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三本脚で立つ~思考の経路

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BABYMETAL探究(BABYMETALの「神話的構造」考①)

2016-05-03 00:44:55 | babymetal
こんなの見たことがなかったわ。何もかもが違うの。初めて見た瞬間に、ウチの雑誌でとりあげなきゃ!って思ったの。誰もが夢中になれるはずだわ。まず、歌や踊りがすごく上手ルックスも超キュート曲もキャッチー。でも何よりもライヴが本当に楽しいの

皆さんご存じの、(このブログで既に何度かとりあげた)NHK『BABYMETAL現象』内での「ケラング!」誌の新人発掘担当、ジェニファーさんのコメントである。
このコメントは、実に端的に、BABYMETALの魅力を過不足なく言い当てている
(まあ、すべての褒め言葉に「最高に」「至上に」「空前絶後の」「唯一無二の」という枕詞を被せて、実感にちょうどよくあてはまる感じ、ではあるのだが・・・)

しかし、BABYMETALがこれほどまでに僕(たち)を魅了するのは、上のコメントで讃えられている魅力とはまた別の領域・次元の、より深遠なあるいは崇高な要素が関わっているのではないか。

日本人アーティストで初めてのWEMBLEY ARENAでのライヴ。1万2000人を魅了。
ビルボードチャートTOP40に、日本人アーティストとして53年ぶりにチャートイン。

そうした「快挙」の数々の達成、そうした偉業も、もちろんBABYMETALを応援しているから味わえる贅沢な醍醐味である。
こんなバンドは、おそらく僕(たち、おっさん)が生きている間にはもう二度と出てこないだろう(それとも、BABYMETALをきっかけにして日本の音楽シーンの潮目が変わり・・・なんてことがあるのだろうか?でも、こんなとんでもない才能が集結するという「奇跡」は、確率的には二度とありえない)。

さらには、国境を超え、言葉の壁を超え「日本人」の「少女」3人が各国の老若男女を魅了していることへの共感・感激、誇り、といった、オリンピックやワールド・カップ等の国際大会に手に汗にぎるのと同質の感情も、確かにあるだろう。
(これらは、国内ファンならでは、であって、海外ファンは僕たちほどには、これは感じていないのだろう・・・)。

しかし、BABYMETALが、僕(たち)をこれほどまでに魅了するのは、こうした魅力を超えた、さらに根源的な「神話的な構造」によるものでもあるのではないか。
僕はいまそれを痛烈に感じているのだ(・・・って、星飛雄馬か!?)。

このブログではここしばらく、身辺雑記や小ネタが続いていたので、久しぶりに、「BABYMETALの魅力とは何か?」に本格的に切り込む「探究」を試みてみたい
もちろん、いつものような、素人の拙考・妄言の羅列でしかないのだが、気合いだけは、久しぶりに「本格的な考察」をめざす意気込みである。
皆さんがBABYMETALを楽しむ際の、ほんのわずかではあっても刺激・参考になるようなことも、綴れるかもしれない、と、そんなことを期待しながら、考察を試みよう。

まだうまく整理できていないので、似たようなことを、角度を変えて何度もくどくどと書いてしまうことになってしまいそうだが、よければおつきあいください。

今回のシリーズの考察で、主に参考にする(はずの)文献が、ジョーゼフ・キャンベルの神話学の諸著作である。
入手しやすいのは、ハヤカワ文庫NFの、『神話の力』、『千の顔をもつ英雄(上・下)』だ。
とりわけ前者は、問答形式になっているせいもあってたいへんに読みやすく、刺激的・啓発的な名著、と言ってよいと思う。

そうした知見を援用するならば、BABYMETALの、他のバンドともアイドル・ユニットとも大きく異なる魅力、その鍵の一つがBABYMETALの「神話的構造」にある、と言えるのだと思う。

古来、神話が人間の心を揺さぶり、人生のさまざまな局面を意味づけて・意義づけてきたこと、これは確かなことだ。(むしろ逆に、人間の心を揺さぶり人生を意義づけ・意味づけする「物語」を、「神話」と呼ぶ、と定義すべきなのだろう)。
そうした「神話」のエッセンスを設定・構造としてとりいれた映画(例えば「スター・ウォーズ」や「マトリックス」)は、実際に多くの人を魅了しているし、「神話的な構造を強く意識せよ」という趣旨のシナリオ作法の本も多数あるようだし、「神話的構造」は、(ファンタジー等はもちろんのこと)さまざまな小説やマンガにも、そのエッセンスは(意識的に・無意識的に)とりいれられている。

そうした要素を、”BABYMETALという物語”は、濃厚にはらんでいる、のではないか、ということだ。

こんな音楽ユニットなんて、それこそ、空前(絶後?)、唯一無二、なのではないか。

ここが、以前に考察した「なぜ泣いてしまうのか?考」や「聖性考」にも深く関わるはずの、BABYMETALが単なる音楽ユニットではない、麻薬的な「中毒」性をもった、ほとんど宗教的な熱狂・陶酔をもたらす、その鍵のひとつなのだと思う。

今回は、その端緒としてまず、「英雄」について考えてみたい。

BABYMETALは、英雄である。

断言してみたが、これは、神話論としてはどういう意味なのか?

