礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

雄山閣文庫の既刊書目(1937年6月)

2014-05-31 04:56:57 | 日記

◎雄山閣文庫の既刊書目(1937年6月)

 今、手元に、雄山閣文庫『政談』(一九三七年六月)がある。これは、雑誌『古典研究』の付録としてではなく、単体で販売されたものである。定価は四〇銭。
 その巻末を見ると、どういうわけか、「雄山閣文庫刊行の使命」という文章が載っていない。ただし、同文庫に関する案内はある。上下二段にわたっているところは、『古事記』の場合と同様だが、内容は異なる(上段、下段とも)。本日は、上段の案内文、および下段の既刊書目・近刊書目を紹介する。改行は原文のまま。

△雄山閣文庫は社寺名門に秘蔵せらるたる古
典、狭小なる殿堂に専有されたる学芸の
公開を企図し、文化宝典の国民享受と、国
民思想の渙起を目的とす。
△本文庫は三部に分つ、その第一部は日本古
典の全部的刊行、第二部は、東洋西洋の古
典名著の翻刻又は翻訳、策三部は一般著述
とす。
△第一部日本古典は之を正史(六国史及びこれ
に準ずるもの)記録(社寺、公家、武家)
日記、系図及補任、法制(公家、武家)地誌
(古風土記及江戸時代地誌)文学、稗史、学
説其他古文書筆蹟類等に分ち、普遍的に刊
行す。
△当分第一部の刊行を主とし、第二部、第三
部もつゞいて平行的に刊行す
△刊行番号は時代別、分類別には非ず
△雄山閣文庫の定価の標準は、最底を弐拾銭
とし、頁の多少、組方の難易、図版の有無
等により一単位拾銭づゝ変動す

 雄山閣文庫第一期刊行書目
原文旁訓 古事記 石村吉甫校訂 二〇
校訂新註 読史余論 新井白石著 萩原裕校訂 四○
校訂新註 愚管抄 慈鎮和尚著 遠藤元男校訂 五〇
校訂 吾妻鏡 第一冊 橋本實附点 五〇
校訂 吾妻鏡 第二冊 橋本實附点 五〇
校訂 太平記 第一冊 湊本克巳校訂 四〇
校訂 古今和歌集 石川佐久太郎校訂 三〇
校訂新註 正法眼蔵随聞記 道元垂示・懐奘筆録 圭室諦成校訂 二〇
十七条憲法 聖徳太子御伝集 圭室諦成編 五〇
校訂 政談 荻生徂徠著 北島正元校訂 四〇

 近刊 日本書紀、続日本紀、大鏡、増鏡、
栄華物語、新撰姓氏録、古語拾遺、万葉集、
玉葉、(他公家日記)、平家物語、源平盛衰記、
太閤記(他戦記物)、源氏物語、枕草子、保元
物語、平治物語、日本永代蔵、好色一代男、
海国兵談、神皇正統記、徒然草其他続々刊行

 既刊書目の末尾にある数字は、定価(単位・銭)であろう。
 近刊書目中、「枕草子」は、『古事記』巻末における誤植が訂正されている。
 一昨日、紹介したように、『古事記』の巻末にあった案内文には、「意匠中2は弐拾銭、3は参拾銭、4は四拾銭を示し、以下之に準ず」という一文が含まれていた。おそらくこれは、改造文庫の「意匠」を意識したものだったと思うが、『政談』の案内文では、この一文が消えている。
 なお、単体の雄山閣文庫『政談』の表紙の刷色は赤褐色で、背表紙の一番下には、定価を示す「.40」という文字がある。

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