原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

“ギリシャ彫刻張り”イケメン氏との再会

2018年10月05日 | 医学・医療・介護
 今回のエッセイは、2018.09.08に公開した「この職種にそのイケメン度、必要ありか!?」の続編の形となろうか。


 1ヶ月が経過するのは、実に早いものだ。

 昨日、私は高齢者介護施設に暮らす義母の耳鼻科付き添いを実行した。
 1ヶ月前に(再再度??)購入した補聴器の1ヶ月目点検を受けるためだ。

 当初、義母が「1人でタクシーに乗って行く」と主張していた。 が、どう想像しても、一人で行かせたのでは一体何をして来たかをまったく理解できないまま、またもや「補聴器が壊れたからまた新しいのを作る」と言い始めるのが目に見えていたからだ…。


 昨日義母の迎えのため施設へ到着し、病院受診に先立ち施設ケアマネージャー氏と短めの面談をした。
 いつもの事だが、日々悪化する義母の認知症状と耳の聞こえの悪さ、それに派生する施設内事件に話題が集中したのだが…。
 ケアマネ氏曰く、「今日は〇さん(私の事)が付き添われるのですね。 義母さんが言うには、耳鼻科へはいつも息子さんが付き添ってくれて〇さんは一度も一緒に行ってくれない、との事ですが…」
 ただ、認知症状とは所詮そういうものだ。 苦労して我慢して努力しても報われないのが介護人が抱える宿命だろう。 
 まあ何でもいいや。 とにかく今日は補聴器1ヶ月点検付き添いを果たさねば。 と気持ちを入れ替え、義母をタクシーに乗せ耳鼻科へ向かった。

 とその前に。
 昨日は雨予報だったが昼間は大した雨は降っていなかった。 にもかかわらず、義母は厚手の衣類にレインコート、そして重い傘の重装備…。  その姿を見た私が、「耳鼻科まではタクシーで行くしそもそも雨がさほど降っていないし、レインコートと傘は不要ですよ」とアドバイスした。  それには理由がある。 病院内では診察室、検査室、補聴器室等々の移動に際し、それらの荷物すべてを私が持たねばならない運命にあるからだ。  ところが義母は私のアドバイスが十分に聞き取れないのに加えて元々強情なところもあり、結果としてはその重装備姿で義母はタクシーに乗り込んだ。  
 

 さて耳鼻科に到着してみると、既に病院の外で“ギリシャ彫刻張り”イケメン氏が待機していた。 午後の診療まで未だ少し時間があった故だ。 
 我々を見かけると、「病院内に椅子がありますので、そこに腰かけて午後の診療をお待ち下さい」と至って親切である。
 補聴器担当者のイケメン氏は外部企業からの病院出向の身であり、自分がその椅子に腰かける訳にはいかない現状を私はすぐさま把握した。

 聴力検査の後、イケメン氏による義母の補聴器1ヶ月点検が始まった。
 案の定、義母は開口一番1ヶ月前とほぼ同様の訴えをイケメン氏に向かって繰り返す。「あのね、何だかこの補聴器聞こえが悪いのよ。 特に電話の時には全然聞こえないし、施設の食堂での食事中にも雑音しか聞こえない……」
 この話は私も義母から今まで百回いや千回聞かされ、耳にたこが出来ているのだが…
 さすがに補聴プロのイケメン氏は心得ておられる。 「そうですか。それでは一つ一つ相談に乗りましょう。」と言いつつ、1カ月前と同様の懇切丁寧な補聴器の正しい使い方説明を義母に対して繰り返す。

 その様子にしびれを切らした私から、思い切ってイケメン氏に切り出した。
 「義母は補聴器を使用し始めてからここ数年同じ発言の繰り返しです。 認知症状も加わって、親族としても限界に近いものがあります。 親族として知りたいのは、補聴器の性能に問題が無いと仮定した場合、義母からの訴えに如何に対応すればよいかとの事です。 特に義母から『また補聴器が壊れたから作り直したい』と嘆願された場合に、義母に何と説得すればいいですか?  加えて、先程(イケメン氏からの)特に高齢者が補聴器を使用する場合、家族からの普段の補助が不可欠とのお話でしたが、我々保証人の場合、義母と過去に於いて一度足りとて同居した事が無く、せいぜい年に数回会うとの生活パターンでした。 その感覚もあり、今更ながら補聴器のためだけに施設へ頻繁に通う事に関して違和感があります。」 
 私もかなり言いたい放題とは言えども、それを補聴器担当者に理解してもらわない事には今後の義母との関係維持にかかわると考えた私側も必死だ。

 それに対するイケメン氏のご解答だが。

 さすが高齢者相手に補聴器を販売している人物だけあって、これまた模範解答が返されて来た。
 「前回差し上げた私の名刺当てに、その都度ご相談いただけましたなら私の方で対応します。」

 参考だが、それ以前に義母もイケメン氏相手に「私が補聴器で困ったら、名刺の電話番号に電話をかけていいですか?」なる質問を出していた。 (認知症状と耳の聞こえにくさを抱えての義母からのその嘆願に応える事は、いくら業務に実直なイケメン氏とは言えども不可能だろうなあ…)と私も予想していたのだが。
 やはりその通りで、義母に対するイケメン氏の回答とは「その際にはご家族に相談するか、あるいは直接当該耳鼻科までご連絡いただければ、必ずや後に私が対応します。」とのこれまた理想回答だった。


 実際問題、耳の聞こえが悪くかつ認知症状も兼ね備えている高齢者を抱えるご家庭は数多いことであろう。
 普段から一体どのようにその種の身内高齢者に対応されておられるのであろう??

 我が家の場合、何とも心強い補聴器会社イケメン担当者に恵まれているからこそ、暗礁に乗り上げずに済んでいる気もする。
 今までのように、義母からの「補聴器がまた壊れたから作り変えたい」の誤った訴えの際、イケメン氏に連絡を入れる事により義母の嘆願を退ける手段を見い出せたという訳だ。

 その意味合いでも、“ギリシャ彫刻張り”イケメン氏と出会えたメリットは私にとって大きいものがある。

 あっと、それから。
 イケメン・美人と周囲が騒ごうが、結局ご本人の能力が開花した結果の実績こそがものを言う時代と進化している事実に、安堵したりもするなあ……