原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

なぜ、国政の意思決定が二転三転する??

2011年10月03日 | 時事論評
 今回の記事は、本エッセイ集前回の時事論評カテゴリー記事 「公務員宿舎建設再開に断固反対する!!」 の続編の形として綴ろう。

 この9月に再開されたばかりの埼玉県朝霞市に於ける公務員宿舎建設に関して、昨日になって民主党輿石幹事長から再開解除について言及があった旨報道された。
 そして本日(10月3日)午前中に野田総理が朝霞市の建設現地を視察し、どうやら建設再開は解除され再び「凍結」の判断が下されたようだ。

 公務員宿舎建設に対し断固反対の意思表明をしている原左都子としては、この事態をひとまず喜んでいる。


 それにしても解せないのは、何故一国の政権の意思決定結果が短期間のうちに二転三転するのかと言うことである。

 これに対して、野田総理は本日昼のNHKニュースにおいて以下のように述べている。
 「私が財務大臣時代に公務員宿舎建設再開の決断を下したのは、地元の振興目的だった。 その後大震災が勃発し状況が一変した。今はやはり復興財源にこそその資金を回すべきだ。」(私の記憶に頼っているため正確でない点があればお詫びする。)


 ここで私論に入るが、ちょっと待ってよ野田さん、と言いたくもなる。
 この野田氏の発言には、数々の矛盾点が内在している故だ。

 まず、あなたが菅政権の下で財務大臣として公務員宿舎建設再開を決断した時には、確かに大震災は勃発していなかった。 ただ国の経済雇用情勢が超低迷を続けて久しい現状であったことは否めないであろう。

 で、地元の振興に役立ちたかった?? あの朝霞市の振興をあなたが本気で考えていたとでも言いたいの???
 申し訳ないが過去において一時あの自治体に住んでいた私に言わせてもらうと、公務員宿舎をあの地に建設してもあの市が振興するとの分析は私には不能である。 恐らく建設された公務員宿舎に住む世代は若年層であろうと想像するが、皆さん自家用車を活用して日々の生活を営むであろうことが目に見えている。 鉄道交通網を利用する場合においても駅前に大規模店舗がない「朝霞駅」よりも、東京メトロ始発駅である「和光市駅」を利用するのが便利ではなかろうか?(私も多くの場合そうしていた。) そうした場合、和光市にこそ振興益が投入されようと、朝霞市には大した収入は転がり込まないのではなかろうかと私は考察するのだが…。
 結局公務員宿舎を誘致したいのは、単に朝霞市政の歪んだ「見栄」の範疇であると結論付ける私だ。 
 独立行政法人理化学研究所が存在し、民間大手の㈱本田技術研究所も存在する東京メトロの終点である和光市と比較して、その直ぐ隣に位置しているにもかかわらずマイナーな在来私鉄1本しか通っていない朝霞市が、文化的学術的に低迷を続けざるを得ない運命にあるのは確かに悲運だ……  
 それに焦った朝霞市政が、我が地に「国家公務員宿舎」を建設したら文化学術レベルが上がるかも?と狙ったとしか私には捉えられない。
 ただ朝霞市さん、国家公務員宿舎を建設したとて文化学術レベルを押し上げるのは無理だよ。 不動産価額においても残念ながら朝霞市より北はぐっと価値が下がる現状であるし、上にも記した通りその地に住もうと思う公務員とは一部の若い人種に限られるであろうからである。

 現在総理の立場にある野田さんは、財務大臣時代から単に官僚に丸め込まれているだけだ。 それをカムフラージュするべく、地元のその種の細部の事情に関しては分析把握せずして地元振興を安易に発言しただけの話であろう。
 国家の長たる者、自治体市長や市政担当者との短時間の会合のみで「地元の振興のため」などとは決して軽々しく口にしてはならなかったはずだ。


 野田氏の過ちは、もう一点ある。

 朝霞市における公務員宿舎の建設再開はこの9月に実行された。 その時点では既に大震災の復興財源に関して国を挙げての集中論議が交わされていたはずだ。 当時財務大臣であった野田氏は、自ら提案した公務員宿舎建設再開を覆し阻止出来る立場にあった。
 にもかかわらず、何故それを阻止せず建設再開を推進したのだ?
 それは野田氏自身が民主党党首選に出馬するのに精一杯だったからではあるまいか? これは一国民視線から見たらみっともない限りである。 一国の総理となる程の人物とは国民の税金で公設秘書、そして私設秘書も多く抱えている事と思うが、それらを有効に活用して墓穴を掘らないように行動できたはずだ。 にもかかわらず建設再開を決行したのは、やはり官僚に丸め込まれていたからに他ならない。

 結局、今回の埼玉県朝霞市に於ける公務員宿舎の建設に関する凍結再開の右往左往は、現在民主党政権の長である野田総理の責任と結論付けられそうだ。


 それにしても、建設に着手した後、凍結、そして再開、そしてまたまた凍結…???
まったく何のポリシーもない政権を、国民は一体どうやって信頼すればよいのだろう?
国政が右往左往している間に大いなる無駄が発生している。 現場で働いている労働者も大変なことだろう。やっと仕事にありつけたと思ったら首を切られ、また雇ってやるよと言われ数日作業をした後、はたまた首切り…
 この調子だと政権はほとぼりが冷めた後に、水面下で公務員宿舎建設を再開しようとの魂胆かと勘ぐりたくもなる。(夜のニュースでは5年間凍結とのことのようだが)

 「政治主導」は政権運営の理想であろうが、原左都子は民主党が政権を取った当初より力無き民主党には「政治主導」は無理と判断していた。 自分には力もないくせに頭から官僚を排除しようとして対立していたのでは、政権運営は不可能だ。 そこで少々頭が回った“たぬき親父”の野田さんは、官僚との関係を修復しようとしている訳であろう。
 それにしても、少なくとも政治家と官僚との関係は対等であるべきだ。 一旦決定した事項を官僚に丸め込まれて水面下でコソコソと覆しているようでは、国民に馬鹿にされて当然である。


 国家公務員宿舎に関しては、実際問題今後まったく必要ない。
 血税を食い物にして甘い汁を吸っているくせにその現状を省みる事もできず、「官舎」に住んでいることに特権意識を煽られている公務員家庭が存在するその馬鹿さ加減に、私は昔から辟易としている。
 今回の建設地の場合埼玉県朝霞市とのド田舎の話だが、都心のど真ん中にある公務員宿舎も多い現状だ。 国民の血税で一等地に住んで特権意識もへったくれもあったものではない。
 
 国家公務員の皆さん、この混沌とした時代においては少しは国税で生かせてもらえている事に感謝しつつ、自分が住む家くらいは自分の経済力で買ったり借りたりしようと思うプライドの下、この国で生き抜いて欲しいものだ。
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