『千の顔を持つ英雄』のなかでジョーゼフ・キャンベルはこのようなことを述べている。

a.英雄とは、自らの力によって服従を達成する人である。

b.つまり、英雄の一番の仕事とは、二次的な意味しか持たない表舞台の世界から身を引いて困難を生む精神(プシケ)の領域(実際に困難が巣くう領域)へもぐりこんで、そこで何が問題かをはっきりさせて自分自身の困難を解消し、C・G・ユングが「元型イメージ」と呼んだものを歪曲せずに直接経験して、それと同化するまで、突き進むことである


これって、まさに、BABYMETALだ!!
(と思いませんか?)

aについて。
BABYMETALの場合の「服従」とは、もちろん、「メタルへの服従」である。

メタルなんて全く知らなかった(知るはずもなかった)アイドル・ユニット「さくら学院」のメンバー3人が、その派生的な課外活動「重音部」のメンバーに選ばれ、そこでヘヴィ・メタルという未知の音楽を「やらされ」て(=服従)ゆく。
(このへんの立ち上がりの事情は、今ひとつ明確ではない。初めからBABYMETAL(的なアイディア)を含みつつ「さくら学院」が立ち上がった、といった情報も目にすることもある。まあ、「公式」なストーリーの概要は上記で間違いないだろうし、3人が「やらされ」たものであったことは疑いようがない)

デビューアクトの「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の(とりわけMOAMETALの)初々しいというか、ぎこちない「演」奏を今でもネットで目にすることができるが、自分たちの好みや志向とは全く関係のない、そうした「やらされ」たメタルにおいて、彼女たちは、しかしすぐに、とんでもない「自らの力」を発揮しはじめる。

持って生まれた才能と人柄を最大に発揮しながら(もちろんそこには、文字通りの((誰しもがそのステージから想像できるように))血と汗と涙の滲む努力・修行・精進を重ねる日々があった)「ソニスフェア」や「レディング&リーズ」フェスを代表とする大舞台で次々と観客を魅了し、いまや、各国の大きなメタル・フェスにメイン・アクトのひとつとして堂々と名を連ねるようになった。

「自らの力によって服従を達成する」とは実に逆説的な難解な(だからこそ深遠な)定義だが、「BABYMETALの3人を見よ」と言えば、端的に理解できる。
(ヘーゲルの「弁証法」という概念も、「BABYMETALを見よ」で一発即解だ)

3人にとって、ヘヴィ・メタルはやりたい音楽でもなんでもなかった。
やらされた音楽だ。
しかし、彼女たちは、自らの力で、今までのヘヴィ・メタルではない、BABYMETALというメタルを確立し、今や世界中の人たちを魅了しつつある
逆に言えば、BABYMETALという彼女たちにしかできないメタルを確立できたからこそ、彼女たちは今、それを自分の「使命」として引き受け、人生を懸けて(楽しみ・苦しみながら)臨むことができるようになったのだ。

これは、例えば、「マトリックス」等と極めてよく似た構造だろう。

だから、この3人が、はじめは全くメタルを知らなかったこと、自発的にメタルをやろうと思ったのでははないこと、この「事実」は、BABYMETALの「アキレス腱」などでは全くないのである。

むしろ、だからこそ、BABYMETALは英雄たりえている、のだ。

神話的構造からは、そうなるし、事実、僕(たち)はそこに感動して(も)いるのだ。

賛否両論あるように見受けられる、『ロッキング・オン・ジャパン』の別冊だが、SU-METALへのインタビューの
「SU-METALが何かに導かれる感覚を持っているのはとても重要なことで、「自分という人間の表現なんだ」という欲目が出た瞬間にプロジェクト自体がすごくつまらないものになってしまう」
という文言は、彼がどのような趣旨で発言していたかは不明だが、こうした「神話的構造」という観点からは正しい指摘だ、と僕は感じた。

英雄とは、私利私欲のために、戦ったり冒険したりする人物ではない。
もっと大きなもののために、命を懸けて戦う存在だ。

それが「自らの力によって服従(を達成)する」ということだ。

僕(たち)は、確かに、BABYMETALにそれを感じている。
彼女たちのステージが、僕(たち)を感動させるのは、冒頭のジェニファーさんの指摘にある魅力に加え、さらにこうした「崇高さ」を感じさせるから、なのだ、と僕は思う。

