「天上の葦(上)(下)」 太田愛著 角川書店 2017年2月発行
太田愛は「犯罪者」で<薬害>を、「幻夏」で<冤罪>を、そしてこの「天上の葦」で<戦争>を取り上げた。それぞれ実に真剣に取り組んで問題点を鮮明に描いて見せた。3つの大作を、その他数冊の本を挟んで、ひと月足らずで読んでしまうのだから、ステイホームとはいえ相当ヒマといわれそうだが、いやいやめちゃめちゃ面白いのだ。
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戦争体験者が急速に減っていく中、戦争を知らない大人たちが、権力にあこがれてか、ろくでもない法律を作ってろくでもない政治を行おうとしている昨今、悪事は小さな火のうちに消さなければ手の付けられない大火になる。いつの時代もいつの世も同じことだが。
特に権力の一極集中が甚だしい当世、行政小役人の忖度に始まって政財界を牛耳り、司法たる検察まで支配せんとの叫喚図は見るに堪えぬもの也。
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それにつけても憂うべきは香港の国家安全法、吠えよ米英とここばかりはエールを送ってしまうが、なにやら裏口での取引も透けて見えてきて、哀しみは増すばかり。いずこも戦争を知らない大人たちのしでかすあわれなり。
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