四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

新子はコハダに。新いかはまだ新いかで。いくらは塩から出汁醤油漬けに。すじこも登場。新秋刀魚、ブリと、もう秋です。

秋はさかり

2012-08-27 19:26:00 | 07 みせのこと

004 真夏にほとんど無かった車海老が少しずつ出回るようになってきました。

このおが屑の中にいます。

もうすぐ九月。

ネタケースの中は夏から秋に移っていきます。

真鯖の登場、鰹が戻りになる、小ぶりのサヨリ、カマス、シシャモなどが入る、イナダが大きくなってワラサになる、赤貝が出てくる。いくらの粒も大きくなってきます。

そして十月。カラスミを仕込み始める頃には真鱈の白子が出てきます。

白子は小ぶりでひだが細かく、その表面はまだ赤みを帯びています。

十一月にはズワイガニの雌、香箱蟹(こうばこがに)の登場です。

十二月~一月は天然のホタテ貝、そしてたっぷりと脂の乗った寒ブリ、寒平目など。

二月ホタルイカ、三月はたいら貝やトリ貝と、貝が豊富に出回ります。

四月、活ヤリイカ、活スミイカ、アオリイカなど。

五月~六月、梅雨時のイワシ、メソ穴子。

七月、新子。

八月、新イカ。

そしてまた戻って九月には新子、新イカが大きくなってきます。新子は一尾で一カン握る『丸付け(まるづけ)』の大きさが出てきます。江戸前の新子もこの時期で、皮がやわらかく身がふっくらとしていると主人は言います。

こうして一年を通していろいろなおたのしみがあるわけですが、

「寿司屋に行くのは冬がいいんじゃないの?だって魚が一番美味しい季節だもんね」

と訊かれることがあります。そういう時、主人はいつも

「一年中どこでもおすすめなんですけどねー」と答えています。

秋にはこれだ!っていうのがない‥と悩んでいる私に主人は言いました。

「一年を旬の『はしり・さかり・なごり』で分けるとしたら、秋は‥さかりの初めくらいかもしれないね。冬にこってりと美味しい魚のその前を味わうと“あ~夏はまだ小さかったけど、ようやく本来の味がしてきたね”とか“身がしっかりとしてきたね”とかこの季節ならではの愉しみなんじゃないかな」

そうか。

無いんじゃなくて感じ取れてないんだ。

よし、これからもっと丁寧にみていこう

と思ったのでした。