礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

カルロス・ゴーン前会長の意見陳述を読む

2019-01-12 02:03:31 | コラムと名言

◎カルロス・ゴーン前会長の意見陳述を読む

 今月八日午前一〇時半、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏が、公の席に姿をあらわした。逮捕から五〇日ぶりのことだったという。この日、東京地裁で、「勾留理由開示」があり、ここでゴーン氏は、みずから英語によって意見陳述をおこなった。
 この意見陳述の内容は、同日午後三時から、日本外国人特派員協会で開かれた記者会見の席で、ゴーン氏の弁護人である大鶴基成弁護士から、文書の形で公開されたという。
 私は、翌九日発行の東京新聞朝刊で、その「日本語訳」を読んだが、その後、インターネットで調べてみると、日本経済新聞は、早くも八日一三時五二分の段階で(更新は、同日一八時一二分)、その意見陳述(英語と日本語訳の両方)を公開していた(東京新聞と日本経済新聞とでは、訳文が違う)。これを読んで、いくつか感じたこと、考えさせられたことがあるので、以下、それを述べてみたい。

 ゴーン氏は、みずからが、道義に反するようなことをしていないこと、法律を犯していないこと、ニッサンに損害を与えていないことを強調している。おそらく、ゴーン氏は、ニッサンの再建のために、全身全霊を捧げてきた自分が、そのニッサンの経営に関する案件で逮捕されるなどという事態は、想像すらしなかったことであろう。
 そして、こういう形で自分を葬ろうとしたニッサンの現・経営陣に対して、あるいは、現・経営陣の意を汲んで自分を逮捕した東京地検特捜部に対して、激しく憤っているはずである。
 しかし、この意見陳述を読んでも、そうした「憤り」は感じられない。
 なぜか。おそらく、ここには、ゴーン氏の(あるいはゴーン氏側の)冷静な判断と強かな戦略がある。ゴーン氏は、意見陳述という形をとって、日本と全世界に向けて、有効なメッセージを送った。そのメッセージの対象として意識したのは、第一に、ニッサンの従業員であり、ニッサンの関係者である。第二に、ニッサンを愛する日本人一般であろう。そして、第三に、この事件を注視している海外のメディアだったと思う。
 このメッセージにおいて、ゴーン氏が一番、強調したかったことは、自分がニッサンを愛し、日本を愛し、日本人を愛していることではなかったろうか。そんな自分が、思いもかけない容疑で、長期間の勾留を余儀なくされているという事実を、日本人全体に、あるいは広く世界に訴えようと意図したのではなかったか。そして、このよく推敲された意見陳述は、その意図を、余すところなく伝えるものになっていたと思う。
 今回の意見陳述で、もっとも力が入っていたのは、4の「日産への貢献」のところだったように感じた。日本経済新聞電子版から、その箇所の英文及びその訳文を引用させていただく。

4. Contribution to Nissan
I have dedicated two decades of my life to reviving Nissan and building the Alliance. I worked toward these goals day and night, on the earth and in the air, standing shoulder to shoulder with hardworking Nissan employees around the globe, to create value. The fruits of our labors have been extraordinary. We transformed Nissan, moving it from a position of a debt of 2 trillion yen in 1999 to cash of 1.8 trillion yen at the end of 2006, from 2.5 million cars sold in 1999 at a significant loss to 5.8 million cars sold profitably in 2016. Nissan's asset base tripled during the period. We saw the revival of icons like the Fairlady Z and Nissan G-TR; Nissan's industrial entry into Wuhan, China, St.Petersburg, Russia, Chennai, India, and Resende,Brazil; the pioneering of a mass market for electric cars with the Leaf;the jumpstarting of autonomous cars; the introduction of Mitsubishi Motors to the Alliance; and the Alliance becoming the number one auto group in the world in 20l7, producing more than l0 million cars annually. We created, directly and indirectly, countless jobs in Japan and reestablished Nissan as a pillar of the Japanese economy.
These accomplishments-secured alongside the peerless team of Nissan employees worldwide-are the greatest joy of my life, next to my family.

4 日産への貢献
 私は人生の20年間を日産の復活とアライアンス〔企業連合〕の構築にささげてきました。私は、この目標のために、日夜を問わず、地上でも機上でも、世界中で懸命に働く日産の従業員と肩を並べて、価値を創り出すことに取り組んできました。私たちの努力は目覚ましい成果を上げてきました。私たちは日産を変革しました。1999年に2兆円の負債を抱えていたところから、06年末には1.8兆円の現預金を有するまでに至りました。99年に250万台の販売にとどまり多大な損失を計上していたところから、16年には580万台を販売して利益を上げるに至りました。この間に、日産の資産規模は3倍になりました。日産の象徴であるフェアレディZやG-TRを復活させました。中国の武漢、ロシアのサンクト・ペテルブルグ、インドのチェンナイ、ブラジルのレゼンデにも進出しました。そしてリーフで電気自動車の市場を大きく開拓し、また自動運転車開発をスタートさせ、三菱自動車をアライアンスへ招き入れました。このアライアンスは、17年には世界第1位の自動車グループとなり、年間1千万台以上を生産しています。私たちは、直接または間接に、日本で無数の雇用を創出し、日産を日本経済の主軸へと回復させたのです。
 これらの成果は、世界に比類ない日産従業員のチームによって得られたものであり、私にとっては、家族の次に、最も大きな人生の喜びです。

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