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BABYMETAL探究(「アイドルダンス」考3)

2015-09-11 00:53:18 | babymetal
BABYMETALのライヴ、その、異常な「なんじゃ、こりゃ!」感を伴った超弩級の楽しさ。
その楽しさの秘密の核には、「振りコピ」がある。

竹中夏海は、こう語る。

振りコピはライブ会場でノッている自分を表現するための手段にもなります。「音楽にノる」という行為が、まだハードルが高いという日本人は少なくないですが、アイドルの場合は振りを真似することが盛り上がりを表現するひとつの手になるのです。
その他、アイドルのライブでよく見られるコールやMIX等にも同じことが言えますが、「目に見えて」盛り上がっている反応は、それらだけが全てではないものの、ステージに立つ側にとってもモチベーションが上がる一材料となり得ます。
『IDOL DANCE!!!』


MIXとは、注によれば、「「タイガー!ファイヤー!」などと叫ぶ、アイドルファン特有のコールの一つ。90年代からあるオタ芸の一つだがAKB以降大流行し、MIXが入る間を意識して曲が制作されることもあるほど流行した」のことだそうだ。

確かに、こうしたアイドルのライヴの要素が、BABYMETALの超弩級の楽しいライヴの片面として機能していることは、疑いようがない。

ただ、少し修正を加えるならば、「ノッている自分を表現する」という以前に、振りコピやコールやMIXという動作や発声をすることによってますます「ノる」のだ、ということ。まずそれを指摘しておく必要がある。

ヘヴィメタルのコンサートであれば、演者の演奏に合わせて、ヘッド・バンギングをしながら身体を揺する、サビを一緒に歌う、ギターソロをエアーでなぞる、等というノリ方があろう。
BABYMETALのライヴでも、まずそれらが基調である(これはメタルヘッズ的なノリ方、なのだろうから、そうしたことをしないファンもいるだろうが、僕はそのようにライヴに参加したし、今後もするはずだから、こう書く)。

例えば、多くのライヴでオープニングとなってきた「BABYMETAL DEATH」だ。
僕が参加できた2ライヴ、幕張巨大天下一メタル武道会でも、黒ミサⅡでも、これが幕開けだった。

荘厳なイントロが流れはじめ(紙芝居がはじま)る。ウォー!!という雄叫びをあげる
シンバルのカウントに続き、6連符+4分音符の、重厚な凶悪なリフがはじまる。合わせてヘッドバンギングをしながら、裏拍にヴォィ!と雄叫びを入れる。キツネサインをつきかざす。
「BABYMETAL DEATH!」「BABYMETAL DEATH!」のデス・ヴォイスと唱和し、タメの後、
(幕がある場合には、ここで幕が開き)
高速のリフがはじまる。とヘッド・バンギングも熱狂を帯びた高速になる

と、ここまでは、全くヘヴィ・メタルのライヴのノリである。

ところが、ここでステージ上の3姫が両手のキツネサインをふりかざし揺らしながら首を振っているのに同調して、当然客席の僕たちもキツネサインをふりかざし揺らしながら、より激しくヘッドバンギングするし、
「B!」「A!」「B!」「Y!」「M!」「E!」「T!」「A!」「L!」を叫びながらステージ上の3姫に合わせて両手を掲げる
これは、まさに「振りコピ」であり、「コール」「MIX」である
その後の、「DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!」のダメジャンプも、同じく「振りコピ」「コール」「MIX」と呼ぶべきものだ。
で、「SU-METAL DEATH!」「YUIMETAL DEATH!」「MOAMETAL DEATH!」ではステージ上の3姫の姿を注視しながら、じっと耳を傾けるのだ。「アイドル」を鑑賞すべき瞬間である。
僕たちの期待に答え、3姫は、キメの台詞をチャーミングに発声しながら、いつもの魅力的なキメのポーズを決めてくれる。

