原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

要らないのに捨てられないジレンマ

2014年03月16日 | その他オピニオン
 おそらく何処のご家庭にも、「要らないのに捨てられない“モノ”や“ヒト”」が少なからず散在していることであろう。

 いえいえ、大変失礼申し上げました。
 “ヒト”に関する考察は別の機会に回すとして、今回のエッセイでは「要らないのに捨てられない“モノ”」を分析対象とさせていただこう。


 私事を語れば、我が家にも「要らないのに捨てられないモノ」をあちらこちらに放置したり収納したりの実態だ。
 
 今現時点で周囲(参考のため私は当該エッセイをリビングルームの一角に机を置いて綴っているが)を見渡してみても、古くなって使用していないパソコンやプリンター、エッセイを綴るために参照した膨大な量のスクラップ等資料や文献、今となっては一切視聴しないDVDやCD、古くなった絵画や美術品をはじめホコリを被ったまま放置されている室内装飾品、現在では家族の誰もが紐解くことのない本棚内の年代物学術書籍や文学本の数々、極めつけはリビングルーム内面積を一番占領しているピアノとエレクトーン……

 台所に視野を移すと、料理嫌いで名高い私が一切使用する気もないのに場所ばかりとっている食器や調理器具、そして賞味期限切れの缶詰等保存食品が保存棚に蔓延り…

 押し入れや収納庫内は、正直言って「要らないモノ」だらけの実態だ。

 私の場合、決してこれらを怠慢気質で放置している訳ではない。 むしろ綺麗好き、整理整頓好きの私であるが故に、定期的に各部屋を覗き、廃棄処分対象物を分別する作業を実施して廃棄処分を行っている。


 ところが、どうしても「要らないモノ」を廃棄処分出来ない心理が私なりにあるのだ。
 それはそのモノに対する“思い入れ感情”こそが主たる要因である。

 例えば、我が娘が幼き頃より少女時代に制作した拙い美術作品等々がその最たる“モノ”だ。 既に成人している娘に確認し「廃棄処分していい」との承諾を得ているものにもかかわらず、親の心理としてはどうしても捨てられない。
 あるいは本棚にある学術書などは私(及び亭主)が現役時代に学問及び科学研究とかかわった人生の歴史を物語る書物群であり、私としては痴呆症寸前に至るまで保存しておきたい思い入れが強い。
 料理嫌いで名高い私として一番捨てていいのは台所や収納庫内の食器や調理器具なのだが、これに関しては我が娘が将来的にこれらを使用する事も視野に入れ、高価なものに限定して一応保管することにしている。

 そんな原左都子であるが、実はつい先だって我が家のクローゼット内に保管していた“洋服及び服飾品類”を大々的に処分する事と相成った。

 深刻な豪雪被害の傷跡を未だ残している日本列島であるが、私が住む東京地方では日によっては春らしい日和が訪れる季節に移ろいでいる。
 春を迎えるに先立ち、我が家のクローゼット内不要洋服類を「古着屋」に売ってはどうかなる提案を我が娘にしたところ、娘が快く応じてくれた。
 我がタンス内と娘のクローゼット内から“要らない洋服及び服飾品類”の中でも新品やさほど着用していない物品をかき集め、全部で30点ほどに達した。

 それを古着屋に売りに行くとの手段に出た結果、如何程のフィードバックがあったかに関して以下に提示しよう。

 購入後全く使用する機会がなく保存してあった物品に関しては、ある程度の引取り価格設定がなされたようだ。 それにしてもそのフィードバック価格とは商品定価の3%に満たない低額である。
 いわんや一度でも着用した衣類に関しては、すべて「1円」ないし「0円」との引取り価格だった。
 更にはたとえブランド物であれ、現在まったく流行っていない物品に関しては やはり「1円」評価であるようだ。
 加えて過去に一時流行ったブランド品であれ、一度洗濯が施された物品とは「0円」の価値であるらしい。

 要するに、「今現在流行っていて、尚且つそれがブランド未使用品ならある程度の高価格で買い取る」とのポリシーを「古着屋」は持っているものと私は解釈した。
 それ以外の物品に関しても店舗内で再販売(あるいは店が責任持って廃棄処分)するけれども、買い取り価格は 「1円か0円」 との結論である。


 たとえそうだとしても、娘と二人で古着30着との重い荷物を「古着屋」まで運んで正解だった、との感覚を今も抱いている。
 これを「古着屋」で再販売してもらった方が、自宅から不要物として捨て去るよりも誰かに「再利用」されることとなるとのかすかな希望が繋げるからだ。

 そこで“モノ”に関して、要らないのに捨てられないジレンマに陥っている皆さんに提言申し上げたい。

 着用しないが自分で廃棄処分し難い洋服等に関しては、古着屋やバザーを活用するなり、自治体の古布回収システムを利用しては如何だろうか。
 それをゴミとして捨て去るよりも社会にリサイクルできそうな微々たる貢献感が得られるという事だ。