◎映画『クイズ・ショウ』(1994)のテーマはウソ
一昨日のブログに、「ウソも真実も、さして多くを語りはしない」と題するコラムを書いた。映画『理由』(一九九五)のテーマのひとつは「ウソ」である、ということを述べた。
それで思い出したのだが、一九九四年に公開された『クイズ・ショウ』という映画がある(ハリウッド・ピクチャーズ)。
この映画は、一九五〇年代に大きな問題となった、クイズ番組に関わる不正事件を素材にしている。そして、この映画のテーマのひとつが、やはり「ウソ」であった。
映画の最後のほうで、大学講師でクイズ番組のヒーロー、大学講師のチャールズ・ヴァン・ドーレン(レーフ・ファインズ)が、立法委員会に証人として出席し、番組における不正を証言する。そこで、チャールズは、一通の「声命文」を読み上げる。この映画のハイライトである。その声明文は、ビデオの字幕によれば、次のようなものである(適宜、句読点を加えてある)。
この一年間にあった事を、もし変える事ができたら…。
過去は変えられません。しかし教訓となります。
私は人生を、自分自身を学びました、そして社会に対する責任を。
善と悪が見かけと異なる事も学びました。
私は深く、欺瞞行為に関わりました。
友人を裏切りました。数千万の友を。
この国の人々に嘘を、知っている事と知らない事の両方で嘘を〔つきました〕。
なのに、消え去ることだと、子供のように思っていました。消え去るわけはないのに。
私は怖かった、死ぬほど。自分というものがなかったからです。
真実を語る事が、唯一の道です。
私事で恐縮ですが、私は自分を見つけました。
今までの私は、役を演じてきたのです。自分は能力があると錯覚を〔していました〕。
運にめぐまれ、自分というものの基盤を、泥にまみれて築くことをしなかったのです。
借り物の翼で、飛んでいたのです。すべてが安易でした。
これが、その結果です。
テレビのクイズ番組における「不正」が大問題になり、ついに、立法委員会で不正を証言する人物があらわれた。たかが「クイズ」と思われるかもしれない。しかしこれは、アメリカという国で、実際にあったことである。
一方、日本では、近年、国有地の売却という重大な案件をめぐって不可解な動きがあったにもかかわらず、これを「不正」として糾弾する動きが弱い。また、「不正」を証言する人物も、今のところ、あらわれそうにない。いったい、これはどうしたことなのだろうか。
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