と、ここまでわずか3分足らずだが、会場全体がすでにとんでもない熱狂の波にうねりくるっている。
いつものことだ。

たしかに、ここには、ヘヴィメタルのライヴの轟音・高速・過激なノリに、アイドルのライヴでの「振りコピ」「コール」「MIX」が盛り込まれていることによって、BABYMETALのライヴのとんでもない熱狂が引き起こされているのが、はっきりと見てとれる。
(ついでに何度でも書きたいのだが、『赤い夜』の「BABYMETAL DEATH」の崇高な狂乱の激情的な美しさよ!ライティングも、『LIVE IN LONDON』ほど過剰ではなく、理想的に、ステージ上の3姫の一心不乱の「演」奏に神々しい輝きを添えている)

BABYMETALのライヴにおいて、観客である僕たち(メタルヘッズ)は、ヘヴィ・メタル楽曲の高速・轟音の演奏に血をたぎらせる、といういつものヘヴィメタル・ライヴの熱狂に加えて、ステージの3姫に合わせて自分の身体を動かし雄叫びをあげることで、心身があっという間に極限にまで昂揚するのだ。
さらにさらに、周囲の「目に見える」盛り上がりと一体化することで、それは何倍にも増幅される
そう、竹内夏海のいう「ノッている自分を表現する」という「振りコピ」は、BABYMETALのライヴでは、観客どうしの相互作用としてとりわけ働くのだ。
これは、映像盤の鑑賞ではなかなか実感・体感はできない。現場に身を置いて全身で浴びてイヤというほど感じるものだ。下着まで汗でぐっしょりになり、肩でぜいぜいと息をしながら、ニヤニヤ頬の緩みが(時には涙が)止まらない、という「症状」を伴いながら。

そして、冷静に分析してみれば、「BABYMETAL DEATH」での「振りコピ」とは、呆れるほど単純であることに気づく。キツネサインで両手をV字に振り上げるだけ、両手をXに組みぴょんぴょんとびはねるだけ、なのだ。
しかし、その呆れるほど単純な「振りコピ」が、効果として、恐ろしいほどの熱狂をもたらすのである。

アイドルダンスの特徴その2:振りコピ
「真似しやすい」振付というのは、単純に簡単なダンスというだけではなく、動きがキャッチ―で、印象的であることが重要です。歌詞と振付のリンクは、そのキャッチ―な要素のひとつとも言えるでしょう。

真似しやすいという要素は、アイドルダンスの振りコピを語る上で重要な部分です。なぜなら他ジャンルのダンスに比べ、アイドルダンスを観る層は、ダンス経験のない人が圧倒的に多いからです
クラシックバレエにしろ、HIPHOPやコンテンポラリーダンスにしろ、全てのダンス公演に共通することは、客席にダンス経験者、ダンス関係者が非常に多いということです。映画のように、全くの一般層がわざわざ会場に足を運びダンスの公演を観るという感覚は、現在の日本では殆ど定着していません。そういう意味で、ダンスは残念ながらまだまだ内向きの文化といえるのでしょう。
しかし、アイドルのライヴ会場の客層はダンスの経験や知識のない一般層が殆どです。これは他ジャンルのダンスから見ると非常に革新的なことといえます。客層はダンス経験者が圧倒的に少ないにも関わらず、振りコピ文化が発展した理由は、アイドルのダンスが、少し頑張れば真似することが出来る範疇の振付だったからなのです
『IDOL DANCE!!!』


この、他ジャンルのダンスとの比較、は、僕のようなダンス素人にとって実に貴重な分析である。なるほど、こう言われてみると全くそのとおりなのだろう。
僕たちダンス未経験者、おっさんメタルヘッズが、ライヴで「振りコピ」しながら急激に絶頂に達することができるように、BABYMETALの振付はいわば「設計」されているのだ

KOBAMETALが、MIKIKOMETALに、「観客をノセる」ことを至上命題として振付を依頼していることには、いくつもの明確な証言がある。
その依頼に対するMIKIKOMETALの答えの一つが、こうした、簡単に「振りコピ」できるキャッチ―な動きによって、観客の狂乱を煽る、というものなのだ。

