原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

年老いた親を“あの世”に送る段取り

2011年12月24日 | 旅行・グルメ
  (写真は、人形浄瑠璃 「傾城阿波の鳴門 順礼歌の段」  -阿波十郎兵衛屋敷にて-)


 本日のエッセイは“旅行記”としては妙な表題とお感じであろうが、今回の私の郷里への帰省は、まさに 「年老いた親をあの世に送る段取り」 を整える事が第一の目的だった。

 いえいえ普段辛口オピニオンを発信してばかりいる原左都子とて、田舎で一人暮らしの母に決して「早く死ね!」と言いに行った訳ではない。 こう見えて、私なりに普段より結構年老いた親を頭の片隅で気遣っているのだ。

 来年80歳を迎える母であるが、今後更に母が老いていざ「死」に瀕した時、遠隔地に住む私がその死に目にあうことはおろか最後を看取ってやることすら叶わない確率が高い。 これに関しては母も合意し、その覚悟を既に決めている。
 一方、死後の葬儀において喪主を務めるのはこの私であることは明らかだ。
 自分の葬儀を如何なる形式にしたいかに関する母自身の考えはあるようだ。 日頃電話でその節々を私に伝える事はあるのだが、電話ではどうも要領を得ず埒が明かない。 
 そこで今回約2年ぶりに帰省するのをよき機会に母の意向を確認し、喪主となるであろう娘の私が母の最後の責任をきちんと果せるよう下調べをしておきたかったのである。


 2年ぶりに降り立った我が南国の故郷は、この時期相応に寒いものの晴れ渡る晴天だった。

 空港から真っ先にタクシーで向かったのは、上記写真の 阿波十郎兵衛屋敷 である。
 ここは私が上京する前に母と共に訪れた記憶があるのだが、ネット情報によるとその後建替えられ、広い人形浄瑠璃劇場が設営されて日々観光客相手に浄瑠璃劇が公開されているようだ。
 これを我が娘に一見させたく思った私は、何十年かぶりにこの地を訪れた。
 今時の観光施設とは団体客を誘引しないと経営が成り立たない様子だ。 この日も中国人の観光団体と出くわしたのだが、「こんな過疎地の田舎にもアジアの“ニューリッチ”観光団体が押し寄せるんだね」と娘と言葉を交わしたものである。 (余談であるが、我々親子は旧式の携帯電話しか所持していないのに、中国観光団体の皆さんは全員がスマートフォンである…  いやはや、こんなところで中国団体の目前で個人的な貧乏を晒すはめとなってしまった…

 到着日は我が娘と久々に訪れた郷土の観光を楽しみ、あらかじめ予約してあったホテルに一泊した後にいよいよ母が住む実家に向かう事となる。


 到着後も母とは携帯電話にて会話をしたりメールにて連絡をしていたのだが、2年ぶりに実際に見る生身の母は思ったよりも元気だった。

 電話では“あちこちが痛いから何も出来ない”と訴えつつも、娘と孫が帰省することを心より楽しみにしていた様子が伝わるごとく自分の得意料理を作って待っていてくれた。
 「こんなに沢山作ってくれてありがとう」と言いつつ、娘と共にその料理をいただくことになる。
 
 こんな場で、今回の帰省第一目的の“葬儀の相談”をするべきではないことは私も心得ている。 
 とにもかくにも、年老いて一人過疎地に暮らしている母の話を十分聞いてやるのが私の役割であろう。
 それにしても元気だ。 いつもの電話のごとく、母の口からは“ある事ない事??”次から次へと大音声での話が続く…  半分聞いて半分聞き流しつつ「うん」「そうね」「へえ」等々といい加減な返事をしつつも、元気であることは実感させてもらえた娘の私である。
 (葬儀の話は明日以降にした方がよさそうだ…) 

 次の日以降も、母は元気だ。
 それでも、私は娘と共に洗濯や掃除や食事の準備片付けを買って出た。 今までならば「そんなことしなくていい」と気丈に言う母が、私の好意に甘えた…。
 
 そして私と娘が帰る日になって、母の方から切り出した。 
 「今回、○子(私のこと)が私の葬式の心配をして来た事は電話でちょっと聞いて知っている。 葬儀は基本的に○子の好きにしていいと思っているが、私はまだまだ死なないよ。 まだまだ一人で元気に頑張って長生きするから、○子も東京で頑張りなさい」

 郷里滞在中にそんな気丈な母が運転する車での道中、母の葬儀後に私が届出に行かねばならない役所をはじめ、母の預金通帳がある銀行、郵便局、そしてスーパーマーケット等が存在する場所を母は私に指南してくれたのだ。


 こうなれば、もう私の方から母に確認する事など何もない。
 我が母には長生きしてもらおうじゃないか! その方が今後郷土を訪れる機会が増えて私も楽しめるというものだ。
 日頃親不孝者である事を反省しつつそれを許してもらうとして、今後も我が母には長生きして欲しいと実感しながら郷里を後にした私である。


 やっぱり、子とは親には一生かなわないのかな~~~  

Merry X'mas ♪

2011年12月24日 | 雑記
         (写真は、我が家のクリスマスイルミネーション)