおられまい。せめてフードプログラムの存続ができる程の拠出金を集めねば多くの「命が危ない」のだ。ASEAN首脳会合で菅首相はパキスタン支援を云うだろうか?





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