ただ、では、BABYMETALの振付とは、誰でもがすぐ真似できる単純なものか、といえば、もちろん全くそんなことはない。

天才美少女たち3人の、信じられないキレとスピードを備えた、超絶舞踊
それが率直な印象だろう。世界レヴェルの至高の舞踊、だ。

アイドルのダンスは、振りコピ文化が浸透しているため、ダンスを真似して貰う前提で作られた振付も多く見られます。それらは「初見で直ぐに真似出来る」振付です。これは、熱心なファンでなくともその場で直ぐに参加することができるので、とても即効性のある要素です。また、直ぐに真似出来る振付の場合、足のステップは覚えずとも手の動きだけで出来ることが多いため、スペースの狭い客席でも振りコピしやすいという利点もあります。しかし、これを安易に多用し過ぎると、今度はアイドル自身のパフォーマンスレベルを犠牲にしてしまうことがあり、諸刃の剣とも言えます。
というのも、アイドルのライブ会場では客席全ての人が振りコピをする訳ではありません。振りコピはあくまで沢山あるライブの参加の仕方のひとつであり、これだけを前提に振付を作ってしまうと、簡単な動きの繰り返しが続き、振りコピをせず、ステージ上のパフォーマンスを観たい人にとっては単調過ぎる印象になってしまいがちです。
「初見で直ぐに真似出来る振付はサジ加減ひとつで、多くの人が参加しやすい入口として「観客に歩み寄る」ための良いフックにも、「観客に媚びる」単純な動きの連続にも成り得るのです。大事なのは非・振りコピ層が観ているだけでも充分に満足できるダンスパフォーマンスと、より多くの人が参加しやすい”その場”で振りコピできるポイント、この両要素のバランスの取り方なのでしょう
『IDOL DANCE!!!』


長い引用になったが、BABYMETALの舞踊を考えるための、重要な座標軸を与えてくれる話である。
最後の「バランス」は、”メタル・ダンス・ユニット”BABYMETALの場合には、(ほどほどのところで折り合いをつける中庸としてのバランスでは全くなく)ヘヴィ・メタルの肉体的視覚的な体現としての、人間の限界をほとんど超えた高速キレキレ超絶舞踊の「演」技を本義としながら、そこに、さらに、観客のメタルヘッズたちを昂揚させ捲き込むような「仕掛け」として「振りコピ」できる単純でキャッチ―な動きや、「コール」MIXを誘発する「間」を、いくつか効果的に織り込んでいる、と言うべきだろう。

例えば、「メギツネ」
「BABYMETAL DEATH」に次ぐ、また別のオープニング曲でもあり、ライヴを爆発させることが確実な必殺技、いわば「波動砲」である。ライヴでも、ほとんど死んでしまいそうになるほど楽しいお祭りメタル楽曲であり、映像盤でも観客席が丸ごと波打っている絵をいつも見ることができる。
しかし、実は、この曲は、「振りコピ」という目で眺めると、とてもとても「振りコピ」できるようなレヴェルの舞踊ではない
ステージ上の3姫の、さながら「イングヴェイ日舞」(あるいは「インペリテリ日舞」)とでもいうべき超高速の、優雅で・可憐で・華やかな動きは、最初から最後まで目で追うのが精いっぱいであり、観客席で真似をしているおっさんなどいない。できるはずがない。
ところが、観客席の僕たちも、「ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」「チキチキワッショイ!チキチキワッショイ!」「ヒラヒラワッショイ!ヒラヒラワッショイ!」「クルクルワッショイ!クルクルワッショイ!」「コンコンコン・コ・コ・コンコ・コン!」と合いの手(コール・MIX)を叫び、「ソレ!」では「振りコピ」とは言えないまでも、ステージの3姫に合わせて両腕を掲げるから、ダンスなどできないおっさんであっても、あっという間にアゲアゲに燃え上がるのである。
(それにしても、この”調べ”に乗ったYUI・MOAの超高速の「振り」って、改めて見てみても、もの凄い動きだ。映像を追いながら、涙が出てきた。やっぱり、この娘ら、とんでもない「バケモノ」だ。すげえ…。)
その後の、「いにし~え~の~」からのSU-METALの歌のところは、身体を揺すり、首を振りながら、ノル、という、いわゆる「メタルノリ」が結構長い。意外にも純メタルノリをも多く含んだ曲なのだ。一緒にこぶしを回して歌うことすらできる
そして訪れる、ブレイクダウンの、重厚な縦ノリ。当然、激しく縦ノリのヘッド・バンギングだ(まるで、アクセプトのライヴでのように)!
その後の、「ソイヤ、ソイヤ、ソイヤ、ソイヤ!」からの昂揚のクレッシェンド
そして、再度の「ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」からの爆発!!!
…、冷静に分析してみると、「観客をノセる・煽る」ための急・緩・急の構成が、実に緻密に構成された”調べ”なのだ。