そして、BABYMETALにとっての、その大きなものとは、そう、メタル、なのだ。

これはもう、おっさんメタルヘッズたちが、泣かずにいられるわけがない。

こうした構造をわかりやすく象徴的に表現しているのが、
メタルの神様、キツネ様。そのお告げにしたがって、BABYMETALの3人は次々と困難な課題(どんどん大きくなる)にぶつかっていく
という「設定」だ。

キツネ様イコールKOBAMETAL、ではない。
KOBAMETALはあくまでも預言者であり、(もちろん舵取りや決断は彼が主にしているはずだが)BABYMETALにくる「お告げ」は、BABYMETALの3人が、ヘヴィ・メタル界(あるいは音楽界)から引き寄せたものでもある。

メタルで世界をひとつにする。
こんな(一見、狂気の沙汰でしかない)「お告げ」が、徐々に「現実」のものになりつつあるのを僕たちは実際に目にしている。
最終的に「ひとつ」になることはありえないが、しかし、この「お告げ」がまるっきり実現不可能なものでもないのだ、ということを、僕たちは確かに体験しつつあるのだ。
メタルで世界をひとつにする、って、具体的にはどういうこと?」という問いには、「BABYMETALを見よ」とひと言答えればよい。

例えば、WEMBLEY ARENAでの光景、まさに「答えはここにある!」のだ。

このように、メタルの神の(ムチャ振りの)「お告げ」を真摯に受取り、愚直に・懸命に取り組む、という「服従」を、「自らの力によって達成」しつつある、BABYMETAL。
(彼女たち以外に誰もこんなことはできない、できる可能性があるのはBABYMETALだけだ、と世界中の多くの人が心から感じているはずだ。ヒットチャートや観客動員云々にも増して、これって、凄いことだ。まさに「神話」と呼ぶべき事態だ。)

こうした意味において、BABYMETALは、まさに「英雄」と呼ぶべき存在なのだ。

先日のMTVのインタビューの終わりに、MOAMETALがこう発言していた。

メタルを知らない人たちにも、BABYMETALなら、メタルのよさを伝えられる、って思うから、この音楽を通じて世界をひとつにしたいし、この音楽を通じて、みんなで成長したいな、って、思います。
(と、満足そうな、凜々しい、とても大きな笑顔を見せる)


この発言も、僕が書いてきた文言も、もしも5年前に目にしたとしたら、「こいつ(ら)阿呆か?」と誰もが思うだろう、下手なファンタジー作家志望の非現実すぎる残念至極のプロット、でしかなかったはずだ。

しかし、実際に彼女たちはそれを「自らの力によって達成」しつつある。
こんな物凄い「物語」=「事実」を見せられて、感動しないわけがない。
で、その上に、ジェニファーさんの語る”とんでもない魅力”が、音楽・演劇の楽しさとして乗っかっている、のである。
最高のエンターテインメントである以上に、真に「生の深淵」に届く深い意味を、BABYMETALは僕たちに与えてくれているのだ。

BABYMETALが海外へ向かったことの意味も、キャンベルのbの発言と絡めると、極めて「神話的構造」をもったものだということがよく見えてくる。
まさに「英雄」の旅、なのである。

次回はこのことから考察を続けていきたい。







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1 コメント

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Unknown (ヤバいMETAL)
2016-05-04 01:10:30
いつも興味深い探究ありがとうございます。
最近感じるのですが、BABYMETALが本物か、ギミックか、その事に言及していたライター、評論家、ジャーナリストなどに対して逆転現象が起きているように感じます。
特に国内にではビルボードランクイン以降、BABYMETALを扱うそれらの人達が増えましたが、
一目瞭然でそれらの人達の仕事に対する姿勢の本物、偽物がわかってしまいます。
インタビューにしてもBABYMETALはありきたりな質問には固定的な答えを、下調べ、準備をしっかりした質問には三人が自らの言葉で答えている印象を受けます。
偽物を装った本物であるBABYMETALは、その装った偽物のフィルターでメディア関係者の本物、偽物を振るいにかけ、本物だけが生き残れる状況を作ってしまっているのではないかと感じます。
なにせ、記事を読み、放送を視聴するのはBABYMETALの本物の部分に魅了され、実生活でそれなりの人生経験や実績を積んだ比較的年齢が高い層のファンです。そんな人達に的外れな中途半端な記事を晒すことの怖さに何故気付かないのかと、なんとも情けないしだいです。

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