原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

何ゆえ渦中に身を投じた?

2009年05月09日 | 時事論評
 5月9日早朝の「新型インフルエンザ国内初確認」のニュース報道を受けて、本日このニュースに関連する話題を取り上げるブログはさぞや多いことであろう。
 こういう時には他ブログとの情報の錯綜を避けたい等の理由で、あえて若干時期をずらして“冷静さを装いつつ?”記事として取り上げるというのが、以前よりの私のブログの基本的な姿勢であり理念でもある。

 それに加えて、実は私は4月の連休前よりの今回の新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)に関する日本政府の対応の仰々しさ、それに平行したマスメディア報道の騒々しさには「騒ぎ過ぎ」の感が否めないでいると同時に、経済的大損失を憂えていた。(その医学的バックグラウンドに基づく私的見解については本記事では避けて通ることにするが。)

 ところが本日(5月9日)、今回の新型インフルエンザの発症者が国際交流事業旅行に参加した“公立高校の生徒と教員”であるという報道を今朝耳にした私は、仰天させられた。
 何ゆえに、未成年者である公立高校グループが公的事業として、この大騒動の渦中に新型インフルエンザ感染地域を2週間以上にも渡って旅行していたのであろうか?? 大いに不可解感を抱いた私である。

 そこで今回、本ブログにおいてはこの新型インフルエンザ国内初感染の話題を、教育論も交えつつ取り上げてみたいと考える。


 今回の世界規模での新型インフルエンザ感染騒動の皮切りは、4月24日に発症が確認されたメキシコに端を発しているようだ。
 このメキシコ(米国も含めて)での発症についての最初のニュース報道を見聞したのは、日本においては4月25日だったと認識している。
 その日にカナダから帰国した横浜市の私立高校生の「新型インフルエンザ感染騒動」の前例などは、報道直後から私は“騒ぎ過ぎ”の感が否めないでいたのだが、やはり診断結果は「陰性」とのことであり、騒がれた当人とその周辺の迷惑の程に同情したものである。


 新型インフルエンザの全世界的感染の広がりを受けて、厚生労働省及び文部科学省が全国の教育機関に対し、大規模な指導に乗り出したように見られる。
 
 我が子が通う私立高校からも5月1日付で「新型インフルエンザへの対応について」との表題の、在校生全保護者宛の通達文書が配布された。
 その文書によると、関東地区で新型インフルエンザの発症が確認された場合その翌日から学校を閉鎖する、とのことである。 加えて、5月の連休中のインフルエンザ流行地への渡航に関しては同居の家族を含め学校へ届け出ること、帰国後インフルエンザに似た症状が見られた場合直ぐに保健所へ相談すること、等の追加記載もあった。

 この文書を受け取った当初もやはり“仰々しさ”が否めない私であったが、感染症とは学校や職場、また交通機関等の大勢の人が密集する場において加速的に大規模に蔓延していく経緯を考慮した場合、学校のこのような対応はやむを得ないものと把握した上で、我が子の安全も配慮して私も内心承諾した。


 今回の大阪府立高校生グループのカナダ、米国方面への国際交流旅行の出発日は4月25日だったとのことで、まだ日本においては新型インフルエンザ世界的流行の報道が伝えられる以前の出発決行であったのかもしれない。 
 だが、今回の報道を受けて交流事業の途中で集団旅行を中断し、早めに日本へ引き返す選択も十分可能だったはずだ。 現地の日本の民間企業でさえ最低限の要人のみを残し、社員やその家族の日本への帰国の措置を取っている。大手企業等国内の様々な集団組織においても、現在では不必要な海外への渡航の禁止措置を取っている現状である。

 この公立高校グループ及びその指導機関は、何故に感染者の多い地域での未成年者集団の重要性が高いとは到底思えない海外交流事業を中断する勇断が下せず、最後まで集団旅行を続行したのか。

 本日昼間のテレビ報道によると、学校や教委は「それ相応の指導はした」と報道機関のインタビューで応えている様子である。それにもかかわらず引率教員が「現地では誰もマスクもしておらず大丈夫だと思った」とのことで、帰国時の飛行機内でもマスクの着用もしていなかったとの報道である。
 
 しかも感染している高校生の一人は、飛行機の機外に出た後に体調不良を訴えたとのことで、その周辺にいた本来隔離されるべく人々が既に入国し帰路に着いているとのニュース報道でもある。


 さらに本日(5月9日)14時24分の最新情報によると、飛行機内での濃厚接触者49人のうち6人が体調不良を訴えて医療機関に搬送される予定とのことでもある。 体調不良を訴えずとも、飛行機内で感染者の周囲に同乗した乗客は5月17日まで成田近辺のホテルに監禁状態で停留せねばならず、被る迷惑及び損失は計り知れないものがある。


 集団内感染が及ぼす周囲への感染拡大を最大限考慮し、特に集団行動においては早めの決断が要求されることが、今回の公立高校生グループの新型インフルエンザ感染において実証されたと言える。

 とりあえずは、感染者の回復が最優先されるべきである。
 その上で、今回の公立高校の取り返しのつかない“大失態”ぶりは、今後の教訓、課題として教育現場及びその指導機関において重々活かされるべきであろう。
        
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