「BABYMETAL DEATH」の場合は、舞踊自体は全体的に「振りコピ」しやすい単純なものだ。(だから、あっという間に、会場全員が一体化するのだ)。しかし、言うまでもなく、3姫の美しさが、比類ない。(とりわけ「赤い夜」の、崇高な美しさよ…)静止しているときも、跳躍しているときも、ひたすらとんでもなく美しいのだ。
誰も真似のしようがない<素材の質の高さ>が、「振りコピ」しやすい簡単な動きを、それだけに終わらない、高次元の芸術作品たらしめている、ということだろう。

ズルい?そう、ズルいのである。
これだけ美しければ、何をしたって、誰も真似のできない高度なステージになるに決まっているのだから。(最近の、数々のインタビュー動画等を見れば明らかである。3人がニコニコしながら何かしゃべっているだけで、魅せられてしまう、のだから)

しかし、そのズルさにあぐらをかかないどころか、そのズルさをステージ上ではむしろ封印して、「非・振りコピ層が観ているだけでも充分に満足できるダンスパフォーマンス」どころか、「なんじゃ、こりゃ」と鳥肌が立ち涙が出てくるような、高速の美しい動きをこれでもか、と繰り出してくるのだから・・・。
誰も、敵うはずがない。
(そして、これは、”アイドル”BABYMETALの、ヘヴィメタルに対する畏敬・真摯さ・実直さ、のあらわれでもあろう。僕たちメタルヘッズの胸を打つのは、まずもって、ここなのだ。)


最後に、もう一つ、竹中夏海の論を引用する。

ダンサーの出るステージで「何を踊るか」「どう踊るか」が重要視されるとすれば、アイドルのステージではまず「誰が踊るか」が最も重要なのではないかと思います。これは歌についても同じことが言えるのではないでしょうか。ダンスや楽曲を自ら作る訳ではないアイドルがファンにどうメッセージを伝えていくのかといえば、それは自分自身を以て発信していくのではないかと思うのです。だからこそ技術だけではダメで、でも発信していくには技術も必要で、そうやって徐々にスキルアップしながらアイドルは自らをメッセージとしているのだと思います。
ステージ上で楽しそうにしている。周りに操られているのではなく生き生きしている。そんな子達に私自身魅かれるため、私が作る振付の中では特にそういう”余地”を多く残しています。
例えば客席だけを向いているのではなく、メンバー同士でアイコンタクトを取れるような向かい合わせになるポイントをいくつか作ります。その時に大切にしているのは決して強制はしないということです。そうした遊び心は指導されてやるものでもないと思うので、遊べそうなポイントだけ投げてみて、後はメンバーに好きにやらせてみる。
(略)
大人が仕掛けすぎたところであまり面白くならないだろうというのは、私自身がファンとして観に行ったライブの経験上、思うことです。本人達自身が「面白い」と思って自発的にやり始めたことかそうでないかくらいはファンであれば見分けられてしまうものであるからです。
『IDOL DANCE!!!』


BABYMETALはアイドルではない、という意見も「アイドル」という言葉の定義によっては肯くこともできなくもないのだが、今回考えた「振りコピ」コール・MIXを軸にするライヴの爆発的魅力や、上に掲げた引用(特に下線部!)のような意味で、BABYMETALはやはりアイドルである、と考えた方が、BABYMETALの他に類を見ない超絶的な魅力を探究するうえでは生産的であろう

アイドルとメタルの融合、それが、単なる足し算ではなく、その化学反応によって、とんでもなくありえない輝きができあがってしまった、という、いうなれば、錬金術。
これは、世界初の達成でありながらおそらくもう二度と起こらない奇跡であろう。
そう考えるならば、これからも、BABYMETALの半面である「アイドル」の側からBABYMETALを執拗にていねいに考えてみる作業は、意味のあるものになるはずである。





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