ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

娘よ(78)

2016-04-28 22:09:33 | 生き方
妻が入院している間、家族にはもう一人心配すべき存在がいた。
そう、長い自宅療養を行っている娘である。
妻が入院した日は、その入院事務が完了するまで、娘のことは、仕事を休んだ息子に任せることにした。
それから妻が退院するまでの3日間は、私が仕事を休んで娘の身の回りの世話や家事一切をまかなうことにした。(息子は土曜日も出勤日だった。)

そんななかで、久々に娘の今の暮らしの様子をしっかり見ることができた。
入院した日の夕方、娘を連れて妻のお見舞いに出かけた時のことだ。
桜がたくさん咲いて今や桜の名所とも言っていい場所を車で通った時、
「桜がだいぶ散って来たねえ。」と娘に話しかけたら、「昨日、母と散歩して見たよ。」との返事が返って来た。
おや。覚えているんだ。
そう思い、記憶に残っていることに感心した。
自宅療養中の娘。病気で大きく困っている理由の一つは、何度か書いたように短期記憶が積み上がらないことだ。
それが、こうして、一日前の行動の一部を覚えていることは、うれしいことだった。

妻が入院したのは、娘も入院していた病院だ。
入院した病棟が違うが、造りは同じなので、娘に自分が入院していたことを覚えているかどうか聞いてみた。
「全く覚えていない。」
そう娘は答えていた。

妻の入院中は、私が家事、と書いた。
もっとも気を使ったのは、夕食であった。
妻を見舞った後、スーパーに寄って、いくらか必要な買い物をした。
傑作だったのは、3日目だった。
夕食の献立の一つにどうかと考え、安売りのチラシに出ていた100g98円のポテトサラダを買おうか?と娘に問いかけた。
すると、娘は、「いらない。それなら私が作る。」ときっぱり言ったのだった。
「本当?」と娘に確認し、家に帰った。
私は、作ると言った娘のために、ジャガイモの皮をむいて、適度な大きさに切って、レンジでジャガイモを温め、柔らかくした。
その間、娘は、キュウリを細かく切ってよく絞っていた。
キュウリを細かく切る手つきなどは、私よりもはるかに器用だ。
いいリズムで、大きさも結構均等に切っている。
さすがに以前、グループホームで食事を作っていたこともあっただけはある。
その後、娘は、ボウルに移してジャガイモをつぶし、マヨネーズで味付けをした。
私に最後の味見を頼んだが、結構うまくできていた。
ただ、もう少しマヨネーズを足すことを提案した。
…こうして、娘のおかげで、おいしいポテトサラダが用意された。

妻が入院して4日目の日曜日。
入院後の経過が良好だった妻は、退院できることになった。
その午前中、娘と一緒に、退院する妻を迎えに行った。
家に着く前に、近くの小さな公園のそばを通った。
その時、娘が言った。
「Tさんがいなくなったら、だれが公園の草刈りするんだろうね。」
意外な発言だったので、私と妻は驚いた。
Tさんは、いつも公園の除草を、自分の家の刈払機を使ってしてくれていたのだった。
そのTさんが、次の連休中に引っ越して行ってしまうという話を最近聞いたのだったが、娘がその話を覚えていたのだ。
その話を聞いたのは、妻の入院前だったはずだ。
それを思い出しての発言である。
少しは最近の記憶が残ることもあるようになったということかな。
そうだとすると、うれしいな。
そう思えた瞬間だった。

妻の入院はとても大変だったが、こんなふうに、多少なりとも娘の状態がよい時があるということがわかった期間でもあった。

ただし、この状態が長続きする訳ではなく、数分前に自分が発した疑問を、快勝したはずなのにまたすぐ繰り返すと言うこともあったりしている。
それでも、「母が入院したことを覚えているか?」という質問には、うなずいてみせる娘である。

妻の入院は、大変なことであったが、娘の現状を確認できる、とてもよい機会となったのであった。
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